今日も俺の目の前で、訳のわからん事を大声で怒鳴りながら周囲を威嚇してるおっさんが居る。これで何日目だ。此処で怒鳴ればなんとかなるとか思ってるんだろうか。短絡的思考な行動を見ているだけで頭痛がする。早く定時になってほしいもんだ。そして俺はいつもの日課の如く、隣の同期に話しかける。
「なぁ、アレ どうにかならんか?」
「どうこうしても時間の無駄だろ。全く・・市役所で喚きゃなんとかなると思ってるんかね?」
市民課の対応席に座りながら溜息を吐く。せめてこっちに来ない事を祈ろう。だが、余計な邪念を持つと正反対の結果が付き物。市民課の窓口に向かって真っ直ぐ歩いてくると、俺の対応席の正面椅子に座り支離滅裂なエゴを吐き出す。
「なぁ、兄ちゃん・・・わかるかぁ?今の日本はなあ〜・・俺達の世代で生きてるんだぞ?ぁん?聞いてんのか?お前みたいなガキでもそこに座れるのは俺達が必死に働いたからだぞ?わかってんか?」
始まった。これが始まると最低でも1時間近くは居座られる。さっさと警備員のお迎え来てくれないかな。俺が適当におっさんの戯言を聞き流していると意外にも早いお迎えが来てくれた。おっさんは何か喚き散らしながら連れて行かれる。最近になってこういう手合いが増えてきて本当に困ったもんだ。市役所に来て喚けば何でもしてくれると勘違いしてるバカは此処で喚く前にさっさと働けと言いたい。
「はぁ〜〜〜、やっと行ったか・・・」
「今日は運が悪かったな、祐。とりあえず、次の『業務再開だろ』」
同期の言葉を遮り受付番号の札をチェックし通常業務を再開させる。
「013番でお待ちの方。いらっしゃいませんか〜?」
「はぁ〜〜い♪お願いしまーす
#9829;」
目の前に座ったのはモッフモフな二本の尻尾を柳のようにゆらゆらと揺らす妖狐だった。それと、おっぱいでかいぞ妖狐様。ついでにチャイナドレス似合ってるぞ。
「…はい、それでは御用件は何でしょうか?」
「戸籍が欲しいの〜♪住民登録したいの〜♪ねぇ〜〜・・・、いいでしょう〜♪」
「・・・申し訳ありませんが、その御用件でしたら専門の受付窓口がありますのでそちらでお願いします」
「ええ〜〜・・・やだやだぁ〜。あっちだと手続き面倒なんだも〜ん。それに何時取得出来るかわかんないし・・・ね?だから オ ネ ガ イ
#9829;
#9829;」
胸元を肌蹴、チラリと張りのあるふくよかで瑞々しいオッパイを見せ付けてくるが無視して魔物娘専用の手続き書を渡し退散させる。
「ぶぅ〜・・、ケチ・・・。そんなイジワルな子は女の子に嫌われちゃうわよ」
両耳をペタリと伏せすごすごと魔物娘専用の受付へと去っていく妖狐。二本の尻尾は悲しみからか、力無く垂れ下がっている。そんな後ろ姿を見ていると手を差し伸べてあげたくなるがこれはこれ、それはそれ。仕事に私情を挟む事だけはしたくない。可愛い子だっただけにちょっとだけもったいなと思いながらも次の番号札を読み上げるとまたもや魔物娘だった。今日は厄日なんだろうか。
「なぁ、祐。今日のお前本当に運が無いな」
「…ほっといてくれ」
魔物娘が現れてからこういった事が度々起こる。こちらは人間用の受付窓口だというのに手続きが早いからという理由だけでこっちに流れてくる魔物娘が後を絶たない。まぁ、向こうの事務員はヤる事やってから手続きするようなメンバーだし処理が遅くなるからこちらにやって来るのも当然だろう。市役所の職員である以上は誇りを持って定時まではしっかり業務をこなしてもらいたいもんだ。と、いうよりこちらの業務を増やされたくない。
「さて、もうすぐ上がりだがどこか寄っていくか?」
「いや、遠慮するよ。早く帰って寝たい気分なんだ」
俺が寝たいという単語を口に出した途端、待ち合い椅子に座っていた魔物娘の何人かが俺を凝視する。こっち見ないでくれ。別にあんたらに言ったわけじゃないんだから。今度からは【寝たい】じゃなく【眠りたい】と言っておこう。なんで会話一つで此処まで気を使わなきゃいけないんだ。嗚呼、早く帰って眠りたい。
定時、見事にほどよく疲れきった俺は今日1日扱った書類をファイルに挟み市役所を後にした。
「はぁ、・・・今日はやたらと魔物娘の対処が多かった・・ん?」
市役所を出てすぐの玄関口の脇で項垂れている妖狐を見かけた。朝、俺が担当してた受付窓口に来た子だ。どうやら書類が通らなかったみたいだな。まったく向こうの連中ときたら1日に捌くのが僅か20人程度とか一体何してんだか。しょうがない、別部署の俺が手を出すのはあまり良くない事なんだが。俺は役所内に戻り、自分の机の引き出しから魔物娘専用の手続き書類を一枚取り出し判を押し玄関脇で項垂れている妖狐に押し付ける。
「ほら、これで多少は早
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