毎週日曜朝8時放送・・・してるといいな

走る。走る。走る。俺はどこまでも走り続ける。ただ一つの目的を果たす為だけに前だけを見つめる。ある情報を手に入れた俺はアイツを追う為だけに全ての気力・体力を振り絞り廃墟が立ち並ぶ旧市街地へと駆ける。

「やっと見つけた・・・、今度こそアイツを・・!」

人一人居ない無人の廃墟に到着した俺は辺りを見回す。崩れ落ちたビル、鉄骨が剥き出しになり全てを拒絶するかのようなボロアパート。見渡せば見渡すほど虚無感に襲われるが俺はこんな所で立ち止まる訳にはいかない。アイツがここに居る事はわかっているんだ。そしてアイツもきっと・・・俺が近い内に此処を嗅ぎ付けてやってくる事がわかっているだろう。

捜す。捜す。捜す。俺はアイツだけを追い続け此処まで来たんだ。今日こそはアイツに引導を渡してやる。

思い返せばアイツと初めて会ったのが半年ほど前。俺はアイツの秘めたる力に手も足も出ず完敗した。あの屈辱は一生忘れない。あの日、アイツはこう言った。


「その程度の力でヒーロー気取りなの?私一人に無様にやられるヒーローなんてヒーローじゃないわね。・・・ま、今日は機嫌がいいからお情けをあげるわ。さっさとこの場から去りなさい、そして今日限りでヒーローごっこなんて辞める事ね・・・」


情けなかった。完膚無きまでに叩きのめされ心を折られ、ヒーローを辞退しろと言われたのに何も言い返せなかったあの時の自分が悔しい。だが、・・・・その情けが今日のお前の敗因となるだろう。俺はもう・・あの時の俺じゃない!確かに俺はアイツに会うまで格下と思われる雑魚ばかりを相手にしていたと今更ながら思う。だからこそ俺は驕り昂っていたんだろう。ヒーローという名の職業に。ある意味、俺はアイツに出会えて良かったと思っている。ヒーローの力だけに頼り自らを鍛えなかった俺を叩きのめしてくれた事に感謝する。そのおかげで俺は・・・新しい力を得たのだからな!

「アイツだけを求め・・・手に入れたこの力。今こそ開放する時だ!」

拳を握り締め崩れかかっている廃ビルの壁を殴りつける。俺の拳は簡単に壁を突き抜ける。そして拳を引き抜くと衝撃に耐えれなかったのか廃ビルは音を立てて崩れていった。

「この程度の力では・・アイツには通用しない。だが・・あの奥義さえ当てれば確実に勝てる!」





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何かが崩れ落ちる音が聞こえる。きっと外の廃ビルか何かが崩れたんでしょうね。でも、それにしては音が綺麗だったわ。まるで一瞬で壊されたかのような綺麗な音。なんだか耳がヒクヒクと忙しなく動く。何かを探るように、求めるように。・・・聞こえる。アイツの声が・・息遣いが・・鼓動が。とうとう来たのね、ヒーロー気取りのボクちゃん。懐かしいわね、あの時・・私に手も足も出なかったボクちゃんがここまで成長するなんて嬉しいわ。さぁ、早く此処を突き止めかかってらっしゃい。私は此処に居るわ。でもね、・・・もし期待通りの力じゃなかったら・・・今度こそ引導を渡してあげるから覚悟しなさいね。



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どこだ、アイツはどこに居るんだ。地上は全てくまなく探したはずなのに。いや、焦るな俺。アイツは絶対に此処で待っているはずだ。俺と戦う為に。次こそ俺に引導を渡す為に。もしアイツが俺の事をまだ格下と思ってるのなら絶好のチャンスだ。その時こそ、俺が極めた奥義をぶち当ててやる。しかし、何故アイツが居ないんだ。絶対に此処に居るはずなんだが。俺は空を見上げ深呼吸する。

「相手を焦らし自分のペースに持っていくのがアイツの得意技だったな・・。す〜〜〜〜・・・・はぁ〜〜〜〜〜・・・・・、良し!」

心をクリアにした事で見えてくる別世界。目を閉じる。見えない風を肌で感じる。瓦礫が崩れる音、ビルとビルの間を吹きぬける隙間風の音。そして・・・誰も居ないはずの廃墟に僅かながらに聞こえてくる誰かの息遣い。これは俺の呼吸音じゃない。アイツだ。近くに居るのがわかる。どこから聞こえてくる。どこだ、どこに居るんだ。風に乗って聞こえるアイツの息遣い。・・・・・・上か!右斜め前方に5階建てほどの廃ビルが建っているのが見える。この屋上か。俺は意を決して廃ビルに突入した。




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「ふふふふ・・、御名答。私の気配を感じ取れるなんて・・なかなか成長したじゃない・・ボクちゃん♪さぁ、・・・私は此処よ。早く私を満足させなさい♪」

あの時の青年がここまで成長するなんて思ってもなかったわ。僅か半年で私の気配まで察知出来るほど強くなってるだなんて。これは期待してもいいかもね。
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