第四回 「耳かきサバト」

 突然だが、皆さんは耳掃除・耳かきはされるだろうか?自分でやる人、子供であれば親に、大人であれば配偶者や恋人にやってもらう人もいよう。私も、コレクトラに耳かきされると、えもいわれぬ多幸感に包まれ、また彼女を膝に載せ、その小さな穴を弄くることは快感ですらある。

 話が逸れたが、耳かきを専門的に行うサバトが存在する。創始者は、「音波の魔山羊」アスールムールだ。

概要:アスールムールは、かつて魔王軍に所属し、「音による精神支配」と「振動・共鳴による破壊」を専門とするバフォメットであった。それ故、サバトにはセイレーンやマーメイド属、楽器に纏わる魔物が多く在籍する。彼女は、ある種の洗脳音波によって人間の快楽中枢が刺激されることを突き止めた。また、振動による破壊の力を弱めると、体をほぐし、また局所において快感をもたらすことを発見した。以来、彼女のサバトはそれを探究する集団に変貌した。その一貫として、彼女らは人間界において「耳かき屋」という業態を取る。表の顔は、「軽いマッサージと膝枕、耳かき」の提供である。だが裏の顔は、「施術中に特定周波数を交えた会話による被験者の観察のための実験場」である。熟練の魔女や魔物は、受付時のやり取りから相手への最適な"音"を用意できるとか。

魔女コレクトラ(以下コレ)「本日はご協力いただきありがとうございます」

魔女エーコ「こちらこそありがとうございます」

レソナンテ兄さん(以下レソ)「お招きいただき光栄です」

コレ「早速ですが、お二人は耳かき屋で出会われたとか?」

エーコ「ええ。兄さんは、初めてお会いした時は、疲労困憊で今にも倒れそうなお姿でした」意地の悪い笑みを浮かべ。

レソ「エーコ、やめてくれたまえ。恥ずかしいじゃないか」彼の声の響きは、同性の私にも心地よい耳触りであった。

エーコ「兄さん、本当のことでしょう?私がいなければ、今頃過労で倒れていたのは想像に難くないわ」

コレ「あの、それでは、お二人は最近どういった研究をなされているのでしょうか?」軌道修正を図る機転は流石、我が妻(いもうと)。これほどの才女は中々お目にかかれまい。

レソ「ボクは主に、声による賦活効果について考し研究してるんだ」彼の声は、独特の揺らぎを纏っていた。

エーコ「私は、振動による快感について。丁度本日、成果物の魔道具を持ってきています」小刻みに震える筒状の器具を取り出す。

コレ「なる程。ちなみに、具体的にどういうものなんですか?」

レソ「そうだね。理論ばかり話していても仕方ないし…今回はASMRっていうやつをやってみようかい?」

エーコ「でしたら、私は効果を実証するため、実際に使い方をレクチャーしましょうか」

コレ「あの、お二人とも…」二人に近寄られ、絶望する彼女の表情はまた別の美しさを湛えていた。

追記:ASMRとは、よく"アスールムール"の意味だと誤解されるが、彼女は"Azulmull"である。(Auditorily Secured Mental Reaction=聴覚的に安心させられた精神反応の略)

追記2:もちろん、実際には二人の悪のりを制した。(ちょっと勿体なくも感じるが)
25/06/12 22:24更新 / ズオテン

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