「ふぃ〜…寒い寒い。
こんな日にはさっさと家に帰るのが一番だな…っと」
季節は冬、もうそろそろクリスマスを迎える11月終わりの週、俺は学校から帰る為に何時も使っている帰り道を早足で帰っていた。
「よう、高崎(たかさき)の息子。
良い肉が入ったんだが、買ってくかい!」
「あんがと!
でも今日は寒いからさっさと帰るよ!」
「そうか、気をつけてな!」
「あいよ!
おっちゃんも気をつけてな!」
そうして俺は商店街を抜け、団地の坂の入り口に差し掛かった時だった。
「ん…あれは……?」
この世の中魔物娘は何処にでもいる存在だ。
そして、キャット属もその定義に当てはまるが、その魔物娘は何処か違った。
外見はモフモフの手足。これは獣人種には当たり前の事だ。
ただ、それ以外の何処かフワフワした服装に紫と黒の髪の毛。
この2つの特徴を持つ魔物娘を俺は知らなかった。
が、ゴミ捨て場に倒れ込んでいる所を見ると、俺は放ってはおけ無かった。
「よっと…って凄い軽いな」
…とりあえず、俺はこの娘を家に持って帰ることにした。
その娘が起きたのは、俺が自室でその娘に布団をかぶせてついでに鞄を机の上に置いたときだった。
「う、うぅん…あれ、ワタシ……ここ、は?」
「あ、ようやく起きた?」
「うん…オトコの人ともう少しで1つになれる所で起きた……」
ふむ、起きてそうそうイヤらしい発言をかましてくれたのは、魔物娘としては普通の事なのだろう…いや、俺は知らんが。
「あ、あはは…それよりも酷く汚れてるな…。
俺が飯作ってやるから、アンタはさっさと風呂に入って来てくれ」
「アンタじゃないよ」
「…へ?」
「アンタじゃなくてワタシにはシャムって名前があるの…」
「そっか…あ、俺稲司(とうじ)ヨロシク。
それじゃあシャム、風呂に入ってきなよ?」
だがその娘…じゃなかった。シャムは不思議なことを言い出した。
「フロ…って何?
オトコとオンナが1つになる所?」
「え…風呂って言ったらお風呂の事で…まぁ簡単に言えば温かい水で身体を流す所さ」
「ふぅん…水浴びをする所なんだ…。
じゃあトウジ、一緒に水浴びしよ?」
まだ若干寝ぼけてるって思いたいが、どうにもそんな様子じゃ無かったから俺はシャムを風呂場まで連れて行くと替えのシャツとバスタオルを置いてから話しかけようとすると、シャムは既に服を脱ぎ散らかして浴槽に飛び込まんとしていた。
「ふぅ…まぁ良いか」
そして俺はさっさと夕飯を作るべく、台所へと向かった。
「ねぇ、トウジトウジ〜、とりあえずカゴの中にあった服着たけど、これで良かったよねぇ〜?」
「ん?
ああ、大分ダボダボだろうけど我慢してn…ブヘェ!?」
確かに俺のTシャツは着ていた。
だが、ズボンは履いてなかった。まぁこれは、俺が渡してなかったから、悪いのは全面的に俺だ。
…で問題は、ズボンを履いていないのでは無く、Tシャツの方にあった。
「ちょ、おま、身体ぐらい拭いてから服着ろよ!!」
「え〜…だってぇ、トウジそんな事言ってなかったし?」
「いや俺言おうとはしたからな?
てか聞こうとしなかったのはシャムの方じゃないか」
結論から言うと、シャムが着ているシャツは透けているが幸いにも胸の先端は見えないし、股の部分も紫と黒のチェック柄の…いや、何も見えてないと言っておこう。
「ホラ、やっぱり言ってないじゃん。
…と言っても、ワタシが最後まで聞かなかったのも悪い訳だし……まぁ、ちょっとしたハプニングって事で♪」
「ハプニングて…どうでも良いからさっさと身体拭いてこい、俺はまた新しいシャツ出すから」
そう言って脱衣所まで無理矢理連れてくと、シャムを脱衣所に押し込み、俺は自分の部屋に新しくシャツを取りに行った。
「…早く、メシ作らないとな」
「で、トウジ。
この魔女ダレ?」
「ダレじゃねぇよ、この人は元々俺の家で雇った婆やだったけど、知り合いのバフォメットの力で魔女にしてもらったんだ」
「ふぅん…だからこの家って他の家よりもかなり大きかったんだ」
「今頃!?ねぇ、今頃!?」
「あらあら、2人とも仲が良いですねぇ。
私も何だか昔を思い出しちゃいますよ」
俺達は今、このだだっ広い武家屋敷のだだっ広い和室で小さい机の上に乗った食事を俺とシャム、婆やの3人で囲んでいる。
「さぁさぁ、せっかく稲司様が作ってくれた食事が冷めてしまいます。
さ、早く食べましょう?」
「そうですね、婆や。
それじゃあ、皆で」
「「「いただきます」」」
それから俺達3人は楽しくあれこれ会話しながら食事をしたのだった。
夕
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