「足の速い船をやや先行させて、本体はその後方を行くことにする。デカ物のお前は輸送船の後ろにくっついて後方からの襲撃を警戒しろ。」
「鈍重そうだからあまり無理するなよ。」
「それでは船団のしんがりを勤めさせていただきます。」
サバト艦隊の旗艦「アレクサンダー」に艦長達が航路についての情報交換と航行時における規定を話し合っていた。
前回は敵の発見が遅れたせいで包囲を許してしまったと言うことで、索敵を重視して、自分たちをおとりにして輸送船から敵の目を逸らそうという内容だった。
ちなみに、デカ物とか鈍重そうと言うのは妙高に向けられた言葉である。カズヤの額に何本もの青筋が現れていたが、そこでぐっとこらえているのは本当に感謝したいほどだ。ただ、いつ爆発してもおかしくないところの一歩手前まで来ているため、他には聞こえないような小声で、
「好きなように言わせておけばいい、少なくともバフォ様は認めてくれているのだから。」
カズヤは黙って頷くだけだが幾分落ち着いたのだろう、額の青筋は少なくなっていた。そして海図やそこに書かれたルートをよく見て、
「艦隊司令さんよ、敵方の戦力は分かってるのか?どこから出現するとかさ。」
「だいたいの出現場所はそこに書いてあるとおりだ。規模についてはこちらの倍以上はあるだろうな。」
「勝算というか、輸送船の安全は保証されるのか?」
「そのために戦列艦隊で敵を引きつけるのだ。分かったなら、正午に出港する。特にそこのデカ物は遅れるなよ。」
「わかりました、正午出港ですね。」
流れ解散的に船長達は船を下りてそれぞれの船へと向かっていった。リョウとカズヤは造船所までのんびりと歩くことにした。
「デカ物って、ちゃんと妙高という名前があるのに何かの嫌がらせか?」
「さっきも言ったけど言わせたいやつには言わせておけばいい。」
「俺なんかあと少しであいつらを海にたたき込んでたところだぜ。」
「まだ、乗員のほとんどが女子供だの言われなかっただけマシとしよう。」
「そう言われてたらどうする気だったんだ?」
「主砲に装填して引き金を引くだけだ。」
「…えげつないな、おまえ。」
滅多に怒ることがないリョウだが、だからこそ最も怒らせてはいけないやつなんだと長い付き合いのカズヤは改めて思った。
「二人ともお帰り。」
「今帰ったぜ。」
アヤが妙高の見張り台から飛んで出迎えるが、リョウは何かを考えているようでアヤの言葉が耳に入って無いのか無反応。
アヤがリョウの目の前で羽を振っても反応がないためにそのまま両羽を頬に添えてそのまま口づけをする。さすがにカズヤもしばらく成り行きを見守っていたが、すぐにリョウは我に返りアヤを引き離す。
「気づいた?」
「ああ、おかげさまで。」
いたずらっ子のような笑顔のアヤと顔がアカオニかと言うほどに真っ赤なリョウがそのまま妙高に乗艦すると、乗員からどうしたんですかなどと詰め寄られる。カズヤも乗艦しようとすると、いつでも出港できる準備は完了していることが煙突からの陽炎が休止時よりかなり多くなっているから分かった。
「艦長さん、このルートは襲ってくださいと言ってるようなもんだぜ。」
艦橋には戦闘を担当するであろう元戦列艦乗りの乗員とそれぞれの長を集めて旗艦上で行われた会議について決定したことを伝達していた。元戦列艦乗りの乗員にとっては、この航路だと間違いなく戦闘は避けられないということ、あのときも同じように航行して待ち伏せに遭ったあげく包囲されてしまったということをみんなに語った。
「ということは、その艦長はよほどのバカか、何か対策があるからそうしているのかが分からないな。」
「もしあるとすれば、夜間のうちに突破するつもりなのかな。」
「闇に紛れて突破するということか。」
闇に紛れる方法は有効かもしれないが、逆にこちらも敵の動向が分からなくなるということになる。夜間の索敵についてこちらは問題ないが、戦列艦はどうするのか気になってきた。
「夜目の利く見張りといっても限度があるからな。」
「もし夜の戦闘になったら精一杯するだけです。」
砲術長の魔女も未知数が多すぎる今回の航海については不安を感じているはずだが、部下達やこの艦を信用してくれているのかそういったことはおくびにも出していない。
「その時はその時だ。36ポンド砲なんて豆鉄砲ごときでこの艦は沈まねえよ。」
「20.3センチ砲ですべて粉砕して見せますよ。」
「あのときの借りを利子つけてたっぷりと返してやるぜ。」
なんだかんだ言っても暗い雰囲気になることもなく、それぞれに気合い十分と言ったところか、カズヤの方を見てもみんなの気持ちが伝わってきているのか不
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