それから数日後の夜。
フラックは自分の部屋で武器の手入れをしていた。
「ふう・・・」
最後に剣の鞘を修繕し、ようやく一息付けた。
これで明日もまた戦える。
もう寝ようかとフラックがベッドへ向かおうとした時だ。
『ドンドンッ!!』
部屋のドア越しから音が聞こえてきた。
『俺だイシスだ!! 開けてくれ!!』
イシスの切羽詰まった声だ。
すぐにフラックはドアを開けイシスを迎え入れた。
「おいおい何だよ、いきなり?」
「フラック、早く逃げるんだ!!」
「だから一体なんだ!?」
「ばれたんだよ!! ヘスティが魔物娘だって事に!!」
「っ!!」
フラックは耳を疑った。
「ん、んなっ!? マジかよ!! けど誰が?!」
「分からん。けど今お偉いさんが兵士引き連れて、ここに向かってる!! 早く逃げるんだ!!」
そう急かされ、フラックはすぐに剣を持って部屋から出た。
本当は鎧とかを着て行きたかったがその猶予はなかった。
事は一刻を争うのだから。
「こっちだ、こっち!!」
イシスが手招きする方へフラックは走っていった。
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宿舎の裏側へと行くと既にフレイズとヘスティ、そしてベルセティアが待っていた。
三人ともその表情は険しかった。
「フラック、どうやら・・・」
「ああ・・・。でも一体誰がチクったんだよ!!」
「僕ボロは出してないよ!! 姿を見せるのはフラック達だけだって決めてるし、ちゃんと誰かに見られてないかも確認も!!」
「それは後で考えるんだ!! まずはここから出るのが先決だ!!」
フレイズがそう言うと城壁の壁に向かって呪文を唱え始めた。
見れば既に壁の一部には分からない図形が記されており、それが少しだけ光を放つと。
『ガラッ!!』
鈍い音と同時に壁の一部にぽっかりと穴が開いてしまった。
その穴の大きさは複数で入るのは無理だが大人一人分が通るには十分だった。
「この緊急事態だ。なりふり構わずにはいられないだろう?」
「・・・そうだな」
一刻も早くここから出なければならい。
フレイズの言う通りなりふり構わずにはいられないのだ。
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フレイズの開けた穴を使い宿舎から脱出出来たフラック達。
夜道を駆け抜け、やっとのこさ首都から出られたのだが衛兵達の対応は迅速であった。
「いたぞ!! こっちだ!!」
首都の外へと出て、草むらの道を進んでいたら大声が聞こえてきた。
フラックが振り向くと衛兵達がこちらへと向かってきている。
その人数は多く、このまま追い付かれてしまうのは時間の問題だ。
ならばと、フラックは決断した。
「・・・お前らは先に行け。俺が時間稼ぎをする」
フラックは剣を抜刀し、追手に対して身構えた。
「んな?! フラック正気か!! 時間を稼ぐなんてあの数じゃ!!」
「そうだよ!! 僕達は仲間でしょ!! こうなったら一緒に戦おうよ!!」
イシスとヘスティが声を掛けるがフラックの意思は固かった。
「いいから行け!! 時間がないんだ!! 国境付近の山へ落ち合うぞ!! 国超えれば追ってこねえだろ!! さあ!!」
言い争っている間にも衛兵らは近づいてきた。
もう考えている時間はない。
このままでは全員捕まってしまう。
全員捕まらない為の方法、そしてヘスティを守る為の方法は一つ。
だからこそフレイズはフラックを信じて、決断したのだ。
「・・・分かった。先に行こう」
「おいフレイズ!?」
「ヘスティが捕まったら、何の為に俺達は逃げたんだ。今はヘスティを守るのが大事だろ!!」
「うぐっ・・・!! 確かにそうだけどよ!!」
まだ何か言いたかったイシスだがもう敵は目の前までに迫ってきている。
このままでは囲まれてしまい、全員が逃げられない。
チャンスは今しかなかった。
「迷うな、行け!!」
フラックがそう催促すれば、イシスはもう腹をくくるしかなかった。
「ち、ちくしょう!! すまねえフラック!!」
「フラック、無理はするな!! 行くぞヘスティ!!」
そう言いフレイズはヘスティの手を引っ張るとそのまま走り出そうとした。
「そんなフラック!! フラック!!」
ヘスティはその場に止まろうとフラックの名前を叫んでいた。
「来るんだヘスティ!! 待ってるぞ、フラック!!」
フレイズはヘスティをおんぶして、走っていった。
されどベルセティアはフレイズ達と一緒に逃げようとはしなかった。
「フラック、私は残ります。一人よりも二人の方が時間を稼げます」
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