ナイトメア編 「…じぃ〜っ『あの…、私なんかで良いの?』」

 ここは、とあるマンションの一室。そこには男性と女性が一緒に住んでいた。
 男性と女性が今は何をしているのかというと、仲睦まじく一緒に料理をしている所だった。男性が、そこのボールを、取ってくれないか。と言うと、
「…コクコク。『分かったよ、このボールを取ればいいんだね。』」
 と、女性は返事を返した。
 しかし、この女性にはおかしな点が幾つかある。
 1つは、格好である。何故か、全体的に紫の服を着て紫のローブを纏いながらも、白いエプロンを着ているのである。これはまぁ、不思議系の女性ならばこんな格好もあるかもしれない。2つ目は、あまり部屋には似つかわしくない鎌である。勿論、男性が普段愛用している訳では無い。どちらかと言えば、女性の方が使いそうである。最後に、女性自身である。何と、女性の下半身が馬の胴体と同じなのである。
 そう、もう皆さんも分かったとは思うが、この女性、ナイトメアと言うまもっ娘で名前を現穂 夢亜(うつつほ めあ)と言う。性格は、臆病で弱気、更に極端な恥ずかしがり屋で、人とあまり話す事が出来ないのである。
「…?『何、私の顔に何か付いてるかな?』…!!『…え、私の頑張っている所が可愛いから、見とれてた?……うぅ〜、恥ずかしいよ〜。』…
hearts;『えへへ…恥ずかしいけど、でも嬉しいな
hearts;』…じぃ〜っ。『話は変わるけど、夢の私と現実の私の姿や格好が凄く違って吃驚してたでしょ?』…ぺこり。『だからね、あの時はゴメンネって言おうと思っていたんだけど…。』」

 夢亜と男性が最初に出会ったのは、男性の夢の中である。最初は夢亜も他のナイトメア達と同じく強気で妖艶な美女として現れたが、何処で間違えたのか、男性に正体がバレてしまい、男性に寝たふりをされて、捕まってしまったのである。勿論夢亜はその場で動けなくなって、小さく震える事しか出来なかったが、その行動に罪悪感を覚えたのか、男性はすぐに解放してくれた。
「…?『どうして、私を解放してくれたのですか?また、私が貴方の夢の中に入って襲いますよ?』…!!『…え、また襲いに来てくれても俺は一向に構わない?だけど、また遠くからわざわざ俺の所まで来るのは大変だから、俺の家にずっと居ても良いんだぞ。ってダメですよ、そんなの!!』…ぷぅ。『確かに、私は貴方の事が気に入っていますよ!!…でも、私は夢の中でしか貴方を愛すことが出来ないんです。だから、また、夢の中で遭いましょう。』」
 そう夢亜が言って立ち去ろうとした時、急に男性に右腕を捕まれた。当然夢亜は、その場にへたり込んでしまって、更にどうにも足に力が入らなかった。
「…?『…え、これだけは覚えておいてくれ、ですか?』…コクコク。『…分かりました。覚えておきますので、どうぞ言ってみて下さい。』…かぁ〜っ。『…え、夢の中のお前も綺麗だったけど、やっぱり現実のお前の方が予想を遙かに超えて可愛かった、ですか?…そんな、私地味な方ですし、それに可愛い所なんて1つも…。』…私1つも可愛い所なんて無いですよ!?」
 それが、夢亜が男性に向けて発した初めての言葉だった。しかし、今までどうやって会話していたのだろうか?全くの謎である。
「…あぅ。『もう、私を可愛いとか一生側に居てくれ、なんて言うからますます出て行き辛くなったじゃ無いですか…。』…うぅ〜。『…もぅ、分かりましたよ。私は、貴方と一緒に此処に住みます。』…じぃ〜っ。『だけど、1つ約束して下さい。貴方は、夢であろうと現実であろうと私を愛し続けてくれる…と。それさえ約束して頂ければ私は…一生、こ、此処に…、居ます、から。』」
 自分の心の中で思っていたことを改めて思い返してみた夢亜だったが、最後の方には恥ずかしくなって、ずっと下を向いたままだった。

「…しゅん。『あの時、夢でしかキミを愛せないから何て言ってゴメンネ?あの時は、本当に私は夢でしかキミを愛することが出来ないと思ってた。』…んっ。『でもね、それは違ったんだよね。キミと一緒に過ごすにつれて、夢の中だと、分からなかった本当の温もりやキミ自身の事、そしてあのまま夢でしか愛さなかったら、今でもキミに触られると固まっちゃってたかもね。』…
hearts;『でもね、私分かったんだ。こうしてキミと一緒に居ることで、夢でも現実でも何時でもキミを愛せるという事。それは、どんな事よりも一番幸せなんだって事だから
hearts;』…私は、キミに出会えて本当に良かったと思っているよ?だからね、いつまでも、どんな時でも、私はキミを愛するって誓うからね
hearts;」
そう言った夢亜の顔には恥じらいが無く、1人の男性を愛する女性としてそこには、1人のナイトメアがいた。

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12/07/14 00:24更新 / @kiya
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