「オラァ、ここらにいることは分かってんだぞ! とっとと出てこいやゴルァ!」
愛剣のイグズガリバーを振り回しながら叫ぶ。俺の名前はティム・アーク! 世界最強のゴーストバスターだ。 え? ゴーストバスターって何だって? ったくしょうがねぇなぁ、特別に教えてやらぁ。ゴーストバスターってぇのは、魔物であるゴーストだけを退治する最高にイカした職業さ。
べ、別に教会所属の騎士団に入ろうとしたら全く相手にされなかったからとか、魔物の中で一番弱そうだったからゴーストのみを相手にしてるとか、決してそんなんじゃないからな!
てなわけで、今日も俺は一人で墓場をパトロールする。なんで一人かってーと、ゴーストバスターは俺しかいないからだ。故に俺は世界最強のゴーストバスターなのさ! このロジックを考えついた俺は天才だな!
おっと、そこの物影が怪しいな。何かがはためいているのが見えるぜ。世界最強の俺がこんなに怪しいものを見逃す訳ないぜ!
――――――――
「今日も収穫なし、か」
結局さっき見付けたのは、ただの布切れが風に揺らめいていただけで、それからはゴーストはおろかゾンビの姿すら見えなかったぜ。まぁゾンビが出て来たところで俺の専門外だから無視するんだがな。
そう、俺の狙いはあくまでもゴースト! あいつらになら負ける気がしないぜ! むしろ、姿を表さないってことは戦う前から俺にビビっているに違いない。まぁ俺は世界最強だから無理もないがな!
そろそろ夕暮れだし、夜の墓場は怖いからとっとと帰ろうかな。ん? なんで夜は見回らないの? 夜の方がゴーストいそうじゃない? だって? ちっちっち、全然分かってねぇな。
奴らの狙いはあくまで人間。朝や昼に墓場に来る人間もいるだろうが、夜、暗くなって不気味な墓場に来る物好きな人間はいないだろ。いたとしても、墓場で肝試ししようなんて考える阿呆くらいさ。
「さっきから何ブツブツ言ってるの?」
「ぶほぉぁ! くわぁcuslだばらっnhdjemへがばなgqtw!」
急いで跳び退いて距離を置く。あー心臓止まるかと思った。俺の後ろを取るとは中々の手練とみた。
「お前どうして俺の後ろにいるんだ。後ろの気配にも気を配ってたんだが」
「だって私ゴーストだもん。気配なんてあるわけないじゃない」
「それもそうか……って何ぃ、ゴーストだとぉ!」
確かによく見てみると足がない。ついでにかわいい。ゴーストってもっとおどろおどろしいものだと思ってたから何だか拍子抜けだぜ……いや、これは仮の姿。善良な市民の姿に化けて俺を騙すつもりだな?
「俺は騙されないぜ。その姿で油断させたところで俺を襲うんだろ? そうはいかないぜ! はぁぁぁぁ! イグズガリバーァァ!!」
「まぁ襲うには襲うけど……ってうわっ!」
俺は愛剣の名前を叫びつつ、上段に構えたイグズガリバーを一気に振り下ろす。はははっ、切れ味が凄すぎて手応えすら感じないぜ。市場の武器屋でそれっぽいものを買ったけど、思わぬ掘り出し物だったな。一撃で屠ることも出来るが、駄目押しにもう二、三撃入れておこう。
ブン、ブン
これで完璧だ。俺のゴーストバスターとしての初仕事は完璧だったな。流石は俺。
「全然痛くないんだけどね」
「そうだろうそうだろう……って何だってぇぇ!」
確かに俺の計三発の攻撃は当たったはずなのに、俺の目の前にいるゴーストには傷一つついていない。
「そ、そんな馬鹿な……っ!」
「フフッ、よくも切り付けてくれたわね。お返しよ! それっ!」
ゴーストが繰り出した手刀が俺の心臓を貫いた。体中から血の気が引く。
「ゴフッ、ガハッ、お、おのれ〜よくも……」
死ぬ直前ってのはよく走馬灯ってのが見えると聞くが、俺には見えなかったな。母ちゃん、父ちゃん、こんな出来損ないの息子で悪かったな。弟よ、俺の分まで母ちゃんたちを守ってくれよ。それじゃあ、俺はそろそろ、逝く……よ…
「お〜い、戻ってこーい」
「はっ、ここは。そうか俺は死んだのか。そばにはゴーストもいるし、間違いないだろう」
「確かに私は死んでるけど、君はまだ生きてるよ」
何? 俺は生きているって? 呼吸確認。スーハー。うん、出来てる。脈確認。とくとくとく。うん、正常。しかし、心臓を貫かれたはずなのに何故俺は生きているんだ?
「だって本当は貫いていないんだもの」
ゴーストは手を開いたまま、俺の腹に押し当てる。その動きはゆっくりしているのにも関わらず、手は腹の中へと吸い込まれ、完全に見えなくなってしまった。
「今の私には実体がないの。だから私はあなたのことを触ることが出来ないし、逆にあなたも私のことを切ることが出来ないの」
「まぁそれなら世界最強の俺の攻撃も当たらない訳だな。……ん? じゃあどうやってゴー
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