月は、王魔界を除けば、最大規模の魔物支配域である。この星は、太陽と同じく、大地(ガイア)の周辺を周回しているが、物理的かつ魔法的エネルギーの塊であるそれに比べて、より概念的存在と言える。
月に関しての蘊蓄はこれくらいにして、そんな現世と異界の混じる天体には、9つの都市と4つの地域を持つ。その内、三日月の地域には、シロクトー・サバトの有する都市が存在する。
厳密には、中心の殿堂以外は、後からワーラビットやミューカストード等が住み着いて発展したのだが、この都市は魔道の聖地である。月の女神が一人、ヘカテーの恩寵に満ちているのだ。
上空から見れば一目瞭然だが、この都市は、半球の魔力壁の中に、魔法陣のような町並みが整備されている。内部では、地上のような環境が再現されている。
さて、私とコレクトラが月に取材に来たのは、この「魔道サバト」ともう一つ「カーニバルサバト」の取材のためだが、観光にも繰り出してみたのだ。月には、見るべき物が多い。
概要:サバトの殿堂は、簡素な造りである。シロクトーの方針により、彼女らは基本的に智と魔の求道者であり、おそらく本来的な魔術師の在り方を保存する数少ない集団である。実は、サバトの「少女の背徳性」は、旧魔王時代において、今と在り方が違ったのである。バフォメットは、山羊の怪物であるが、信者に少女が多かったことに変わりがない。しかし、その意味するところは「魔法を使用するのに、なるべく若い肉体の方が都合が良い」という実利が関係していたのだ。また、「幼い女の子が高度な魔術を使うこと、それそのものが主神教団への挑戦と諧謔」であった。シロクトーは、そういう昔気質の魔女だと、対面して感じた。コレクトラは、偉人との顔合わせに平静を装いつつ、影では「もう一生この手は洗いません…」と歓喜していた。何と、かわいらしい魔女だ。とにかく、このサバトは八大サバトで最もストイックかつ実証主義的である。同じく、「魔術研究特化サバト」の我らルーニャルーニャ・サバトとの差は、そこにある。「理論構築と知識集積、ロマン」たる我々に比して、彼女らは「実証と実験、効率」をモットーとする。
コレクトラ(以下、コレ):それではインタビューを開始致します。
プリムローズ(以下、プリム):ふぉふぉふぉ…なんでも聞くが良いぞよ。
サンジェルマンじいさん(以下、サン):時を逆さまに生きる、我らの神秘を今開示しようかね?
コレ:いやあ、お二方にお会いできるなんて…生きててよかったです!
プリム:まだ100に満たぬ嬢ちゃんにしては、よくよく学んどるの。
サン:魔道は影にあり、世はこともなしさ。我らが月歩を行くなら、世間も日進しているということよな。
プリム:儂らも、まだまだケツが青いとな。ふぉふぉふぉ…
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