――雨の音が聞こえる。
部屋の外からはザァザァと地面を打ち付ける音が聞こえる。
どうやら結構な量の雨が降り出したらしい。
少し前まで虫が鳴く声が届いていたのだけれど、今は雨音が他の音を全てかき消してしまっていた。
雨の日は複雑だ。
好きと言えば好きな日である。
だけど、決まって少し胸が締め付けられる日でもある。
理由は母の存在だった。
布団に横たわっている僕の頬を、傍らに座る母が優しく撫でた。
僕を見下ろす彼女の頭上には大きな傘が被さっている。
唐傘おばけ――それが魔物娘である母の種族だ。
母の表情は明るくなかった。
僕に微笑みかけるその瞳の中には、隠しきれない負の感情が浮かんでいた。
無理もない。まだ物心すらつかない年齢だった僕と違って、彼女は鮮明に思い出せてしまうのだろう。
僕ら二人が、捨てられた日のことを。
僕は捨て子だった。
どんな人だったかも知らない。
どんな事情があったかも知らない。
ただ、僕を産んだ人は、赤ん坊の僕を道に捨てた。
上等と言えない籠に布で包み、そして最後の優しさとして。
雨に濡れぬよう、一本の傘をそこに置き捨てて。
冷たい雨から僕を守ってくれたのは、他の誰でも無い、母だった。
主人に捨てられたことへの無念、嘆き。
それ以上に湧き上がる、実の子を捨てた相手への怒り。
他の全ての感情に勝った、このままでは消えてしまう小さな命への、憐れみと母性。
母は女性の姿を得た。
赤ん坊の僕を抱き上げ、僕を決して濡れぬように庇い、雨の中を歩き出した。
――大丈夫だよ、お母さんが守ってあげるからね。
そう、呼びかけ続けながら。
以来、僕はずっと母に育てられている。
不満を抱いたことは無い。あるはずもない。
母はどこまでも優しく、時折痛々しさすら感じられるほど、懸命に僕を養ってくれている。
僕をいつまでも守り続けてくれている。
しかし、僕の――そしてある意味で、唐傘おばけとしての母の出生は、彼女に暗い影を落としているのだ。
怖い、という。
雨の日になると、二人で捨てられた記憶が蘇ってしまうという。
そして、こんなことすら考えてしまうという。
自分がいつかまた、不要な存在として捨てられるのでないか。
他の誰でもない、最愛の息子に。
どれだけそれらしく振舞おうが、自分は単なる傘であって。
愛する人の本当の母親ではないのだから、と。
――母さん、と呼びかける。
大して頭にも入っていなかった文庫本を放り出し、母の腕を引いて抱き寄せた。
もう小さくも感じられるようになった、母のしなやかな肢体の感触。
微かな悲鳴を上げた唇を奪うと、母もそれを簡単に受け入れて、積極的に舌を絡め始めた。
過去のことを打ち明けられてから、何度も母の恐れを否定してきたが、中々その不安を拭い去ることはできなかった。
それほど根の浅い問題ではないらしい。当然でもあった。
だったら、言葉だけで僕の思いが伝わらないのなら、身体にも伝えれば良い。
単純に僕はそう考えて、雨の日には必ず母のことを求めるようになっていた。
そうすることで、少しでも母の恐怖が薄れるのなら、願ってもないことだ。
下世話な話をすれば、雨の日は母も普段より一層乱れてくれる。二人で得られる快楽も強い。
今日も存分にあられもない痴態を見せ、僕の獣欲を満たしてくれることだろう。
貪るような口づけをしながら、母の女性の部分に指を差し込む。
そこは既にじっとりと濡れ、中は熱くうねっていた。
キスをする口からくぐもった嬌声が聞こえ、僕はさらに指を進めていく。
雨の音は、まだ途切れることなく続いている。
けれど、二人でこうして、相手の存在を確かめ合っていれば、いつか。
きっと、この雨も止むだろう。
◇
ヴァンパイアママン「…………」
ダンピールママン「どうして正座させられてるか分かってる?」
ヴァンパイアママン「はい」
ダンピールママン「それはね、赤ちゃんはとーっても可愛いよね」
ヴァンパイアママン「はい」
ダンピールママン「それに人間の男の子だもんね。キミも貴族の意地なんてあっという間にポイして溺愛してるもんね」
ヴァンパイアママン「はい」
ダンピールママン「あの子を早く立派なインキュバスにしたいって思っちゃうよね」
ヴァンパイアママン「はい」
ダンピールママン「血だって吸いたくなっちゃうよね。我慢できないよね」
ヴァンパイアママン「はい」
ダンピールママン「分かるよ……? 分かるけどね、でもね……?」
ヴァンパイアママン「はい」
ダンピールママン「よりにもよってどうしてオチンチンに噛みついたのかな?」
ヴァンパイアママン「欲
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