セックスしないと出られない宝物庫

「いいか、落ち着いて聞いてくれ」朦朧とする意識の中、師匠が身体を揺さぶった。(どうしたんだろう?僕らは、確か秘宝「ガンド・アフ・ヂリュ・ヂュシュンド(三千倍の杖)」を求めてきたはずだけど…)

「そこまで、覚えているなら上出来だな。現場百遍とは言うが、やはり実践に代える教育なしだ」師匠の言葉によって、徐々に頭にかかったモヤが晴れてきた。(それにしても、耳になんか違和感が…)

「弟子、いるか?また会費の催促が来たぞ」化粧っ気がなく、ボサボサの髪を後ろ結びに纏めた三十路の女性がいた。師匠はずけずけとノックもせずに部屋に入ってきた。「また、会費払い忘れたんですか?」「ああそうだ。というかだな、研究に資金を使い込んで、今文無しなんだ」彼女は何でもない風に言ったが、いやいや一大事だ。

「そうだ。だから、今回は宝を掘りに行くぞ」「また、いきなりだなあ。何かアテはあるんですか?」「ある…去年、邪神像を手に入れたダンジョン行ったろ?」…邪神…ああ、あのマインドフレイアだらけの…」

「その、イカ野郎だらけの場所に、まだ手付かずの部屋があったろ?あそこに、『ガンド・アフ・ヂリュ・ヂュシュンド』…『三千倍の杖』があると、冒険者ギルドに依頼書が貼ってあった」「師匠、またマジックアイテムをちょろまかしに行ってましたね?」

「違うぞ。私と連中の報奨交渉が決裂したから、その分補填してもらいに行ったんだ」「どっちにしろ、契約書でやり取りしないのなら、犯罪ですよ…」「兎に角だ。三千倍の杖を先に手に入れて、ギルドか好事家か値段交渉すればいい。簡単だろ?」「まったく…準備しますから、一旦出てて行ってくださいよ…」「頼りになるのは君だけだ」頬にキスされた。その目が、赤紫に輝いたような気がした。

(それで、入ったはいいものの、魔物に追いたてられ、こんな部屋に逃げて来た)「連中のドレインにやられて、意識混濁していたようだな」暢気にとんでもないことを言いながら、師匠はのたうつ指…?を耳から抜き取った。「興味深いな。君が吸われた記憶を思い出す過程で、その時々の感情や想念、更に知覚した五感情報がそれぞれ違った味わいを生み…」

(ン…?指…耳の違和感に、味わい…!?)「大丈夫か?ちょっと横になっていたらどうだ?…夢もなかなか旨いしな…「なんか、不穏なこと言われた!?」「だから、落ち着いて聞けと先ほども言ったろう?」
師匠は、いつもより、低くく幾重にも重なる様な声色で喋った。

改めて、師匠を見直した。顔はいつもと変わらない、不健康なクマ、ボサボサの髪、だが色は…。「師匠、なんか顔色悪くないですか?」「そりゃ、こんな魔法をかけられたら、なあ?」それに、髪、いつもより毛先に動きが…というか、動いてる!?

「君、鈍感だな…いや違うか、現状を認識しないようにする防衛機制の一種だな」そう言いながら、師匠は近づいてきた。上半身は微動だにせず、脚、いや触手を器用に使い、ぬるりと近寄った。「大丈夫だ…私は別に危害を加えたいわけじゃあない」

「じゃあ何を…うっ」師匠は、断りもなく舌を入れてきた。尤も、この人は僕に承諾を得るという過程をよく省くが「ン…じゅるじゅる
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#65039;」(((今のも、聞こえてる…いや、感じ取れるぞ。全く私をなんだと思っている)))どうやら、僕の考えは筒抜けのようだ…

全く息ができない。師匠の髪だと思っていた触手が、鼻も耳も犯しているからだ。(((要はだな。去年、命からがら逃げられたと思っていたのが…その実、イカ人間の術中に嵌まっていたようだ。そして、杖の噂も連中が流したらしい)))

(((嫌に、詳しいですね…)))何故だか知らないが、僕は師匠の声が直接頭に響き、また僕の考えも伝えられるようだ。(((今我々がしているように、連中の念波が頭に伝わって教えられた。君を引っ張って来たのも奴らの差し金でもある)))つまり、僕らは罠に嵌められた…

「うぶぶぶぶ」「じゅるじゅるじゅる
#9829;
#65039;」師匠は、僕の五感と記憶を彼女で塗り替えていった。触手が、奥へ奥へ、達するごとに、あらゆる感覚が師匠といる時の情報だけになる。友人の顔も、昨日食べた物も、明日の予定も、今日何をしているのかも、全てが彼女に関連したもの以外が漂白された。

「ごきげんよう…その色は紫」意味のない言葉、叫びですらない無機質な鳴き声、師匠の舌に蹂躙される口からはそんなものしか出てこなかった。(((ところで、この場所は連中の言うところの「劇場」だそうだ…)))(((「劇場」…)))

(((イカどもは、人間の雄の生態に興味があるらしく、その「営み」を研究半分、余興半分で見たいらしくてな。今日の主演は君で、私は当て馬さ)))なんと悪趣味な話もあったものだ。ふと、生気の
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