一章.あいさつ
私が最初にアマゾネスを知ったのは、両親に子供の躾に「山奥の森深い場所から人さらいに来る集団」について聞かされ、怖がらせられた時だ。
次に、大学を出て、徴兵に行くことになった時、行軍の都合上アマゾネス出没地帯を通ることになった。教官や上官も「交戦したが歯が立たず、何人か拐かされた」話を聞かせた。実際に、運悪く遭遇し、あえなく捕まってしまった。
村に連れてこられ、「未婚か既婚か」を尋問され、既婚者は街道まで解放され、私含めた独身者は「宴」に饗される。
例文(共通悪魔語の直訳):お前は強い牡か?それとも、種馬か?故郷で慎ましく店屋でもやってれば良かったものを。
例文(アマゾネス方言意訳):こんにちは。ご職業は何をされていますか?戦士職ですか、それとも商店などを経営されているのですか?
解説:彼女らは、基本的に職業軍人と徴兵された一般人を区別しようとします。前者は、まず心身ともに屈伏させるため、後者は、なるべくケガを負わせないようにしたいからだと言われています。共通語では、直訳すると古めかしく聞こえる表現を、なるべく分かりやすく表現しました。
この時私はある史実に気づきました。一般的にサキュバスは共通語「性交・セックス」を、しばしば悪魔語「仲良し・協同作業」のような表現を行う。しかし、大学で専攻した語彙には、アマゾネス達の交わす聞き慣れない言葉がありました。
戦士の一人であり、私の妻、一家の大黒柱であるところのマリーゴールドは、あまりに心ここにあらずの私を見て心配になったようです。彼女は、一先ず一族に伝わる媚薬性の香油を体に塗り、私を押し倒したものの、全く抵抗がなくて拍子抜けしたと後に語っています。
行為中、マリーゴールドは独自の言葉で囁いてきたが、意味はともかく低く湿った響きが大変美しかった。
例文(共通語・直訳)「どんな愚鈍な獲物も、我らが腕に抱かれては、仲良しにならざるを得ない。狩人に見つかったことを後悔するがいい」
アマゾネスとしては、獲物を「その気」にさせることも戦士としての腕の見せ所であるため、気がつくと私は彼女の大きくしなやかな肉体にもみくちゃにされていた。彼女は、目が合うと、「やっと振り向いた」とニヤリと笑っていた。何とも魅力的で、エロチックでした。
例文(アマゾネス・意訳)「やっと、私を見てくれた」
解説:この時の彼女の言葉はアマゾネス方言では、正確には「戦士に捕まったことに気づいたか」と表現している。しばしば、アマゾネスという種族名を「戦士」と換喩することを好む。
二章.新婚生活
マリーは基本的に、拙いが共通語で話してくれていた。私は、アマゾネス語について、幾つか質問した。彼女らは、基本的に自らを「戦士」と称するのだ。氏族ごとに、「川の戦士」「サバンナの戦士」のように呼び掛けるが、アマゾネスという種族については一貫して「戦士」あるいは、「アレスの娘達」と呼ぶようであった。
その後、彼女の家に住まわされ、狩りに出ている日中は掃除や洗濯を任された。さて、洗濯していると、長く村に馴染んでいる者達と話す機会がある。所謂、井戸端会議である。そこで頻出するのが、「インクーボ」「旅人」と呼ばれることである。このうち、「インクーボ」は共通語における「インキュバス」に相当するが、問題は「旅人」の方である。
マリーが帰ってきて質問すると、彼女にも由来は判然としないのだった。彼女は、「質問するよりも、その身と子種を捧げろ」と言うのが口癖であった。今は、都市に住んでいるが、時折どうしようもなく求めて来る時があり、やはり「口より体を動かせ」と幾分か流暢に囁くのだ。
例文(共通語・直訳):「惰弱な男(直訳:捕まった人間)は、常に戦士に答えを求める。だが、我々はそれに応じる口を持たない」
例文(アマゾネス・意訳):「旦那は黙って、下の口の協同作業に勤しんで欲しい」
コラム:ハネムーンは、アマゾネス方言で「秋仕舞い」?
彼女らは、木枯らしが吹き始めると、「秋仕舞い
」という行事を、数日間催す。雪が降り始める前に、木の実や山菜、動物の狩りを行い。半分を宴会に使い、もう半分を保存食にする。直訳すると、「秋に別れを告げる」で、謂わば「冬支度」とも言い換えられます。
秋仕舞い最後には、やはり全員が見ている前で、各々伴侶を犯し始めるのです。ここからが特異的で、その後雪解けまでは、村を出ることなく、また基本的に家で閉じ籠るようになる。この時、インキュバスにして夫が飢え死にする可能性を失くし、また、狩りに出られないこともあり、昼夜問わず交わることになります。
サキュバスは、蜂蜜酒を飲んで乱痴気することから「ハネムーン(蜜月)」と表現した(共通語にも取り入れられたが)が、アマゾネスでは「秋仕舞い」と表現します。
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