慶びと共に

おお、…清清しい気分だ。空を飛ぶってこんなに気持ち良いのか。ドラゴンやワイバーン、ハーピー達が羨ましい。俺はこのまま飛べるとこまで飛んでいってやるぞ・・・、嘘です、前言撤回します。助けてくれええええええええええええ。

「うおおおおおおおおおおっ!マジで死んでしまうーーー!」

俺は今、空を飛んでいる。それも放物線を描くような綺麗な飛び方だ。こんな事になるなら興味本位であんな物をサバトに頼むんじゃなかった。今更後悔してもしょうがないがどうしようも無い。もうすぐ下降するだろうが俺は気にしない。このままだと森のド真ん中に墜落するだろう。・・・短い人生だったな。済まない、父さん・・母さん・・、バカが先に逝きます。バカな息子でスミマセン。

「ああ・・・・あぁ・・、ダメだ・・。失速してきてる、もうすぐ墜落しちまう・・。こんな時に限ってハーピー達やワイバーンとか誰も飛んでねぇ!やっぱりまだ死にたくねえええええええええ!」

高い上空で一人の男が喚いている頃、森の中で何かに聞き耳を立てるようにふさふさの耳を前後にパタパタと動かしているワーウルフが居た。

「・・・・・・、獲物は・・・この辺りには居ないか。せめて野ウサギでも居たら良かったんだけど・・・、ん?・・・・・何か聞こえる・・・」

ワーウルフは周辺を見回し音の発生源を探るが何も見つからない。だが確実に近づいてくる声。しばらく悩んでいたワーウルフだったが、高い位置から見渡せば見えるだろうと判断し木々の幹を蹴り三角飛びの要領で器用に木の天辺まで登りつめる。そして見てしまった。男がこちらに飛んできているのを・・。

「・・・・・・?・・・嘘でしょ!なんで男が空を飛んでるんだ!?」

男はワーウルフに向かって一直線に飛んで来ていた。飛んでいた男がワーウルフに気付く。

「そこの人!頼む!助けてくれええええええええ!」

「えっ!?ちょっと待って!いきなり言われてもどうしたらいいの!?」

「俺をキャッチして樹の幹にでも引っ掛けてくれーーーー!」

無茶苦茶な要望だったがワーウルフは体を少し仰け反らせ男に向かって勢いよく飛び巧く空中キャッチした。そして落ちざまに男を枝に引っ掛けワーウルフは綺麗に地面に着地する。

「だいじょうぶ〜〜?」

ワーウルフは枝に引っ掛けた男に声を掛けるが返事が返ってこない。気を失っているのだろうか心配になったが、やや遅れて返ってきた言葉は「お・・・、折れる。枝が折れそうだ・・」だった。男の言葉通りに枝が折れバキバキと他の枝を折りながら落下する。

「あだだだだだだだっ!いてぇぇーーーー!」

ワーウルフは落下してきた男を御姫様抱っこのように綺麗にキャッチし優しく地面に降ろした。

「大丈夫?かなり枝を捲き込んで落ちたけど怪我してない?」

「だい・・じょうぶだ。・・・ッ!う・・あああ!右足が変な方向に向いてるじゃないか!?」

男の脛の真ん中から下が曲がってはいけない方向に曲がっていた。落下の恐怖と助けられた安堵で痛みに気付いていなかったが認識した途端に痛みを覚え始める。

「ぐぅぅっ・・、いてぇぇ〜」

「見事に折れてるね・・、うちで手当てしていく・・?」

「出来れば御願いします…」

ワーウルフは肩を貸し、男をズルズルと森の奥へと導いていく。

「此処からあんたの家までどれぐらい掛かるんだ・・?」

「もう目の前だよ。ほら、あの小屋だから頑張って」

男が落下した場所からすぐの場所に簡素だが綺麗な小屋が建てられていた。偶然にも助けてくれたワーウルフの小屋近くに落ちたのは幸いだ。ワーウルフは小屋の中に男を引き摺りこみ、なんとかベットに寝かせると急いで添え木になる物と痛み止めの薬を探し出した。

「ちょっとだけ我慢してて、・・・これとこれかな。後は・・・」

ごそごそと何かを探すワーウルフを横目に男の意識は落ちていった。

「・・・おまたせ。気絶しちゃってるし、・・なんでこの人・・兎スリッパ履いてるんだろ?」









翌朝、男が痛む足に苦悶しながら起床すると添え木が右足に縛られていた。

「あ、起きた?昨日すぐに気を失ったから驚いたけど、おかげで楽に治療出来たよ」

「痛みで暴れられないで済んだし」と付け加えながら朝食を運んでくる。

「ねぇ、まだ痛む?」

「いや大丈夫だ。・・・ありがとうな」

素直に礼を述べる男にワーウルフは手にお椀を持って男に差し出す。

「この辺りで獲れる野ウサギで作ったシチューだけど・・食べる?」

男は差し出された椀を受け取り心の底から感謝する。

「何から何まで本当にありがとう・・。あんたが居なかったら俺は死んでいたよ」

屈託の無い笑顔で受け取ると胃に流し込むように勢いよく一心不乱で食べる。よほど空腹だったのか僅か数分
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