おばけは大好物ですか?

沢山の人で賑わう夜の繁華街。仕事帰りのサラリーマンにOL。バイト帰りの学生や友人知人が集まりカラオケに行ったり食事に行ったりと。何かと騒がしい繁華街の上空に漂う一つの影。いや、それは影では無く人だった。ただし下半身がぼやけて見えない。

「はぁ〜〜〜〜〜〜・・・、やっとゲートをくぐって異世界(日本)にこれたのに・・」

繁華街の上空で一人呟く少女はゴーストだった。少し不満げな顔で眼下に見える繁華街を恨めしそうに眺めている。

「あんなに人が多いと近寄り辛いよ〜・・。それに今は深夜なのになんであんなに人が居るのよ〜〜」

元居た世界とは違い、深夜でも沢山の人達が行き交う世界に戸惑うゴースト。ゴーストは闇夜に紛れて特定の相手にこっそり取り憑き(妄想という名の)愛を囁く種族。それなのに、こんなに沢山の人だかりがあっては、うかつに動けない。

「むぅーーー!!こんなに人が多いなんて聞いてないよーー!!これじゃあどうやって取り憑けばいいのよ・・・あ、姿消して近づけばいいんだ」

ゴーストは姿を消しゆっくりと繁華街へと降りていく。

(すっご〜〜〜〜〜〜〜い!美味しそうなお店が一杯ある〜♪あ・・綺麗な服も飾ってる〜♪)

姿が見えないので誰にも認識されないがゴーストは嬉しそうだった。綺麗なブティックのショーケースに入ってみたり、壁を透き通って隣のゲームセンターに入って空中で踊ってみたりと忙しない。

(御隣さんは何かな〜♪・・・・って、ケフッ・・・タバコ臭い〜・・・)

壁の向こうは居酒屋だった。アルコールの匂い、タバコの煙、人の熱気と色々な空気が混じりあっている。

(ケフッケフッ・・、タバコはダメだよぉ〜・・・)

あまりいい感じがしないと感じたゴーストは即座に隣の建物に避難しようと考えたが、すぐ近くに座っていた男性達の会話を小耳に挟み動きを止める。

「ぁ〜、やっぱオバケはいいよな・・」

「そうだな、久しぶりにオバケ食ったら夏だと思うよな」

「お前ら、オバケばかり食い過ぎだっつうの」

「別にいいじゃん、美味いもんは美味いんだし」

「まぁ、確かに美味いけどさ・・。でも4皿は食いすぎだろ」

「しょうがないだろ、夏しか食えないんだから」

姿を消したまま男性達の会話を熱心に聞くゴースト。その間にもゴーストが見えない男性達の他愛無い会話は続く。

(…オバケって言ったら・・この国では幽霊・・・幽霊って・・ゴーストよね!!)

「んじゃ、久しぶりにオバケも食って満足したし帰るか」
(満足するほど私達を食べてくれてたのね
#9829;)
「おぅ、近い内にもう一度食いに来るか」
(ぇ!?また私達の仲間を(性的に)食べちゃうの!!)
「お前ら食い過ぎだっつうの」
(何言ってるのよ!もっと食べていいのよ!)

男性達はほろ酔い気分で会計を済ませ出ていってしまった。空席となった場所に別の男性が座る。

「あ〜・・・生中と・・ゲソ・・んで枝豆とオバケくれ」

(・・・・この人もゴースト好きなんだ!こんなに私達を必要としてくれるなんて

#9829;)

ゴーストの少女は嬉しさのあまり勢い良く上空に飛び出す。さきほどまで鬱陶しいと感じていた人ゴミも眩しい繁華街も少女の眼には愛すべき街に見えてくる。少女は何か考え込むとこうしちゃいられない、と魔界へと続くゲートへ飛び去っていった。

しかし、この時。この少女はとんでもない勘違いと確認不足をしていた。

居酒屋の玄関に張られていた紙に気付いてなかったのだ。張られていた紙に書かれていたのは・・・。

【夏の風物詩、おばけ有マス】


魔界へと続くゲートを抜けたゴーストの少女は今まで住んで(?)いた寂れた洋館に急いで飛び続ける。

「早く!早くしないと向こうのゴーストにダーリン取られちゃう!」

少女は洋館に到着するなり、大声で叫んだ。

「みんなーーーーー!ダーリン欲しくないーーーー!?」

「「えっ!?なになに?男居るの!?」」

洋館に居た数名のゴーストが突然現れ辺りを見回すが男なんて居ない。

「・・・男居ないじゃない・・」

がっくりとするゴーストに向かって少女が言う。

「此処に居るんじゃないの!向こうの世界に私達が大好きで満足するまで何度でも味わってくれるダーリン達が居るのよ!」

「それ本当なの!?嘘だったら承知しないわよ!?」

「本当だってば!それにね!向こうでは、きっとまだゴーストってそんなに居ないと思うのよ!今なら私達でもよりどりみどりって訳!」

「・・・・(ジュルリ」

「ね?だから言ってみない?」

「・・・イク・・(ジュル…」

少女は洋館に居たゴースト達と共に、再度日本へのゲートに飛び込む。半信半疑で連れてこられたゴースト達は眼下に見える繁華街に興味津々だ。

(ね、
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