「ほうほう…カカラーケンとな?俄には信じがたいが…
彼奴らにしては、手際が良すぎるの」フェンガーマイスターは、奇妙なアクセントとやたら大声で、大通りに音を響かせた。
彼が、歩く度、装甲車の周りには、ネズミが集まる。雑貨屋やホッドドッグの屋台、ビルの左官職人等も、齧歯目の大耳と黒目がちな目を油断なく向けた。
「ポリツァイが言うことなんぞ、全ては政府、その後ろで牛耳るデァ・フォーアデンカーの口八丁…フェアンゼーアーでも言っておったぞい…」「お爺様、またお薬を飲み忘れてますね」隣で彼を支える火鼠、「ブラントレーガリン」は老人を労った。
「…このおじいちゃん、ほんとにダイジョブ?」「うんあ…オーパは…膝枕が最高なんだあ…」ドーマウスは、半目だけ開けて良くわからないフォローを行った。「キミもダイジョブじゃなさそだよぉ…」
「ポリツァイな時点で最悪じゃが…嘘つき…それも、人間とはのお…全く世も末じゃて」老人は、手持ち無沙汰に長笛をいじりつつ、救貧院の守衛に会釈した。警備員達は、それまでの気だるげな態度を一転させ、揉み手をしつつ深々と頭を下げた。
「うぇぇ…臭い」ジュビリーは、反射的に鼻を隠した。だが、鋭敏なコボルドの嗅覚は、この施設に染み付く、カビ、汗とアンモニア、その他化学物質の混じる大気を感じ取ってしまう。お前は、ふらふらとした彼女を背中におぶった。
「マイスター!」「きょっ…今日の支払い、待ってくだせえ…」「ゴホッゴホッ…おらぁ、ビョーキで…あのおクスリを…」マイスターが歩く度、浮浪者や薬物中毒者らしき、人間の男達が、すがりつき懇願していく。五体投地の態度を取るものまでいた。だが、全員火鼠に炙られ、ドーマウスに眠らされ、ラージマウスの群れが「片付け」を行う。
「ワシの庇護を受けて、まだそこまで恩知らずとは…人間どもが、シャイセ…」フェンガーマイスターは、ぶつくさと言いながら、無慈悲に「アガリ」を徴収していく。「1ドル」ずつ、平等に、硬貨でだ。
ラージマウス達は、見返りにカチカチになったライ麦パンと薄くなり重湯じみたオートミールを配給していく。手癖の悪い者達は、付け合わせね一欠片のチーズを拝借していく。「でずーりょー、デボジッドってごどねぇ」ジュビリーが鼻を抑えながらコメントした。
さて、オフィスまで来ると、救貧院に似つかわしくない、豪奢な部屋であった。「それで、ワシのお気に入り(ケツモチ)の店をあんな風にしくさって、おぬしらをどうしてくれようかの?」
「おじいぢゃん…わるぎながっだのぉ」ジュビリーが、媚を売った。「わだじだぢは、デビルバグにおぞわれだ…」「御託は良いんじゃ…つまり、真犯人というか…肩代わりといった方が正しいかの。もっと罪の重い奴を差し出して、ウチでエアザッツ(オトシマエ)させるなら、今回の件…」老人が葉巻を切ると、すぐさま火鼠が火を点けた。
「本部長に意見を言うくらいで許してやってもよいが…」好好爺な笑みと、隠す気のない怒気が、場を支配した。
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『でぇ、そこを曲がって30ヤードくらい進んでぇ』ジュビリーからの通信を頼りに、不快な湿り気と汚臭の充満する下水を進んだ。『ぴったり…地上から見もったげてるからぁ、安心して!』
お前は、コボルドの言葉をあまり信用せずに地下を歩き、時折蛍光塗料でマーキングを行う。目印と、脱出手段の確保のためだ。「転移術」、儀式魔法と簡易刻印、短距離の移動、それがお前のチカラだ。
『まてまてぇ?なんかぁ、すごい熱源反応ぉ?』お前は、魔道具を装着した。視界には、周囲と10K以上の寒暖差で、半ば白飛びする物体がある。間違いない、デビルバグの関係だ。
お前は、直ぐ様現場を確認した。何体かの魔力反応、会話を行っているようだ。「…キビキビはたらけー、大将のゴチソウは怠け者には与えられないぞー」リーダーらしき魔物は、デビルバグとシルエットが異なる。
『マジヤバぁ…そいつベルゼブブじゃん』ベルゼブブ…ハエの魔物である。一匹いれば、周囲の食べ物は根こそぎ奪われ、男を手込めにする凶悪な存在だ。しかも、デビルバグを手下にしている。コンビネーションとしては、最悪に近い。
「…出てこーい?そこに、ニンゲンおるなー?」気取られた、お前は咄嗟に物陰に隠れた。「…お前たちー、追加の報酬が期待できそうだー…やれ」デビルバグは、既に高速で這い回り、捜索を行う。
お前は、地上のジュビリーに判断を扇いだ。『うーん…臭いからやだけどぉ…しゃーないかぁ』耳障りな破砕音がして、ドリルが目立つ装甲車が現れた。「…仲間がいたかー」ベルゼブブは、面倒くさいとばかりに飛行を始めた。「…まあいいやー。ここにはないとわかったし」
「人間サマ、乗っでぇ!」ガスマスク姿
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