この声を貴方に届けます

おはよう、いや、こんにちは?それとも、こんばんは?これから話す俺の体験を聞いてくれるのは何時でも構わないんだが挨拶は大事だ。俺、出水 順(でみず じゅん)。一応26歳で営業職だ。ぇ、何故一応26歳なのかって?それは、これから話す体験談を聞いて理解して欲しい。






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「・・・今日も暇だな。」

俺は一人、営業車の中で愚痴をこぼす。外回りを適当に済ませ海岸沿いの国道の脇に車を止め車内で珈琲を飲む。今は昼の2時だが、順の勤めている会社は名も知られていない零細企業だった為、昼を過ぎるとほとんどの社員が暇になる。戻った所で待ってるのは表面上だけの書類整理と電話番だけだ。だから、ほとんどの社員は定時前まで戻ってこないのが現状だった。もちろん順もその内の一人だ。

「給料は安い、仕事は適当にしか出てこない、外廻りしても昼過ぎには終わってしまう・・・。俺、・・・こんな生活でいいんだろうか・・。」

車内でひたすら愚痴をこぼす。誰にも聞かれていないから安心して言えるのだろう。きっと他の社員も同じ気持ちだろう。それもそのはず、順は地元の企業に就職したのだが、南側は海、北側は山、そして海と山に挟まれるような形で小さな街がある。そんな街だから勿論人口も少なく他の企業も少ない。この街に定着してる企業といえば南の漁業組合、北の林業、と誰もが当り前と想像する企業ばかりだ。そんな街で営業職に就いたところで先は見えている。そんな毎日を過ごしている順は常に先が見えない恐怖と堕ちていく自分の精神に悩んでいた。

「やはりあの時、隣町の会社を選べば良かったのかな・・。今更悩んでもしょうがないが・・本当に後悔先に立たずだ」

結局、普段通りに定時前に帰社し、そのまま帰宅する。順の家は海岸沿いにある小さなマンション。会社から徒歩15分程度という近い距離だった。いつものように会社の近所のスーパーで食材を買い、いつものように海岸線の国道脇を歩き、いつものように一人飯。そんな日常だった。だが、今日は珍しく違った。帰宅してすぐに携帯が鳴った。相手は近所の悪友の祭川 真一(さいかわ しんいち)。真一は高校卒業してすぐに漁師見習いとなり、今は漁業組合に居る。順は面倒な奴から掛かってきたと思いながらも、何も無い退屈よりかマシかと思い繋げる。

「おーすっ!順。暇ならどこか行かね?」

今から一人飯だというのに、と思いながらも日頃から退屈で帰宅しても、飯、風呂、寝る、といった悲しい三拍子を思い出し真一の誘いに乗った。

「よし!俺は暇だ!退屈だ!何か刺激を寄こせ!」

「どうした順!何か悪いモンでも食ったか!?」

「何も食ってないし俺は正常だ!それよりも早く行き先を言え!俺は素晴らしいほどの暇生活なんだからな!」

これ以上の悲しく寂しい会話を続ける気が無かった真一は少しだけ含み笑いをしながら提案を出す。

「なぁ、順。俺さ、さっき帰ってきたんだが・・その途中でパチを見つけたんだよ。あんな店あったかな?と思ったんだが店名がおもしろかったんで行ってみようと思うんだがどうだ?」

それだけを言うと沈黙が流れる。順はパチンコが好きではない。むしろ必要無いだろ?と言い切るタイプだった。そんな順だったが、普段の退屈を少しでも紛らわせる事が出来るなら・・と、珍しくOKを出した。

「ぇ?マジ?お前の事だからぜってぇ行かねぇと思ったが珍しいな」

「今日だけだからな、ちょっと暇だったから・・ちょっとだからな!」

それだけ言うと電話を切った。数分後、チャイムが鳴る。

   ピンポーン

「いこうぜ〜〜〜、じゅ〜〜〜ん」

ドア越しでもわかるぐらいの大声で真一が叫ぶ。五月蝿いと感じたが今はパチンコだ。負けてもいいから、退屈が消えるなら、と財布を持ってすぐに飛び出す。

「おっす真一。んで、さっき言ってたパチンコの店はどこだ?」

「その前に軍資金は大丈夫か?」

そう切り返された時、慌てて財布の中身を確認する。財布にはちょうど3万円あった。今の時間は18時前、3万円もあればなんとか最終まで遊べるだろう、と安心した順はドアをロックし、真一と歩き出した。

「んで、真一。珍しい名前って言ったがどんな名前の店なんだ?」

そう聞くと真一は笑いながら答えた。

「それがよ〜、パーラーDE☆A☆I なんだぜ。出会えるのは貧乏神だけだっつうの。どうせ負けて帰るはめになるのにな」

軽く笑いながらそう言うと順を店まで誘導する。海岸線の国道を歩く事10分程度。何も無かったはずの空き地にいつのまにか店があった。順はいつも外回りで走ってるはずなのに全く気付かなかった。不審に思った順だが、自分がパチンコ嫌いだか
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