その日の夜は、実に綺麗で幻想的な夜だった。
「これが稲荷神宮の祭りか、何とも幻想的な祭りだな…。」
「はい…、そうですね。ご主人様。」
そう、俺たちは今、稲荷神宮で開催されている祭りを楽しんでいる所だ。
「そうだ、ご主人様。折角ですから、此処の神様にお参りに行きませんか?」
そうそう、1つ言い忘れた。此処、稲荷神宮の神様は名前から分かる通り稲荷なんだが、その神様は何でも願いを叶えてくれるらしい。らしいって言うのは、例えば、結婚がしたい、巨万の富が欲しい、など本当に叶ったり叶ってなかったりと、まぁ気分次第って事らしい。
「そうだな。さ〜て何を願おうか?」
「私は…、もう決めてますよ…。」
「ん、そうなのか?何を願うんだ?」
「そ、それは秘密です!!」
そう言って、少しぽっちゃりとした少女は顔を赤らめてそっぽを向いた。皆さんお馴染みだと思うが、この少女はルゥ。訳あって……って、面倒だからいいや。
そうやって何だかんだやっている内に、社に着いた。社の前には長い行列が出来ていたが、そんな事は気にしない。何故なら此処に来るまでにちゃんと露店で食べてきたからな。
しっかし、驚いたよ。ジパングにはその土地でしか見られない道具や食べ物があるんだからな。特に驚いたのは、たこ焼きという食べ物。興味本位で買ったんだが、何とも食べずらい。だってナイフやフォークじゃなくて、小さくて先の尖った棒があるだけだぜ。どうやって食べろっちゅーの。
そうやって、あたふたしている内に見かねた店主が食べ方を教えてくれた。なるほど、この棒でこの丸い物を食べるのか。俺が口にたこ焼きを入れた瞬間、熱さが口の中を覆ったが、その後中から自分も食べたことがあるタコが出てきた。うん、コレは美味い、今度エスパニアに戻ったら作ってみようか。
「ご主人様、いよいよ次ですね。」
おっと、こんな事している場合じゃなかった。次は俺たちの番だ。
「…次の人、どうぞ。」
係員に誘導され、俺たちは緊張しながら社の中へと入っていった。
「ようこそ、稲荷神宮へ、妾がここの神様である霜月(しもつき)じゃ、よろしくの。」
「「よろしくお願いします。」」
初めて見た神様は…、何と言うか……いかにも怠そうだった。だって、神としての威厳g…。
「そこのお主、今妾が怠そうだと思っておったな?」
「いえいえ!!そんな事は無いですよ!!」
「…まぁいい、そんな事より、お主らは皐月という者を知っておるかの?妾の妹なのじゃが…。」
「皐月って、確か『民宿安芸』の…。」
「そうじゃ、そ奴が妾の妹じゃ!!いやぁ嬉しいのぉ〜、妾の妹を知っている者がおるとはのぉ。…よし、気に入った!!お主ら名前は何と申す?」
「はい、俺はクロエでこっちが妻のルゥです。」
「そうかそうか、クロエとルゥか…。よし、お主らの願いを頭の中で思い浮かべてみよ、その願いを妾が叶えて見せようぞ。」
そう霜月……神様が言った後、俺たちはそれぞれの願いを頭の中で思い浮かべた。
「ふふふ……。そうかそうか、よし!!お主らの願いはこれで叶ったも同然じゃ、これからも2人とも末永く幸せにな。」
?これで終わったのか?何かずいぶん怪しいんだが。…まぁ、相手は神様。多分叶ってはいると思う。ってゆうか叶っていて欲しい。
そんな事を思いながらも、俺たちは、社を後にした。
「ふふふ…、あの2人願いの形が違えど『何時までも幸せでありますように』とはのぅ、いやはや妾は吃驚したぞ。そんなお主らの願いもう叶っているのにのぅ。」
次の日俺たちは、稲荷神宮を後にした。向かう先はまだ不明だが、これから来るであろう幸せと、これからもずっと続くであろう幸せを感じながら生きていくであろう。それもこれも皆ルゥのおかげだな。
「ご主人様、なんでこっちをずっと見ているんですか?」
「いやいや、お前が選んでくれてありがとうと思っただけさ。」
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