死すら二人を分かつまじ

「徴募兵の召集がかかっちまった…行かせてくれよ」戦争とは数だ。精鋭の正規軍で手こずる、隣国の大軍には、魔術師も傭兵もすべてつぎ込む。ましてや、魔法剣士として、人々を守る自分が行かねばなるまい。だが、それは…

「せめて、この子の顔を見る迄じゃダメだか…?」彼の妻、シャーマンのイグレーンは、子供の分だけ重くなった腹を擦りながら涙を浮かべた。「もちろん、君とこの子が一番大切だ」剣士は、角ばった鎧の刺々しさを感じさせぬよう、柔らかく妻子を抱いた。

「だけどよ、オイラ以外にもな?家族を守るために行ってんだよ。その人らを早く帰してやんのが、オイラが剣に誓ったこった…だから」「…」「勝手なことばった言ってるな…だけど、この子が戦火の中に産まれないようにしてやりてえし、君が矢や刃に曝されないよにしてんだよ」

イグレーンの細腕は、夫を掴み損ねた。腹の子を庇って。気づいたら、彼は戦場に行っていた。実際に、子が産まれる直前には隣国の撤退で終戦を迎えた。多くの息子、恋人、夫、父親の死と引き換えに…彼女と、赤子のアルバスJr.は、ついぞ剣士と話すことは叶わなかった。

「ぼくも、しゃーまんになりたい!だって、むかしのひとにあえるんでしょ?」幼子が、老婆の手を引いて振り回した。「拝み屋っちゅう、仕事はよ…生きてる人のためにあんだ。わかるか?死んじまって、別れ言えなくなっちまった相手によ、踏ん切りつけたい人が…いっぱいいんだ」イグレーンは、60年間毎月、戦死者の共同墓地を訪ねる。

シャーマンとして、先の戦争から今月までに述べ3000世帯以上、13000人前後の依頼を受けた。その度に、手向ける花が増えていった。夫を失った戦は、皮肉にも巨万の富を彼女と息子に還元した。(まったく釣り合わねよ…)

アルバスJr.は、その財産の一部を元手に遺族基金を設立した。戦傷者、後遺症、退役軍人年金等、幅広く手がけて、イグレーンの孫世代には国で一番の篤志家として、何人も活躍した。だが、墓参りを行うのは、彼女とひ孫のアルバス4世だけだった。(みーんな、あの人に似ちまった。家族ほっぽって、なーにが世のため人のためだい?)

「ばぁばぁば、元気ないの?」「ごめんねえ、ひーばあちゃん、つまんなそうな顔してただか?アル坊がお出かけしてくれて、嬉しいよお」彼女は、ひ孫に心配をかけまいとしたが、顔を見るたびに、朧気な夫の面影にやり場のない哀しみを覚えた。

他人のための降霊を生業にしてきたが、思えば自分は何の別れもできていないではないか。「ねえ、そういえば、このおはかはだれのなの?」「えっ…そうさな」(わしもつきあわせといて、この子に教えとらんかったのか…)

イグレーンは、思えば過去を、息子の父を、孫達の祖父を、目の前の幼子の曾祖父を語ることを避けてきた。自分も、アルバスから現実逃避して、仕事に、社会奉仕に逃げていた。泣くことを、嘆くことを、悼むことを、人に弱さを見せることを避けていたのかもしれない。「アルバスと…同じ名前だねえ」「…ほんとだ!おじいちゃんとも、お父さんともおんなじだねえ!」

(あの人から一番逃げていたのは…あたしか)彼女は、墓に手を合わせて、決心した。(墓石の下にゃ、アルバスさんはおらん。息子達の顔を見る、約束はたしてもらおか)

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「おっかあ、何だ、行きなり呼び出してよ?」「いつも、おめえが一番遅いんだよバカ息子!」「まあまあ、おばあちゃん、落ち着いてくださいな…」「おめえらも、おめえらだかんな!こんな、しょぼくれた婆さんに、小さい子おしつけてよ?見ない、こんな遊び盛りの子が辛気臭え墓参りに付いてこさせられてんだ!」

イグレーンは、一族を全員呼び出した。彼女の下には、アルバス四世のクレヨンによって、巨大な魔法陣が刻まれていた。「婆ちゃん、今日は何すんの?」孫娘の一人が、質問した。「おれはな、アルバスさん、つまりおめえらのオヤジ、ジジイ、ひいじいさんに当たるよ、おれの旦那に会いたくてよ。もう、自分の気持ちに嘘つけねってなっちまったんだ」

「ひいおじいちゃんが、いたの?」「そうだよお。アル坊とおんなじ名前でなあ、悪い奴をバッタバッタ薙ぎ倒す強くて、いっちゃんかっこええヒトだったかんな?会ってみたいだろ?」「うん!あいたい、あいたい!」「そうけ、そうけ!」刻印の忠心で、曾祖母とひ孫が小躍りした。

「だけど、おっかあ、そんなことしたら、俺らお縄だべ?」「うっせえやい!おれらのカネ、おれのコネ、こんなときのためにあるんだい!止めたきゃ、勝手にしろい!」「…おっかあ、本気だな」壮年のアルバスJr.は、背中から、魔力漲る青白いクレイモアを抜きさった。

「ひっさびさだな…アル坊、離れてろい。ケガしてもしらねぞ…」「ばぁば
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