それは、次の町に向かう道中の事だった。
「良いんですか、ご主人様。こんな高級そうな服を私が貰っても。」
今、ルゥが着ている服は、白を基色とした青のラインが入っているワンピースに、これまた白を基色とした金の刺繍が入っているカーディガンを着ている。何と言うか、凄く可愛い。
「いやいや、いいんだよ。それよりも、服のサイズ合ってる?なるべくサイズの合う物選んだんだけど。」
「はい、ちょうどいいですよ。ただ、少し胸がきついですけど。」
確かに、胸の部分が少しきつそうだった。ついでによくよく見ると、2つ程桃色の点が見えた。あれは、もしかして……って何を考えているんだ、俺!!
「そうか、それは良かった。」
ルゥの服装が違うのには訳がある。1つは今後町に入るとき、あの革の鎧だと、とてつもなく目立ってしまうからだ。そもそも俺はそんなに目立ちたくない!!
2つめは、昨日の夜の事だ。朝方、馬車に向かう途中に川を見つけた。そこで精液でドロドロになったついでに、ルゥの鎧も洗った。しかし革ってのはなかなか乾かない物で俺の服はすぐに乾いたんだが、ルゥの鎧は乾かなくて…。
幸い近くに馬車があったから、すぐに服を取ってきて着せたんだが。
「ところでご主人様、次は何処に行くんですか?」
「ん?次の町か?次は次はっと、おっ次の町はエスパニア城だな。ここは、俺の故郷なんだ。」
エスパニア城は俺の故郷で西の方角にあるが、魔物領で近年は魔物と人間の夫婦が多く住んでいる町だ。そんでもって、ここの領主は感だけはいいが、とんでもなく天然なんだ。
「そうなんですか?じゃあ着いたらご主人様のご両親に挨拶をしないとですね。」
とまぁ、そんなのんびりとした会話を楽しんでいたら、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「お〜い!待ってくれよ〜!クロエ嬢!!」
俺は無言で馬車を速めた。だって俺は女じゃなくて男なんだよ!!
「お〜い!!マジで待てって!!謝るから!!」
俺は仕方なく馬車を止めた。もちろん、追いついた所でまた馬車を動かしたりしない。俺はSMの趣味はお持ちでないからな。
「おいおい、また俺の馬車に乗る気か。次から運賃払って貰うぞ、カイル。」
こいつの名前はカイル。俺と同じ放浪の商人だが、カイルは俺と違って秘薬や、ホルスタウロスのミルク、珍しい物で人魚の血なんて物を売ってる商人なんだ。ん?俺は何かって?決まってるだろう!!何でも取り扱ってるんだよ!!
「まぁまぁ、そう堅い事言うなって。俺ら、同じエスパニア男児だろ。」
ああ、言い忘れたそういえばコイツもエスパニア出身なんだっけか?
「それよりも、実は俺、結婚しました!」
そう言って、カイルは荷台の隅を指さした。そこには、ジパングの物であろう着物を着た、猫耳で二叉の尻尾を持つ魔物がいた。
「コイツは、俺の妻で名を睦月と言うんだ。」
「にゃ、ネコマタの睦月ですにゃ、よろしくですにゃ。」
俺が、ああよろしくと言うとカイルはいきなり話を俺に振ってきた。
「なぁなぁ、お前の側にいる可愛い女の子誰?もしかしてクロエ嬢の妻?」
「馬っ鹿!!違うよ!!こいつは、オークのルゥって言うんだ。」
「へぇ〜、ルゥちゃんって言うのか。俺はカイル、よろしくね!!」
ルゥがよろしくと言おうとした瞬間、ネコマタの睦月の目がギラリと光ったと思うと。
「にゃ!ウチという存在がありながら、浮気かにゃ!!そんな浮気者にはお仕置きだにゃー!!」
「痛てて、顔引っ掻くな睦月!!俺はお前が1番だー!!」
何、この漫才?止めて、マジ熱苦しいから。
そう思っていると、睦月のお仕置きから逃れたカイルがこう言った。
「なぁ、クロエ。そろそろエスパニアでは祭りの時期じゃないか?昔は良く仲間と連んで一緒に行ったよな。」
「ああ、そうだったな。あの頃が懐かしいよ。」
「そうだもんな、最後に祭りに行ったのって、確か7,8年前か?でも、7歳の頃はびっくりしたぜ、あの時はまだ女の子だったもんな〜。」
そこに、ルゥが割り込んできて、
「女の子ってどうゆう事ですか?」
そこに、カイルが待ってましたと言わんばかりに、
「あれは7歳の頃、祭りの最終日の時……グハァ!?」
「すまんな、カイル。ちょっとそこで寝てろ。」
とまぁ、何だかんだでエスパニア城へ着いた俺たちは砦をくぐって町へと入った。その時やっぱり『おかえりなさい、クロエお嬢様』と言われたのは気のせいと思いたい。
町の中心部へ来るとやっぱり、祭りの直前なのかいろいろな露店が並んでいた。すると、露店の1つから元気なおばちゃんの声が聞こえてきた。
「おかえり!クロエお嬢様!!今度はいつまでここにいるんだい?」
「ただいま!3日間ここにいるよ。それと、俺は女じゃなくて、男だからね。」
そうゆう会話が何度か続いた後、
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