私はフランツィスカ様の寝室に向けて走っていた。どうしようもない無力感を抱えて。
「・・・ミミルっ
#8252;」
また、私の手は届かなかった。彼女を救う事が出来なかった。
何と情けない事か。何と愚かな事か。
救える者を救う事すら出来ず、助けたい人を守れず、何が将軍、何が騎士だ
#8252;
泣きながら逃げ出したかった。こんな情けない気持ちから目を逸らしたかった。こんなところに無力な自分が居ても何も変わりはしない。そんな気持ちが頭を幾度もよぎった。
だが、ミミルが身を呈してまで私を先へ導いてくれたのだ。それを無駄にする訳にはいかない。
私は進まねばならない。ミミルの為にも。
必死に走った。今度は、手が届く様に祈りながら。
暫く走り、何とかフランツィスカ様の寝室にたどり着いた。
急ぎ扉を開け放ち中に入ると、ベットに横たわったフランツィスカ様が此方を驚いた様子で見つめていた。
「しょ、将軍・・・一体どうしたのです・・・」
「話は後です。フランツィスカ様。今治癒魔法をおかけしますから、お早く此方へ」
「な、何を」
直ぐに簡単な治癒魔法をかける。治癒魔法は、ご病気への応急処置だ。これで日がくれるまでは持つ。そうしたら急ぎフランツィスカ様の手を引き、廊下を走ってある場所へと向かう。
私の寝室だ。
彼処なら続く道は一本。それにいざという時の対策用に部屋に結界を張る為の魔法陣も設置してある。籠城には打って付けだ。
そこなら安全なはずだ。私が廊下に結界を張れば完璧な砦が出来上がる。
しっかりフランツィスカ様の手を握り締め、私は寝室へ向けて走った。離してなるものか。今度こそは、手を届かせて見せる。
後ろを見ると、フランツィスカ様は不安そうで、そして困惑していた。それもそうだろう。突然部屋に押しかけられ、訳も解らないまま手を引かれているのだ。戸惑うのも当たり前だろう。
「・・・今は何も聞かず、私の言う通りにしてください。お願いします」
訳を話したかったが、考えて止める。今のフランツィスカ様に今の惨状をお伝えすれば、さらに不安と、恐怖を煽る結果となる。それは彼女の為にならない。今は、知るべき時では無い。なら、口を噤むのが上策だ。
ここを脱出してからだ。全ては、それからだ。その前にまずはフランツィスカ様を、確実に助ける。
それだけだ。
まだメルセや、プリメーラ、サーシャもいる。ウィルマリナだって。
助けられなかったミミル。私を先へと進ませてくれたミミル。
彼女の為にも必ず残る者たちを助けなければ。
「大丈夫。必ず私が守り抜きます。必ず、ここから貴方を逃がして見せます」
私は、改めて胸に誓いを刻んだ。
その矢先だった。
「それは困るわね」
その声は、後ろから聞こえた。
この世の全てを魅了できるような美しい声。そしてこの魔力。
なるほど、もう一人の実力者誰かが解った。
後ろを振り向けば、それはいた。
雪の様に白い髪。
赤い目。
ねじくれた黒い角。
蠱惑的な衣装。
そして・・・この圧倒的なまでの魔力。
私の予想通りそこには、魔王の娘、リリムが悠々と立っていた。
「この国は、私が丸ごと救うのよ。あなたが連れているそのお姫様も例外では無いわ。無論、貴方もね。だから逃げられてしまうのは困るわね」
「私を救ってくれるとは。ありがたい申し出だが、お断りしようか。私にはやるべき事がまだ残されている」
「お姫様をここから逃がす事?」
「そう言う事だ。退いて頂こうか、魔王の娘よ」
魔王の娘リリム。その魅力と実力は正に魔物に置ける勇者とでも言うべき物。魅惑において、他の魔物と一線を引く実力を持つ。
「ーと言うのであっているかね?」
「ふふっ、まあ大体は。しかしそんな私をしかと見ても眉一つ動かさないなんて。恐るべき精神力ね」
「伊達に将軍をやってはいないのでな」
しかし・・・リリムの相手など久しぶりだ。
過去に三度程戦いに興じたが、そのどれもが正に激闘だった。そして・・・一度は敗北さえした。
気を抜いて勝てる相手では無い。なら・・・フランツィスカ様をせめて安全なところに。
すると、
「ジェネ公
#8252;こっちだよ
#8252;」
「
#8252;メルセか
#8265;」
探していた内の一人、メルセの声が聞こえた。見てはいないが、どうやら無事な様だ。
「お姫様はあたしに任せてそいつに集中しな
#8252;」
・・・仕方が無い。それが得策だろう。
「メルセ
#8252;任せるぞ
#8252;」
フランツィスカ様の背を、メルセがいる方に軽く押して、剣を構える。
「フランツィスカ様
#8252;メルセに着いてお逃げください
#8252;」
「・・・で、でも」
「私なら心配無用。必ずや勝利し貴方に追い付いて見せましょう」
「・・・わ、分かりましたわ」
そうし
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