後編

浮かない顔をしたまま森を彷徨い歩いていたアトラタ。
確かにフェーレースから逃げ切れたのだが何故か喜べなかった。
あれだけの目にあったにも心の何処かでフェーレースを求めていた。
今でも、もう一度小さな女の子と体験してみたいと、フェーレースを求めている自分がいた。
あの締め付けが強い膣で、甘酸っぱい唾液を味わってみたい。
そう、無理やり犯しながらも喜んで受け入れてくれる・・・。

「いいやっ!! 駄目だ駄目だっ!! 真っ当に生きるんだっ!! 絶対に求めちゃいけないんだっ!!」

必死に首を振ってアトラタは邪な想像を振り払った。
このまま堕ちては駄目だという理性を働かせて。


『ガサガサッ!!』


その時、不意に目の前のくさむらが動いた。
何者かとアトラタは身構えた。




「にゃああ〜」




そこから出てきたのは一匹の猫だった。
体格は自身の両腕で抱えられる程、すらりと長い前足だったから子猫ではなく大人の猫なのだろう。
だがアトラタは油断しなかった。

「ま、まさかお前!? あれでも生きていたのかよ!?」

この猫もまたフェーレースが化けているのだと思ったら油断なんて出来るはずがない。
だがその猫をよく見てみると、後頭部から銀髪の毛は生えていない。
全体的に毛の色が黒色で所々銀プチが生えており、フェーレースの今までの変身だったら全身が銀色になるのがお決まりみたいなものだから恐らくのこの猫は無関係ではないか?
しかもその猫の瞳の色は黒だった。
フェーレースの瞳は金色のはず、彼女が瞳の色まで変えるなど面倒な事はしないはずだ。

「にゃあ?」

それに猫は頭を傾げ、不思議そうにこちらを見つめている。
暫くアトラタは猫の出方を疑ったがこちらに向かって飛び掛かる様子はない。
時折前足で顔をくしくしとかいて、あくびをしている。
どうやらフェーレースとは本当に違うようだった。

「ああ、変な神経使ってごめんな・・・」

そう言いアトラタは猫の頭を撫でようとした。
当の猫はアトラタを拒むことなくその手を受け入れた。
頭を優しく撫でれば、ふさふさとした毛の感触が伝わり、心が癒されるようだった。

「にゃあ〜」

呑気にまたあくびをして、目を細め撫でられていた猫。
そんな猫を見ていたら緊張が解れて心の余裕が生まれてきた。
「ははっ・・・。そうか、気持ちいいか」
そんな軽口を叩ける程にアトラタの心は回復していた。
小動物との触れ合いはすり減った心にとって癒しのひと時なのだ。

「にゃあ♪」

不意に猫はアトラタの手をかいくぐり、右足首辺りに頭を近づけるとゴシゴシとその顔を擦ってきた。
どうやら人懐っこい猫なんだなとアトラタは思った。
猫の擦る行為にアトラタは拒絶せず、猫のしたいがままさせていた。
次に猫はアトラタの右足首から離れると。

「にゃ!!」

左の前足を指さしするが如く挙げた。


「着いてこいって言ってるのか?」


何故猫がそう言っているのか分からなかったがアトラタはそう直感したのだ。
それを拒否しようなどアトラタは思い付きはしなかった。
どうせ訓練にはもう間に合わないのだ。
それに川に沈んだ彼女はもう追ってこないだろう。
ならば猫の気まぐれに付き合ってみるのも一興だとアトラタは考えた。
「じゃ、案内頼むぜ。・・・ってああ、ちょっと待ってくれないか?」
「にゃ〜?」
猫は不思議そうにアトラタの方へと顔を向けた。

「ほれ、お前お腹空いてるだろ。大したもんないけど・・・」

アトラタはゴソゴソとポケットを探る。
そしてポケットから出したのは非常食用の乾パンだった。
それを一口大に砕き、猫の方へと放り投げる。

「ほれ、食えよ。前金とかじゃねえけどよ」

一瞬その硬い乾パンに猫は食べるのかと思っていたアトラタだが。
猫は乾パンを口に含むと、右へ左へと頬を膨らませていた。
どうやら口を動かしている様で柔らくしてから食べるつもりなのだろう。
そしてごくっと飲み込むとにゃあ、と声を挙げた。
鳴き声からして不愉快そうな声ではなかったからアトラタは安心した。
「おお〜うめえか? よしよし」
味の感想など猫が言うはずないがそれでも嫌々食べている素振りはなかったから勝手に思っていた。
そしてアトラタはじっと猫を見つめていた。
猫は気まぐれで自由に生きていける動物。
人とかにあれこれ言われずのうのうと生きていける存在。
そんな猫を見てアトラタは少し羨ましく思ってしまった。
次にはどう考えたのかその猫につい愚痴を、本心を呟きたくなった。


「その、お前にだけは言うけど・・・・俺、悪くないと思うんだ。あいつと暮らすってのも・・・」


「にゃあ〜?」

その猫からすればあいつとはいったい誰で、何の話をしているのだと分からないだろうがそれでも猫は興味あ
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