前編

「はあぁ……」

考える。
果たして、性欲は三大欲求に含まれるのだろうか。

他の食欲や睡眠欲と違って、人間にとって性欲は死ぬことに直結しない。
もちろん種の保存的な意味で見たら重要だってわかるけど、個人として生きる場合ならちょっと違う。
ただ寝て起きて飯を食ってまた寝る。それが現代社会において生きてると言えるかはさておき、生物的に一応生存してる。
だから三つのうち性欲だけが生命が生きていくうえで必要不可欠ではない。
つまり。
人間は禁欲しても生きていける。

「セックスしたいぃ……」

だけど私達、魔物娘は駄目。無理。
生きてくためにはセックスが必要不可欠なのだ。
理屈的には消費する魔力を補う一番効率的な方法として。
感情論で言えば、素敵な旦那様が欲しいから。
超欲しい。いや真面目にそれさえ手に入れば何も要らないぐらい渇望している。もう後輩が寿退社する度に心の中で血涙を流したくないし私も早くお局様ポジションから脱出して一日最低五発の爛れた性活を送って中出しアへ顔幸せダブルピース記念写真とか撮ってそれをスマホの待ち受けにしてみたい。
しかしむべなるかな、現実は非情である。
なんせ必死な私達と違って、向こうはセックスしなくてもいいのだからスタート地点からして違うし。
そもそも魔物娘が侵出する前ならいざ知らず、フリーの男が不用意に出歩こうものなら暗がりに連れ込まれ即逆レ、幸せな結婚ルートまっしぐらになるほど深刻な人間男性不足に陥ったこの国で、お婿さんを探すのは並大抵のことでない。
しかも最近ショタ保護法なんてものも出来たもんだから、競争率は更に上がった。いいじゃんショタ。素敵じゃんショタ。ユニコーン率いるおねショタ一派に法案撤回を期待したい。

閑話休題。
とにもかくにも、男。男が足りない。
男が足りないから仕事にのめり込むしかなくなって、それで仕事もかなり出来るようになるから昇進して余計男性社員から遠い存在になる。
まさに負の連鎖。アンチスパイラル。
一体どうなってるんだ私の人生。
神…はいないけど全知全能の魔王様なら一人ぐらいお婿さんを宛がってくれてもいいんじゃない?
自分で言うのもなんだけど、私結構ギリギリよ?
迷える小悪魔ここにいますけど、ちょっと優先順位間違えてませんか?早く助けてやくめでしょ。

「ねぇねぇ、おねーさん」

ーーーぁえ?

え、誰? 私? 私のこと?
いけないいけない。魔王様に怨嗟吐いてたせいで変な声でた。
魔物娘にしては珍しく定時退社(大抵はお婿さんと一緒に早引き)する途中の私に声を変える人なんていないから。
いないはずなんだけど、でも振り替えると、知らない男の子がこっちを見ていた。
歳はかなり若めで、身長は高め。
ピアスとかはしてないけど、茶髪な見た目は結構遊んでそう。
ピチピチの精と制服から見えるうなじが眩しい。

…ん?制服?
コスプレの安っぽさはないんですけど本物?
しかも匂いからして誰かのお手つきじゃないとか?詐欺?私の身体目当てなら喜んであげるけど?

「実はちょっとお金無くてさー…ちょっと貸してくんない?」

足を止めた私に制服男子が近づいてくる。
茶髪の軽そうな態度にふさわしい、遠慮のない距離の詰め方に私の心臓と子宮はバクバクジュンジュン。

えーっと……。
これってもしかしてママ活ってやつ?
金銭を見返りに色んなことをする、いわゆる援助交際の一種。
前時代に流行ってたパパ活(なんて素敵な響きなの?)の男女逆バージョン。 
でももれなく独身魔物娘にお持ち帰りされるので今はショタ保護法で禁止されてるはず。
いやその前に魔物娘にそんなことする意味わかっているのだろうか?もしかして行き遅れの年増サキュバスってナメられてる?だとしたら色々と許せそうにないんですけど?

「おねーさん、暇なんでしょ?……ならちょっと遊んでくんないかな?」

スケベ大好き魔物娘として物申す前に、肩と肩がくっつくほど近づいてこられた。
若いのに何をやってるのあわわわわ。
婿前の男の子がはしたなはわわわわ。

あー…だめねこれ。初めての男性の至近距離で理性がショートしてる。
いや魔物娘の理性なんて所詮こんなものだけど。
プライド?なにそれ美味しいの?
でも頑張って私の理性。
魔物娘としてはあれだけど、ここはガツンと毅然な態度で大人の余裕ってやつを見せつけてあげるのよ。

「……どうかな…?」

ーーーひぅ
#9829;
#65039;

ふぅ、って!ふぅ、って!
公衆の面前なのに耳に息をかけましたよこの子!
ちょっとえっち過ぎない!?それが若者の性の乱れってやつ!?魔王様ありがとうございますこれでご飯三杯はいけます!!

「くす……じゃあこっち行こうか♪」

にやにやといやらしく笑う男の子に引かれて、吐息ショックから立
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