今日も私は大空を駆ける。広い大地を眼下に置き羽に風を受け自由を満喫する。太陽の光を反射するかのような蒼く輝くサファイヤ色の羽を大きく拡げ私は山の中腹にある湖畔に近づいてゆく。私はいつものように湖畔のすぐ脇にある大きな樹の近くに着陸するとタンクトップを脱ぎハーフパンツも下着も全て脱いでしまうとおもいっきり湖に飛び込む。
「ん〜、今日も快適〜♪やっぱり泳ぐ時は裸じゃないと気持ち悪いもんね〜」
私は一矢纏わぬ姿で湖で泳いでいたが、そんな私をずっと観察してる男が居るなんて夢にも思わなかった。何も気付かず泳ぎ続ける私とそんな私をずっと観察する一人の男。そんな静寂がずっと続くかと思われたが男が痺れを切らしたように声を掛けてきた。
「すまないが、そこのセイレーンの子。悪いんだけどちょっとだけ向こうの方で泳いでくれないか?」
誰も居ないと思ってた私は不意に話し掛けられ慌てて辺りを見回すと岸のほうに一人の男性が居るのがわかった。男性が居るのがわかったけど、居た場所が問題だった。私が全裸になった大きな樹の反対側に居るのだ。どうやら太い幹が邪魔をしてたおかげで反対側に男性が居る事に気付かなかった私はそこで素っ裸になって湖に飛び込んだのだ。顔から火が出るほど恥ずかしい。
「なんで・・なんでこんな所に男の人が居るのよ〜・・・」
私は首から下を湖に沈め向こうから見えないようにしてゆっくりと岸へと近づき陸に上がった途端、一気に男性の反対側の位置に走り込んだ。
「の、覗かないでね!見たら爪で引っ掻いちゃうからね!」
私は焦りながら必死に着替える。普段のように体を乾かす暇が無かったので服はビチャビチャだ。水に濡れた下着やシャツが体に張り付いて気持ち悪い。羽も水気を含んで動かすだけでも辛い。そんな私を気遣うように幹の反対側から声を掛けてくる。
「いや、別に上がらなくても良かったんだが・・。ただ、ほんの少しの間だけ離れた場所で泳いでくれてたら充分だったのに」
「ムチャ言わないでよ〜。私の下着とか全部ここに脱いでるんだから〜・・・ウウッ・・、お父さん、お母さん、私・・、知らない男の人に全部見られちゃった・・」
「見てないからな。それに視界に入っていたとしても俺の記憶には残らないから安心してくれ」
「・・・・ナニよそれ!!私に魅力を感じないって事なの!!私の声で堕とすわよ!」
ついムキになって幹の反対側に回る。向こう側に居た若い男性はこちらに興味を持たず湖を眺め続けている。私が真横に居るのに居ないような雰囲気でただひたすら湖を見続けていた。
「あ、・・あの・・。何してるの?」
「・・・・・・・・・」
「もしも〜〜し。聞こえてますか〜」
「・・・・・・」
「無視は酷いんじゃないかなぁ〜・・、クスン。裸見られて無視までされるなんて・・」
「ん?ああ、何時の間に居たんだ?」
始めから私が居なかったような雰囲気で話し掛けてきた。
「さっきから居たよ〜。返事してくれないし」
「ごめんごめん、今少しだけ湖を目に焼き付けていたから気付かなかっただけだ」
男性はそういって脇に置いていたかなり大きめの鞄から四角い何かを取り出す。私はこの男性が画家である事にすぐに気付いた。
「ねぇねぇ、もしかしてさっきまで湖を眺めてたのって記憶に残す為だったの?」
「まぁ、合ってると言えば合ってるんだが・・、俺は一枚の絵のように景色を目に焼き付けて描いていくんだ」
そう言って男性はポケットから木炭を取り出し大きなスケッチブックに湖や森をすごい勢いで描いていく。スケッチブックの上を木炭という風が通るみたいに流れるようなタッチで風景が描かれていく。
「すごい、まるで生きてるみたいに木炭が動いてる・・」
「さて、・・終わりっと」
木炭で自然の輪郭を描いた程度で終わらせた男は鞄に全て仕舞い込むと帰り支度を始める。
「えっ!?もう帰っちゃうの!?まだ描き上げてないじゃない!」
「さっき言っただろ?目に焼き付けたって。だから残りは家で続きを描くんだ。もし忘れかけたら何度でも此処に来て完成させるだけだ。水浴びの邪魔して悪かったな」
目の前の男性は荷物を肩に担ぎ帰ろうとしたが何故か私は呼びとめた。
「ねー!貴方の名前はなんていうのー?」
「ルルス。ルルス=ウィナだ。それと・・これを持っていけ」
ルルスが私にタオルを投げてくる。私が羽で巧く受け止めるとルルスが笑いながら言ってくる。
「そんなに羽が濡れてると飛びにくいだろ?それできっちり拭くんだぞ」
一人下山していくルルスに私は叫んだ。
「私はメリン!メリン=フォート!また逢おうねーー!」
ルルスは振り返りもせずに後ろ手を振り去って行った。でも出来れば拭くの手伝って欲しかったな・・。濡れた服がぴ
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