港湾工業地帯パトロール(ドント・カウント・ユア・ラクーンズ・スキンズ))

ビルの案内図には、「1st floor」から「6th floor」までの階層表示がある。「フージン・コウギョウCo.ltd」は、確かにこの雑居ビルのテナントに入っている。「あれえ、ありませんねえ…」だが、「4th floor」へはエレベーターは止まらなかった。さらに言えば、階段は3階と5階が直通して、あたかも間に階層がないようであった。それにもかかわらず、外観を見れば全6階になるように、確かに窓があった。

「まじゅつてきいんとく、それもこうがくてきでなく、くうかんわいきょく?いかいかですかね…」原理はわからんが、とにかく4階には正攻法で入れないようだ。「ほんぶちょうか、アンナさんをよびましょうか?おふたりであれば、こういったあんけんにつよい…」「おんやあ…誰か思ったら、ビストピア警察のオチビやない?まあた、ウチの店子にイチャモン着けに来よったんか?」

お前は咄嗟に懐のテーザーに手を触れようとしたが、声の主は既に眼前に居た。「あてにオモチャ向ける気ぃか?ジブンとこのエラいはんのクビ、2コ3コ飛ぶだけじゃアカンよ…」タヌキだった。手に持つはたきは、お前の喉に突き付けられていた。「マダム・エイプリル!?」

「こ、こちらはまだしんじんさんで、マダムのことしらなくて…ごめんなさい」タヌキは、鋭い目つきを幾分かやわらげると、はたきを下ろした。「ジャニちゃんなあ…新人はちゃあんとシツケてくれな、あても最近更年期言うんか?それで気ぃ短うてな…ま、兄ちゃんも悪かったっちゅうコトで、今日のとこは堪忍してなあ」

「まあ、迷惑ついでやさかい…ウチで茶でも出しますわ。飲んでき」マダムは有無を言わさなかった。お前とジャニスは、あのビルへと戻ることとなった。


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タヌキの大家は、お前たちをペントハウスへと招いた。そこは、ビルの無機質さと打って変わって、ジパング風の木造建てとなっていた。「おハキモノは脱いでそのままでええよ」

マダムは、ジパング特有のミスティ・ポット(磁器の急須)に青々とした茶葉を抽出した。「コッチのヒトらって、あんましグリーンティーは好かんかも知らんが…ま、ソチャです」「いただきます…」「ほんで、別にあんたらの詮索する気とちゃうけど、4階行かはりたかったちゃうんか?」

「はい…どうやったらはいれますか?」「まあ、入り方は知っとるけど、ロハ(フリー)で教えるってのはゴウバラやね。別にケーサツさんが嫌い言うんやないけれど、ギブアンドテイクって言うやんか?」業突く張りとは、このタヌキを形容するためにあるのだろう。しかし、公権力を向こうに張ってこうまで言ってのけるからには、おそらくこの魔物は裏社会においてかなりの力を持つと見た。

「うええ…ジャニスたちはこうむいんですから、おかねのやりとりできませんよお…」「安心しい、あても子犬の駄賃なんぞハナから期待しとらんわ。せやろ、兄ちゃん?」お前は、財布を取り出し素寒貧のジェスチャーでおどけてみた。「現ナマが一番信用できるワナ…でも、ウチはクレジットや『仮想通貨』もアリやで?」

お前の左腕に、「10万ゴールド」の文字が浮かんだ。(やっぱり、あての見立て通りやな…ステイツとフェデレーツ両方からのおたずねもんかいな。突き出せば、まあ二束三文にゃなるやろが…)「わふ?」ジャニスに聞こえぬように、骨振動で念話が届いた。(あんたの両腕両脚をこき使って、どんくらい儲けになるやろなあ)「ほお、ニンゲンは値打ちあるワ。よっしゃ、これもツケや」マダムは、その尻尾をポンと振った。

「わふっ!?」「うう…」「お姉ちゃん…」部屋には、それまで存在しなかった、2体の魔物が現れた。「組抜けるとか、オモロない冗談言うとったからシオヅケにしとったけど、ケーサツがよしなにしてくれそうやし、処分も手間やから早う持ってとくれや…あては、これからちょっと、あいつらのオヤに文句付けてくるさかいに」

タヌキは、「キセル・パイプ」を一吸いすると、椅子から立ち上がった。そのうなじは、茶色ががった黒い長髪が振り乱れ、見事なタトゥーを演出した。「…オオムラのサキちゃんかい?あんたんとこのシタッパ…カタついたわ。かわいい小指、着払いでええな?」マダムが手に持って弄っていた葉が、切り取られた小指に変じた。


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