朝7時、俺はワイシャツに腕を通しズボンを穿きのんびりネクタイを締める。そんな俺を最愛の妻が後ろから眺めている。鏡越しに不満顔でこちらを睨む顔が見える。こういう時は黙って着替えるのがベストだ。だが、そんな俺の考えを見透かしたように不機嫌さMAXの声で俺に質問してきた。
「アナタ・・?確か・・今日は商談があったのですよね・・・?あそこの課長さんの娘さん・・。貴方が先日までたっぷりと可愛がってたお気に入りの子・・。もし、商談後にあの子に逢おうものなら・・わかってますよね・・?」
俺の額に嫌な汗が流れる。今、妻が言った事を簡単に説明すると俺は昔、契約欲しさに商談相手の娘に取り入って御機嫌取りをしていたのだ。その際、魔がさしたというべきか、勢い任せにその娘を食ったのだ。だが、俺が食った娘はその子だけじゃない。今までの商談相手の大半の娘を味見しては捨てていた。その事を妻は全て知っているだけに今の言葉の真意が手に取るようにわかる。
「今の俺にはお前が居るんだ。浮気なんてするはず無いだろう?」
俺は至って冷静に返事する。しかし、妻は不機嫌なままだ。妻は長い下半身をスルスルと音も立てず俺に近づいてくる。
「ねぇ、あなた?10代の御肌って艶々して綺麗ね?」
「・・??ああ、そりゃもちろん柔らかいし、触り心地も良かったし・・ハッ!」
「あ〜な〜た〜・・?今何と言いましたか〜?」
自ら詰んでしまった。こうなったら妻の怒りは止まらない。
「はぁ・・、やはり貴方には一生御仕置きが必要なのですね。・・・本当はこんな事したくありませんが・・。今日という今日は覚悟してくださいね?」
爽やかな笑顔で右手に巨大な火を灯す。蒼白く、幻想的で美しい炎。だが見た目は美しくてもこれは魔性の炎。俺の心を焦がし淫靡に欲望に染めていく炎。そして、・・・永遠の愛という一生外す事が出来ない鎖を俺の体に植えつける。俺は以前にも何度かこの炎を植付けられたが、その時はせいぜい野球に使うボール程度の大きさだった。それでも一日中気が狂いそうになったのは言うまでもない。そして、……今、俺の目の前に灯されている炎の大きさはどう見てもバスケットボール以上の大きさはあるだろう。こんなのを植え付けられたら本当に狂ってしまう。
「本当に浮気しないのでしたら、・・・これぐらい平気ですわよね?あ・な・た?」
「ままままま・・・待ってくれ!そんなでかい炎植え付けられた死んでしまう!!」
「あら?別に大事な御体には傷一つ付きませんよ?ただ、貴方の心はどうなるかは・・わかりませんが」
にっこり笑いながら説明する妻だったが目は笑っていない。じりじりと近づく妻、それを避けるようにじわじわと後退する俺。そして気が付くと俺は部屋の角に追い込まれていた。
「な、・・なぁ。冗談だろぅ・・?そんな物騒なもん消してくれよ・・・」
「冗談ではありませんわ?それに、貴方が浮気しなければいいだけの事ですよ?・・・それでは覚悟してくださいね」
俺の胸にそっと置かれる妻の右手。その手に宿る炎が俺の体に浸透していき俺の心を蝕み始める。
「ぐうぅぅうぅっ・・・!た・・たの・・む。止め・・止めてくれ・・」
「・・・しょうがないですわね。それなら・・」
妻が指を軽く鳴らすと嘘のように心のざわめきが消えていく。俺はほっと胸を撫で下ろした。
「アナタが浮気しそうになったら発動するようにしましたから・・。わかってますよね・・?」
「ああ・・・わかっているよ・・。絶対に浮気なんてしないからな。信じてくれ」
妻は信用してくれたのか、スルスルと自室に戻っていく。助かったと思いながら俺は玄関で靴を履き出す。そんな俺をいつの間に来たのか妻が後ろで見送ってくれる。
「それじゃ、いってくるよ」
「ええ、いってらっしゃいアナタ。・・でも、その前に・・これは何かしら?」
俺の前に広げられるAV女優のポスター。俺のお気に入りのポスターだ。俺はそのポスターを鼻息荒く凝視しようとした瞬間、とてつもない欲情と興奮が俺の心を襲った。
「はぁ〜・・。やっぱりこうなりましたか・・」
「ふがぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁあーーー!止め!止めてくれえええええええ!!」
「・・・罰としてそのまま会社に行ってください!」
俺は玄関から放り出された。迸る性欲を我慢出来ず必死にドアを叩く俺。しかし、内側から聞こえてくる言葉は悪魔の一言だった。
「今日一日我慢出来たら許してあげます!」
それっきり反応が無くなってしまう。どうやら妻は本気のようだ。俺は先走り汁が出そうになるのを堪えふらふらと出社する。
俺、今日一日耐えられるだろうか・・・・。
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