「……『僕らはラージマウスの毛の先っぽにいるんだよね?お父さん』……あら?」
いつの間にやら、アリスちゃんとニカは夢の中だ。流石に『ゾッフィーの世界』はこの子達には難しかったか。持ってきたのはアリスちゃんだけどね。
宿周辺の森の中、私は場所を変えての読書会という事で、ドリアードの居る木の側で二人に本を読んでいた。最初はニカが持ってきた全年齢版『時計の針はそのままで』だけど、暫くして読み終わったからアリスちゃんが持ってきたその本を読んでいたのだ。渡したのはどうもルミルさんらしいけど、アリスちゃんの年齢(?)に合わせた物を渡さなかったのかしら。
この間なんか、国士無双、九蓮宝燈、四暗刻とか書いてある本を持ってきて……お願いですから、アリスにギャンブルのことを教えるのは止めてください。流石にその辺りは年齢(?)とか考えて下さい……。
おねぇさまがジョイレイン領に旅行(という名目で何かをし)に行っている間、デルフィニウムが臨時休暇となったので、他の店員さん達が思い思いの場所に向かう中、私はこうしてこの子達と時間を過ごしている。流石に……今となっては田舎に早々帰れない。
今だって、露出を抑えたサマードレスの裏にびっしりと魔力抑制の札を貼って、何とかニカが魔力に侵されるのを抑えているのに……万が一田舎で服を脱ごうものなら――デルフィニウム出張営業になっちゃうし。流石に実家をそれにするのは私も避けたい。だから何とかおねぇさまの協力を得て魔力の扱いに慣れようとしているのだけど……っ!この先は言わずとも分かるだろうから割愛するわ。
「……ふふっ」
私の太股を枕にして眠る二人。その顔は何処までも安らかで……こんな顔を浮かべられるようになったんだなぁ……ニカ。
時の経過と共に、彼女も少しずつ表情を取り戻していった。これも、表裏なく接してくれるアリスちゃんがいたからかもしれない。彼女の素直さ、純粋さはそれだけ、ニカの心には良かったのだ……と思う。
あまりにも寝顔が可愛いから、思わず頬をプニプニと指でつついていた。若さに満ちあふれた瑞々しい肌。稚くあどけない笑顔がどこかむず痒そうに歪む。でも嫌がってはいないようだ。それどころか指の方に頬を押しつけているようにも見える。
その様子があまりにも可愛くて、思わずプニプニを繰り返してしまうわけだけど……しかし、和むなぁ。
「一体どんな夢を見ているんだろうなぁ……」
森の木々と一緒にα波を放出する二人を眺めながら、私もドリアードの木にもたれ掛かって、一緒に昼寝をすることにしたのだった。
……勿論、耳や尻尾が出たら私を起こすようにお願いをして、ね。
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