Bird,Horse & Song

お決まりの一日がつまらない四コマなら、丸めて蹴ってゴミ箱へ。お決まりでなければ続きを描け。
退屈しない日常は、既に日常を越えている。当たり前だ。日常は言わばルーチン。ルーチンを満たせない日常は日常ではない。
その考えからしたら、今俺――アネス=スムルドの日常はまず間違いなく日常ではない。そもそも今まで日常があった覚えはない。
カホン使いは物好きじゃないとやってられん。寧ろカホンの名前すら一般人は知らない以上、路上パフォーマンスや音楽酒場への飛び込みをやらなければ生きていけねぇ。パトロンなんざ宛に出来ん。知名度のない演奏家なんざそんなもんだ。楽器も含めて、な。
で、そんな俺でも、今が日常を外れていることはよく分かる。理由?んなもん……。

――――――

『ロリポップ』

ロリポップを頂戴な
カボチャ被った子供が笑う
悪戯好きな子供達
棒付きキャンデー持てるかな?

顔より大きなロリポップ
みんなで分ける幸せがある
貴女も一つどうかしら?

今宵もまた来るかしら?
いつものように来るかしら?
夜更けより前に来るかしら?
明日も準備が必要かしら?
ぐるぐる渦巻くロリポップ
狙うお菓子はロリポップ
すぐに無くなるロリポップ

赤くて白い渦巻きに
甘酸っぱさを織り込んだ
それを舐めた子供達が
胸がきゅんとなるんだって

舌よりも赤いまん丸ほっぺ
綻ぶときには
幸せの粉が降り注いで

君は今日もまた来るかしら?
笑みを浮かべて来るかしら?
路地のこの店に来るかしら?
明日も準備が必要かしら?
ぐるぐる渦巻くロリポップ
狙うお菓子はロリポップ
すぐに無くなるロリポップ

幸せの粉が降り注ぐ
眠りに付いた子供達
夜も楽しき異世界の子ら
朝日が昇って踊り出す
グラスの中には砂糖水
妬む心が何処にもない
素敵な時代の子供達

今宵もまた来るかしら?
いつものように来るかしら?
夜更けより前に来るかしら?
明日も準備が必要かしら?
ぐるぐる渦巻くロリポップ
狙うお菓子はロリポップ
すぐに無くなるロリポップ

―――――――

「わは〜♪」
「あはは〜♪」
「あんこ〜る〜♪」
……この通り、今の相手はフェアリーの一団だ。どうやら偶々妖精の国からこちらに来てしまったらしい一団だが、帰るためにテンションを上げなきゃならんらしく、偶々目に付いた俺たちがそのテンション上げる役目を負うわけになった。
まぁ……その甲斐あってこの通りテンションが鰻登りになったわけで、既に妖精達が俺達を輪の外に手を繋いで回ってやがる。所謂『フェアリーサークル』だが、実物を見るのは初めてだ。……巻き込まれてないよな?大丈夫だよな?輪の外だし。
「ありがと〜あねさ〜ん♪」
「「ありがと〜らべるさ〜ん♪」」
回りながら、徐々に地面に浮かぶ転移の魔法陣。風の噂ではどこぞの宿では、妖精の国に住む人間の協力を得てこれの固定化に成功したらしいがそれはさておき……ちゃんと名前は呼んでくれよ。あねさんって、俺は男だぞ?ラーヴェルの奴も苦笑してやがるし……。
「おう、じゃあなっ!」
「じゃあね〜」
相手の妖精達に手を振る俺達。小さなお客さんだ。お帰りの際は優しく見守るさ。それがパフォーマーとしての務めだ。
地面に描かれた魔法陣、それが一際強く光を放つ。その光が俺達二人の目を強く焼いた瞬間、割と沢山いた色とりどりの妖精達は、魔法陣跡という証拠を残しつつ一人残らず消えた。
残されたのは、俺達二人。演奏後の疲労感が心地良い。
「……ふぅ。あの子達みたいな歌い方は、中々慣れないわねぇ」
「ラーヴェル……お前元アイドルじゃなかったのか?」
両手にあたる先端の鈎爪を重ね合わせ、んーと伸びをするラーヴェルに、カホンを仕舞いつつ俺は律儀につっこんだ。無論アイドルでも声色というものがある以上、差はどこかしらで出てくる事は知っている。彼女の場合、それが軽めなポップスに合わないだけだ。
彼女は失礼ね、と言いつつ、声の調子を確かめている。あのようなアイドル調は相当声に負荷が掛かるらしい。まぁ……歌声を直すために猛特訓したらしいからな……ラーヴェル。その苦労のお陰で、他のセイレーンより深い声が出るようになったらしいが、その代わり高く薄い声は出し辛いという。世の中上手くいかんもんだな。
……そもそもあんな歌詞を書くラーヴェルに問題があると言ってはいけない。音自体は俺がつけたからな。妖精にはあの手の歌詞や音響が効果的だ……が、どこか歌詞に悪意が感じられるのは気のせいか。
「そう言えば、これは私が生まれる前の話だけどね」
「ん?」
「'バフォネット'って言う遠距離会話用の道具があったらしいのよ」
「ほう」
「そこに書かれていた事に、'中学生以下の子供に手を出した罰'として'Agnusの刑'と言うものがあったらしくて……ね」
「歌詞
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