吹雪が鳴く雪山…
僕は一人恐怖に震えていた…
「っぅう…」
ガタガタと身体が震えて止まない、手足は冷たく、痛みさえ感じる。
このままでは死ぬ…誰がどう見ても結末は絶望…。
しかし、ここから動くことも出来ない…今、この状況で1番安全なのはこの洞窟の中で吹雪が収まるのをただ…待つこと…。
吹雪が収まればなんとか山を降りることが出来るかも知れない。それでも弱りきったこの身体ではとても危険な行為だが…。
山の天気は分からない…。
だからこそ吹雪が今にでも吹雪が収まってくれるのではないか、そんな儚い希望を抱いて震える。
吹雪が収まるのが先か…。
それとも僕の意識が、命が尽きるのが先か…。
「う…っうう…ひっく…」
収まらない吹雪、冷たい洞窟にただ僕の細い声だけが響く。
ダメだ…だんだんと身体が、意識が、死へと近づいてる実感に、恐怖に、涙が止まらない…。
僕は…バカだ…こんな事に…こんな事になるならっ…。
いっその事、寝てしまおうか…
きっと楽に逝けるのではないか…
そうすれば…きっと…
…おかあさん…おとうさん……
僕は静かに瞳を…。
ザッ…ザッ…ガッ…
「はぁ…まいったなぁ…ん…??」
突然と、それは僕の耳へと届く。
とても美しく力強い声…。
薄れる意識に響くその声はおそらく僕をあの世へと導く天使の声だろう。
そんな声は僕の心に落ち着きを、与えてくれた…。
少しだけ恐怖を忘れる…そんな錯覚…。
それにしても…まいった、だなんて…。
「…君…大丈夫か?…おいっ…しっかり…」
なんだか…天使にしてはなんというか…天使ってもっと…言葉使いとか丁寧なイメージだったけど…。
「キミッ…まずいな…意識がないのか!?」
その瞬間、僕の頬に冷たい衝撃が走る。
「ぇあ??ひっ…」
たまらず遠のく意識が戻り、つい目を開きその声の主へと顔を向ける。
「あぁ…良かった…まだ意識はあるな…しかし、随分と疲弊して…身体もこんなに冷たい…待っていろ…今すぐに火をおこすからな…」
「はぇ??あ、あなたは…??え…もう…あの世??」
「何を言ってる…いいから大人しくしているんだ、今は喋るだけでも体力を使ってしまう、黙ってなさい」
まだ意識はうっすらとしかなく…その声の主の姿もハッキリと映せない目…
ぼんやりと映るシルエットは…
とても背が高く髪の長い美しい女性…
ただその姿は天使のように美しかった…
ガッ…パチッ…パチパチ…
「ほら…こっちで身体を…って…動けないよな…よっ…と、失礼…」
「あっ…」
どうやら僕はその天使に抱えられているらしい…とても暖かくいい香りのする…
「はぁ…天使様…」
「喋るなと…まぁいい…よいしょ…」
「あ…あった…かい…」
気付くと目の前には篝火が…おそらく天使様が作ってくれたのだろう…
そして何より僕を抱きしめてくれているその身体がとても暖かく包んでくれている…とても上質な毛皮は僕の心まで優しく穏やかに包んでくれている様な…
「そうだろう…もう大丈夫だ…今…スープを温めるから…いい子で大人しくしているんだぞ…」
ゴソ…トン…カチャ…
「ぁ…はい…ありがとう…ございます…」
「なに…これも私の使命のひとつさ…」
パチ パン
パチ
ついさっきまでの暗く冷たい洞窟が嘘のように、うっすらと暖かく優しく色に変わっている… 。
身体も天使様に支えられ寄りかかるような状態、火にかけた鍋のスープをゆっくりと優しく混ぜるその手までも細く華奢で美しい…。
カチャ
カチャ…
「んっ…よし…良い具合だな…さ…スープが出来たぞ」
「あっ…はい…」
身体を起こしてスプーンを受け取ろうとしたがそれを遮るように…
「あぁ…君はそのままでいるんだ、私が食べさせてあげるから…ほら…あーんしなさい」
思わぬ発言に戸惑う…そこまでして貰うわけには…。
「えっ…いっ、いえ…で、でもっ…」
「ダメだ…ほら…わがまま言うとあげないぞ?ほーら…あーん」
「あっ…す、すみませんっ…い、いただき…ます」
僕は照れながら口を開けて顔を差し出す…やっぱりここは天国なんじゃ…
「あー、んっ…んぅ…」
コクコク…
「っ!!…はぁ…お、美味しいぃ…」
声が漏れてしまう…口から喉から流れたスープが身体の芯に染み渡る様に熱を僕に与えてくれる…。
「ふふっ…そうだろう…私の特製栄養たっぷりのスープだからな…芯から暖まるだろう…?ふぅ…しかし…間に合って良かったよ…」
「あ、ありがとう…ございます…本当に…うっ…ひっぐ…ぐすっ…ありが…とっ…」
生の実感が湧いたと同時に涙
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