朝早くに一軒の民家から聞こえてくる叫び声。
「イヤじゃイヤじゃイヤじゃーーーー!」
「だーめーでーすっ!今日という今日は我儘は許しませんから!」
「兄上のわからず屋ーーーー!」
バタンと大きな音を立ててドアを開け放ち街中を駆けていく一人のバフォメット。目には涙が溜まっている。ただいま街中を爆走しているのはラーニャ=キオ=ルートというバフォメットだ。そんなラーニャを周囲の人々は生温かい視線で見守っている。
「本当にラーニャは懲りないわねぇ〜・・。あ、でも私もあの人とたまには喧嘩しちゃおうかな♪そしたらあの人はきっとこう言うの・・『俺は君の全てを愛したいんだ!それの何がいけないんだ!』って・・あぁん♪想像しただけで我慢出来ないかも
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#9829;」
「あら、それもいいわね♪でもダメよ?愛を試す為に喧嘩するのもいいけど、やっぱり御互いに想い合ってないと効果は薄いわよ?」
ラーニャをダシに周囲の人達は新しい試みを考えている。
「それで今日の喧嘩の原因は何かしらね?」
「え〜と、・・前は3時のおやつに虜の果実が無くて喧嘩して・・その前は・・珈琲2:8ホルミルクじゃなかったって飛び出して・・」
あまりにも低レベルな内容に街の人達は呆れつつも「いつものように夕方には帰ってくるだろう」と楽観的に見守っている。そして、同時刻・・・。
朝早くから豪勢な食事を用意している男が居た。その男がジパング出身という事もあってか、贅沢にも寿司を握っていたのだ。
「うむ、・・・久しぶりの寿司はいいものだ。どれ、先に一つ食ってみるか・・。ん・・んまい!!」
「あら?ダーリン何作ってるの〜?・・や、やだ・・、すごいわ♪特に・・この太巻きなんて・・黒くて太くて長くて・・なんて立派なの
#9829;」
「そうだろう、そうだろう♪良い出来だろう・・と、すまないけどルルルを起こしてくれないか?」
「ええ♪」
朝の食卓に並ぶ豪勢な寿司の数々。起こされたルルルも大喜びだ。
「パパすっごぉ〜〜〜い!!これがお寿司なんだね!学校で稲荷のお姉ちゃんが作ってたのと一緒だよ♪美味しそう
#9829;」
胸を張って喜びを表現するパパさん。なかなか様になってる。
「さ、ルルル。好きなのから食べなさい」
「はぁ〜〜い♪」
一家団欒とはこの事か、夫も妻も娘のルルルもにこにこ顔で食べている。
「美味しいわ〜♪アナタの手料理って久しぶりだから最高
#9829;」
「うん!パパのお寿司美味しくて大好き!」
ルルルが上機嫌で口一杯にお寿司を頬張っていると向かいではパパとママがお寿司の上に何かを乗せて頬張っている。
「パパ〜、それなぁ〜に?」
「これはワサビと言ってね、とってもとっても辛いんだよ」
「ルルルも食べたーい!」
「だめだめ、これは大人が食べるものだからね。それに、ルルルにはちょっと早いかも知れないよ?」
「ぶぅ〜〜っ・・、ルルル、もう17歳だもん!大人だもん!ね、ママいいでしょ!」
「ぅ〜〜ん・・、ワタシもパパと同じ意見かしらねー。ルルちゃんにはまだ早いと思うの」
「ルルル、子供じゃ・・ないもん。子供じゃ・・・・・ウウッ・・、パパとママの・・・・」
「ばかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
子供扱いされた事に腹を立て家を飛び出すルルル。それを見た御近所さんは溜息を吐く。
「ラーニャといい・・ルルちゃんといい・・、毎度毎度飽きないわねぇ〜・・」
「そこが可愛らしいんだけどね♪二人共まだまだお子様だし♪」
御近所さんの暖かい眼差しを受けながらルルルは街の外へと飛び出していく。行き先は木々に囲まれた小さな広場。街から出て徒歩10分ほどという近場にある広場でルルルは一人泣いていた。
「ルル・・・子供じゃ・・グスッ・・ないもん・・」
「兄上なんか・・・嫌いじゃ・・・グスッ・・・」
いつから居たのかルルルから少しだけ離れた位置で膝を抱えて泣いているバフォメットが居た。
「・・・?・・ぁ、ラーニャちゃん・・・グスン・・・」
「・・・!?ルルルでは無いか・・、こんな所でどうしたのじゃ・・」
「ラーニャちゃんだって・・」
二人は御互いに目を腫らしながら愚痴を零しあう。
「兄上は酷いのじゃ!あれほど言ったのに朝食のサラダにピーマンと玉葱を入れおって・・・」
「うんうん!ピーマン苦いもんね!」
「それでお主はどうして飛び出してきたのじゃ?」
「・・・ぅん、・・・パパとママがね、・・ルルは子供だから・・・お寿司にワサビ付けて食べちゃいけません!って・・・」
「ななななっ、・・なんと・・お主の両親はワサビを食べるのか!?なんと恐ろしい事を・・・・」
「エッ!?ワサビってそんなにコワイの!?パパとママ、嬉しそうに食べ
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