雨の中の帰り道

「むぅ…遅い……」

 雨が降ったり止んだりしていて梅雨入りをしそうな5月の下旬、1人の高校の制服をきっちりと着こなしたアヌビスが駅前で誰かを待っていた。

「全く、昨日で懲りたと思ったんだが…」

 と、いい加減苛立ちを押さえきれなくなった所で横断歩道の向こう側から此方へと向かってくる1人の青年の姿が見えた。

「遅いじゃないか、敦也(あつや)!
 今日こそは時間通りに来ると思ったのに…一体何をやっていたのだ!」

「ワリィワリィ、今日もまた雨で憂鬱でな…。
 てか、まだ3分しか経ってないんだけど、時雨(しぐれ)?」

「何が『まだ3分しか』だ!『もう3分も』だぞ!
 全く…ホラ早く登校するぞ?」

「ホイホイっと…。
 っておい、ちょっと待てよ、時雨!」

 そう言って敦也と呼ばれた青年は、スタスタと先を急ぐ少女、時雨の後を早足で追いかけていった。

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 学校へ向かう途中今まで、無言だった敦也が痺れを切らしたかの様に突然ボヤいた。

「しかっし、今日も雨か〜…。
 全く、嫌になっちまうよ…」

「む、そうか?
 私は雨、好きだぞ?
 何だったら、今此処で体全身で受け止めたい位だ」

「そんな事したら風邪引くぞ〜?
 そうなったら俺、知らないからな?」

「冗談だ。
 でも、見舞いに位は来てくれないか…?」

 これは、何時もの2人の会話の流れ。
 敦也がボヤき、それに時雨が反応するというのが大体の流れだ。

「ま、そん時はそん時って事で。
 でも、まぁ流石にこう何時も降ってると流石の時雨でも鬱になったりしないのか?」

「ふむ、そうだな…。
 私は別に鬱になったりしないかな。雨、好きだから」

「毎回思うけど、お前って変わり者だよな…」

「それはどう言うこt…コラ、待て、敦也!」

「へっへ〜ん、待たないよ〜だ!」

 そうして2人は学校までの道のりを追いかけっこで登校した。

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 学校までの追いかけっこの結果、先に教室に入った敦也は自分の席に座ると、敦也の親友であり悪友でもある加賀里 響貴(かがり ひびき)が何時ものように声を掛けてきた。

「おい〜っす、敦也。
 今日は愛しの時雨ちゃんと一緒じゃ無いんだ?」

「うっせ、ニヤニヤしながら話しかけてくんな、キモイ。
 …逃げてきたんだよ、時雨から」

「フムフムそれはケンカと言うヤツかな、アツヤ君?」

 響貴はワザとクラスに響き渡る様に声をあげた。
 そうするとどうなるかは、一目瞭然。興味を持った男女から茶々を入れ始めた。

「何々、熊谷(くまがい)君また時雨ちゃんとケンカしたの?」

「全くだぜ、熊谷。
 その幸せを俺にも寄こせってんだ」

「アンタにはそんな幸せ一生寄って来ないって」

「「「アハハハハ!!」」」

「響貴、後で覚えとけよ…!」

「まぁまぁ、敦也、落ち付けって、な?」

「はぁはぁ…ようやく、追いついたぞ、敦也……」

「おぅ、お疲れ、時雨」

 そう言って敦也は、鞄の中に事前に入れて置いていた部活用のタオルを時雨に手渡した。

「ん、ありがと…」

「良いって良いって、どうせこのままじゃ部活なんて出来やしないし」

「うん…そうだな。
 あ、敦也の匂い……
hearts;」

「そりゃあ、俺の洋服棚に仕舞ってたタオルだからな」

「ヒュウヒュウ、あっついね〜、お2人さん!」

「るっさい、響貴」

 そうして、HRの始まる鐘が鳴り、敦也達は席に着いた。

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 何時も通りに授業が行われ、昼休みが来て、残りの授業とHRを終え、放課後を迎えた後、やはり雨の影響で部活が中止になったので、篤志は時雨と一緒にかなり早めに帰宅する事になって、今は下駄箱で靴を履き替えていた。

「あ〜あ、やっぱ中止になったか〜…」

「仕方が無いだろう、こんな雨だから」

「ったく、これだから雨は…」

「雨に文句言ったって晴れる訳じゃないぞ…って、あ」

「ん、どうした、時雨?」

「ああ、いや、傘の骨が数本程折れてしまってて…これじゃあ傘の意味が、な?」

「んん、どれどれ…ってあ〜見事に折れてんなぁ〜…。
 もしかして、登校の時か?」

 敦也が時雨の傘を見てみてると、やはり骨が何本か折れており、これではどうにも使えない状態だった。

「いや、多分ガサ
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