『"たこ焼きつぼまじん"にてたこ焼きを食す』

魔生長ければ感動は薄れるとか適当なことをほざく方々は尽きないけれど、そんなことはないわよ。どんな年であっても心は若いままでいたい、それが乙女心ってもので。
で、何でそんな回りくどいことを言っているかというと……ベルフラウ様からの手紙で、前に行った"豊泉"の店主が息子から数年ぶりに手紙を受けた、と知ったからだ。
『その時は店を開いておらず、ウチも別の店に行っておったからの。まさか和菓子屋の倅とは知らなんだ。で、まぐわった侭の二人の元を訪れて話を聞いてみたら……という流れじゃな』
「……ベルフラウ様マジパねぇ」
流石のバイタリティ。とはいえ、これであのおばちゃんは息子さんの無事を知ることが出来たわけね……ちょっと涙ぐんだわ。今頃返信用の手紙を記している頃でしょう。また行ってみようかしら……。
なんてジパング行きの算段を立てていると……突如掌の上に浮かび上がる封筒。その色は赤。よし、そういう時期か!
毎年恒例あの時期が来ちゃったのね!そう私は目を爛々と輝かせる、のと同時に持つ武器を脳内で見繕う。今回は――相手の動きを数時間止める魔法銃の拳銃型二つ!

「行くぞ皆の者、戦じゃあっ!てね!」

言うが早いか、私は窓からガラスをぶち破……らず開いて飛び出た。世界ではなくて視界が逆に回転するけど気にしない。
魔力で門を開いて、拳銃二つを取り出すと、そのまま地面に向けて構えて、回転を止めると――!

「――だらっしゃああああああっ!」

――落下位置周辺にいる魔界甲殻虫を一気に薙払い、貫いた!一部勢い良すぎて体液がぽたぽたじゅくじゅくと地面を汚すけど、まず間違いなく魔力浸食は気にしなくていいので問題なし。揮発からの淫気酔いは耐性のない魔物がなるものよ!
そのまま尻尾から飛ばされる魔力液の軌道を見切りながら、私は至近距離で二丁拳銃を放っていく。その様はハンスからは「ほとんど大道芸よねぇ♪」と尻尾ぽふぽふ言われるほどに常人には理解と真似は不可能な有様となっている。『カジトゥーム銃撃術』なる魔法銃を用いた近接格闘術だ。
……使っておいて、そもそも習得しておいてなんだけど、正直遠距離向けの魔導兵器を使っての至近距離格闘なんて何故開発したと思う。思わざるを得ない。まぁこうして……。

「Show Time!」

……雑魚散らしには役立っているけどねっ!正しい使い方は適地に単身乗り込んで敵対勢力を根刮ぎ魔物化させるのなんだけど。その辺りは魔刀使いさんにやってもらいましょう!
既に私が来たことで趨勢は決したようなもの!他の魔女はアジコほか数名のリーダー魔女が指示を出してまとめている。主戦場はここだ……。

「――アンタらに食わせる野菜はねぇっ!」

虐殺もいいところのリズムで、私は魔界甲殻虫が去るまでの間、ダンスと言うには少々乱暴なそれを、相手を全てハードラックに踊らすまで続けたのだった……。

―――――

「これ、佃煮に出来ますかねぇ!?」
戦いの後、協力してくれた魔女達に特別給を渡している私の前に、きらきらと目を輝かせて一人の魔女が近付いてきた……最近入った娘かしら。
言葉と共に向けられた視線の先は明らかに退治済の魔界甲殻虫に向かっている。まさかこの下手物を食さんとする娘が私以外にいるとは思わなんだ。つか佃煮?って事はジパング?
「……体の中にある若干甘ったるい魔力を抜きさえすれば試せるんじゃないかしら。お名前は?」
「リサ=カブラギです!ステーションシティからサバト研修生として入信してきました!」
見事にジパング姓だ。本当に、時折あの島の住民の食文化は耳と目を疑うわ……まぁ向こう側からしたら私達のそれに、私と同じ反応を示すんでしょうけど。
で、ステーションシティか。そう言えばあの町、まだ未開拓だったわね。あのコシの利いた饂飩の為に山道を歩いて、帰りも寄ったのはステーションシティの近くの街だったはずだし。あの話を聞いてから「鶏肉の甲羅煮」を作って食べたわ。炭酸がいい具合に肉をほぐしてくれるから美味しいの何の。糖分もとれるし。おかずには最適ね。
興奮が醒めないのか、そのままテンションを保ったままリサちゃんはまくし立てるように私に話し続ける。私はそれを耳にしつつ、まだ配っていない娘に特別給を渡していく。
「あぁ農家の生ける知恵としてもっと佃煮を広げるべきだと私は思うのですよだって虫を畑に仇なす敵として対峙して退治するだけじゃなくてこれからの栄養として美味しく頂けるのなら最高じゃないですかあぁあの砂糖醤油で煮込んでなおカリカリした虫の脚の食感に淡白な蛋白質の風味なんてもう筆舌に尽くしがたくてあぁもう涎が止まらないんですよだから色々な虫で佃煮を作ってみたくてサバトで情報を調べてみたら料理好きのリリムの元で畑作修行なんてあ
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