新人歓迎会(ブリーフィング)

お前は小会議室の扉を開け、中に入れば垂れ幕に書かれた、「Human aka Semen plant,Welcome to Limbo!」の下品な文字が出迎えた。獣人が3人待ち受けていた。「ヒュ〜!人間サマだぁ!」「ブップー!」パーティーホーンとクラッカーを得物に、二足歩行の子供じみた犬が2体駆け寄ってくる。

「クンクン、独身だなぁ!?コボルドのジュビリー、よろしく!」「おてて、おっきぃですね!ジャニスを、なでて、なでて!」お前は、入隊して良かったと思った。毛並みの手触りが大変良かった。「…アミーゴ、ビエンビビエンド」茶髪と銀髪の毛皮を生やした、ダメージジーンズにシャツだけを着て、ポンチョを羽織った細身のワーウルフが、長い小銃を杖に壁に背をもたれ会釈した。

「よお、ビッチども、昨日ぶりだな」「スージー、こんばんわぁ」「スーザンさん、ごきげんよお!」「…だれがビッチだ、ページャ・プータ…」「ああ?チワワでも連れてきたか?キャンキャン吠えてるのが聞こえてるぜ」「ふ…目だけじゃなくて、耳まで悪くなったか、エストゥーピダ
?」スーザンは、腰の特殊警棒を抜き、狼女は、小さな部屋に不釣り合いなカービン銃を取り出した。小柄な犬獣人は、片や決闘をセルフィーの背景に、もう片方は医療具を取り出していた。止めもしないのか。

「スーザン並びにアンナ=マリア両警部、私もビッチ(雌犬)のパーティーに参加してもよいか?」アヌビスが、一触即発のヘルハウンドとワーウルフの間に入り込んだ。「…」「…」両者の片目は互いを睨み、残った方は上司を視た。「…キュウウウウ」アヌビスは、牙を剥き出しにして、耳障りな高音を響かせた。二名は、平身低頭して、腹を見せた。スーザンの褐色の割れ切った腹筋、アンナの細く引き締まった腹は、お前にとっては眼福だった。

「主役は新人だということを忘れるなよ。わかったなら、返事をしろ」「くぅ〜ん」「きゅう…」ラヴェンナは、二人が完全に武器を仕舞うのを確認し、お前に向き直った。「よろしい…さて、主役と言えばだ。貴官は、甘味は好みかね?」スパニエルとテリアの二体が、クローシュに蓋された大皿を運んできた。「私は、大好物でな」アヌビスは、硬い表情を幾分綻ばせた。

「いっばい、たべて大きくなりな!」「おくちにあうといいですけど」毛むくじゃらのコボルドと、巻き毛のクーシーが蓋を開ける。すると、中から出てきたのは、見覚えのある歪な形のケーキ…「知っての通り、ビストピアは大河ジョバーナの中洲にあるわけだが、丁度このガレットのようにな」

「なるほぉど…新人、遠慮せず、好きなとこ取れよ?」スーザンは、スイッチナイフを取り出し、器用に切り分けていく。新人研修で見せられた、街の区画をなぞる様に。

「人間サマはどこ食べる?ちなみに、ジュビリーは、ダウンタウンでピザ食べるのが好きなんだ!」「へいへい、お待ちどおっと」「ありがと、スージー」「このチビスケ、こんなこと言っちゃいるが、そもそもゲームやりながら、ピザデリバリーして、ほとんどパトロールなんざしてねえぞ」「うっさい、スージー」

「じゃあ、わたしは、ウェストバロウズのところをおねがいします!」ジャニスは、埋め立て地を模した、チョコレートの部位を取っていく。「こうはいさんは、どこがいいですか?このちくは、かがくとこうぎょうのプラントがいっぱいです!こんど、あんないします」

「たく、ギークな連中はすぐに、まくし立てやがるな」「スージーさんは、こうはいさんとどこいきたいですか?」「そりゃ、ミスティタウンだろよ…まず、飯が美味いし、ホネのあるやつだらけで飽きねえからよ」「脳筋だって、ベラベラ喋ってんじゃんよ」「うるせえやい」ヘルハウンドは、赤い飴細工で作られた、霧の大陸の建築物を皿に取った。

「…」「無言で取るなや、口で言え、口て」スーザンは、アンナ=マリアを牽制した。「チッ…パルケ・グランデ・ア・ラ・ベーガ…」「ノースグリーン公園って、何度も言ってんだろが?」あまり、食欲の湧かない蛍光グリーンのクリーム部分を盛り付ける。「グリンゴのコトバは好かん…特に、お前の喋ってるようなのはな」「すまねえな…お前の訛りがキツすぎて、『ケーキはいらない』っつったか?」「…マルディシオン!」

「…スーザン」「チッ、ラヴェンナが甘やかすから、こいついつまでも態度改めねえんだぞ?」「お前の言い分も一理あるな。同僚との円滑なコミュニケーションを取れない者は、実力を十分に発揮できるとは言えんぞ」「ロ・スィエント、セニョーラ…スーザン、すまなかった」「へっ、謝るくらいな、変な意地張んじゃねえやい…まっ、ケーキ切っちまったし、食えよ」

「さて、残ったのは、セントラル・マーケット地区だな」オーソドックスな、円形のガレットが残った。中心
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