対岸が霞むほどの大河を見つけたので、サバイバル戦術的に下ってみた。
あわよくば海へ、と思ったのだが、そううまくはいかないらしい。海は海でも、密林を抜けたそこは砂の海だった。
青い空、灼熱の太陽、白い砂山。これで海があったら気分はハワイアンだったんだが。
……って、現実逃避している場合じゃないな、うん。
「さて、どうするか……」
このまま河の流れに沿ってまた下るか? いや、それ以前にやるべきことがある。
水の確保だ。
はい、今そこに河あるじゃん、って思った人、手え挙げて。
河の水そのまま飲めと? 確実に腹壊すわ。河下る前に俺の腹が下るわ。
そんなわけで飲み水の確保だ。濾過装置を作ろう。
仕組みは大変簡単。まずはハンカチを取り出します。ちなみに今の俺の所持品は制服(夏服)とスマホ、ハンカチ、それとさっき手に入れた硬貨が数点だ。
さて、次にハンカチに砂漠の砂を詰めます。これを川辺に生えていた蓮の葉を筒状にしたものの口に被せれば完成、簡易濾過装置。このハンカチのところに水を注げば濾過できる、はず。
そんなこんなである程度濾過水を水筒(蓮の葉製)に入れ、日焼け防止用の蓮の葉傘を装備して、俺は河沿いを歩き始めた。エジプトだとナイル川に沿って多くの街が密集しているし、このまま行けば誰かと会えるんじゃね? という目論見だ。
「しっかし、砂漠にジャングルとか、腐海みたいだな……お?」
非常識的景観に、思わずジブリ作品を重ね合わせていると、唐突に足首を何かに掴まれた。一瞬、石か何かに躓いたのかと思ったが、そうではなかった。
サザササザザザザザザササ、と。
何かが砂中から現れる。まず、見えたのが弧を描く赤褐色の大きな尾。団子状の節に分かれたそれは恐らく蠍の尾だろう。ただし、俺の背丈ほどもある。これだけ見えれば一発でわかる。巨大蠍だ。全体を見るまでもない。
……まったく、どうして一々こう、大きいのだろうか? カンブリア紀か、ここは?
あ、いや、ちょっと待て。
「ふふ、ふフフふフフふふふふフフフフフフふ」
その巨大蠍の全貌をよく見てみると、蠍と美女のキマイラみたいなやつだった。
こう、本来は蠍の頭部に当たるところに美女の上半身くっつけたような。
「……こんちゃーっす」
何となしに話し掛けてみた。一応、上半身人間だし、粗末ながらも服……というか『さらし』のようなものを胸に巻いているし、もしかしたら人間的文化交流が
ヒュッ!
――できると思っていた時期が私にもありました。
「うおっ!?」
唐突に目の前に繰り出された尾先の針を、俺は身を捻って避ける。
言うまでもなく目の前の蠍女の針だ。
ブチッ!
「ッ!?」
俺が態勢を崩して無理やり避けたためか、俺の足を拘束していた蠍女の鋏が、片方引き千切れる。
脆いな。
自身の鋏が
#25445;げたのに驚いたのか、蠍女がバックステップ(?)で華麗に距離を取り、砂塵を巻き上げている。
彼女はさっきまで生肉を目の前にした肉食獣さながらの表情でこちらを見ていたのだが、今では眉間に皺を寄せた、警戒心丸出しの面構えでこちらを窺っている。
「お前、何者だ……?」
お、しゃべった。やっぱり喋れるのか。
これは何とか交渉できるか?
「俺は氷室狂介。高校生だ。できたらちょっと今、色々と聞きたいことがあるんだけど?」
主に最寄りの街がどの辺にあるのか、とか。
あとは名前とかスリーサイズとか年齢とか趣味とか食性とか。
「……コウコウセイ? 勇者ではないのか?」
「ユウシャ? ドラクエの? それとも背後に宝剣いくつも浮かばしてる人のこと?」
俺は有象無象の一般人なのだが。
「ホウケン? よくわからんが、勇者は勇者だ。我々を視界に入れれば皆殺しにして、身ぐるみ剥いでくるようなやつだ」
なにそれ怖い。
俺は顔の前で手をぶんぶんと振りつつ答える。
「ひでーな、おい。俺のどこにそんな要素があるんだ?」
「今、私の腕を引き千切った」
むう。
確かに、結果的にはこいつの鋏を
#25445;いでしまったが、あれは不可抗力だ。ノン悪意だ。だが、事実として
#25445;いでしまったのは俺だ。
「お、おう、すまん。いや、すいませんでした」
腕を組んで唇を尖らす彼女に頭を下げる。
そうそう、因果応報。悪いことしたら巡り巡って自分に帰って来るもんだ。だから、こういうことは早めに清算するに限る。悪いことをしたら向こうに非があろうともすぐに謝る。これ人間社会の基本ネ。
「で、なんで俺を襲ったんだ……あー、名前は何ていうんだ?」
「……サハリ」
砂針ね。まんまだな。
「折角だから、巣に持ち帰って食べようとしただけだ」
「おっそ
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