この場には6人いる。最初に気づいたのは、他ならぬ〈電脳栗鼠〉であった。
彼女の鋭敏な聴覚は、本来、そこに誰かが近づけばコンマ1秒の遅れもなく、発見しできるはずであった。(何らかの魔術的隠匿か…)女はそう結論づけた。
思うが早いか、彼女はすぐさま、タイピングに移った。「…お願いだ、マサキ…どうか気付いてくれ!」嫌な予感がする。そして数分もしないうちに、それは確信へと変わる。
◆◆◆◆◆
向かい合った両者、ビジネスマンと傭兵は互いの名刺を確認した。ナカリガワ商事総務部部長シンテル・ニシキ。(なるほど、これはまた「内々に処理」ってハナシか…)
「それでは改めて、ヨロシクオネガイイタシマス」「コチラコソヨロシクオネガイイタシマス」二人は再度お辞儀した。「単刀直入に言えば、わが社の社員、もっと言えば私自身が、何者かに監視または追跡されているのだ。」ニシキは苦々しげに話した。
「それはそれは、また穏やかじゃない話ですね。」マサキは月並みな答えを返した。「では、こちらも前置きをせず報酬について聞いてもよろしいですか?」
護衛は、不躾だとでも言いたげに、口を開こうとした。ニシキが手で制した。
「100万、それも旧紙幣では如何かね?」口は笑みを作ろうとしていたが、目は笑っていない。しかし、交渉は基本的に〈電脳栗鼠〉の役目だ。「わかりました、ではあとは〈電脳栗鼠〉の意見も…」「その君のお仲間だが、先ほどから無言で、ドローンに障害でも起きているんじゃないかね」
言われて振り返ったその時、青年は気づいた。ドローンのライトが明滅していた。どうしたのだろう、本当に故障か?しかし、そのライトの明かり方には見覚えがある。(ウ……エ……タ…ダ、ウエダ…?)恐る恐る、首を動かす…
何もいない。「オイッ、こんな時にふざけてないで…「ウワーッ!」エッ?」護衛の一人が、倒れている。その上には、馬乗りに跨るナニカ、いや何者かがいた。「ナンダ?!いつの間にッ?」ビジネスマンは怯えた。すぐさまもう一人の護衛が、懐から武器を取りだす!それは、非殺傷用の拳銃、M57タケサキである。仲間に当たるのも気にせず、数発のゴム弾が発射された!
『マサキ!これでは、値段交渉どころじゃない!今すぐ、依頼人とともに逃げたまえ!』いつもよりノイズの強い音声が、浮遊物から発せられた。「オイオイ!お前の地獄耳で先にわからなかったのかよッ!?」『それはッ、とにかく急げ!』
発砲音が続いた後、叫び声がこだました!マサキは、これ以上質問しないことにして、腰を抜かしたニシキに向き直った。「とりあえず、アナタを安全なところまでお連れ致します!」傭兵は、手を貸し、方で男を助け起こした。(とりあえず、あの扉だ!)青年は、ドローンにライトで先導させ、夢中で走った
とにかく、部屋の出口へと二人三脚の状態でたどり着いた。このまま逃げるだけだ。(…イヤに静かじゃないか?)銃声は鳴り止んでいた。振り返ると、襲撃者はいなくなっていた…護衛の二人はすでに気絶しているようであった。(どこ行きやがった…いや、考えてる場合じゃない)とにかく逃げなくては…
謎の襲撃者を警戒して彼らは移動を開始した。それを追跡する、謎めいた影、そのナニカは嗤っていた。「ンフフ…
#128154;」
◆◆◆◆◆
「「ハアーッ!ハアーッ!」」息も絶え絶えの男二人が、非常階段を下りていた。『シャキッとしたまえ!それでもタフな傭兵会?』ドローンは小言を言いながら、下の階を照らしていた。
「ハアッ!しかし、ケンネイさんだったか?これでほんとに逃げられるのかね!?」依頼主は、恐怖と疲労から弱気なことを聞かずにはおれなかった。「心配せずとも、相棒の耳なら絶対風の音を聞きつけられます!」傭兵は、安心させるため、あとは相棒の名誉のために、自信ありげな表情で答えた。
「しかしだねエ、君?先ほどその相棒は、襲撃者が来るのを聞き逃していたよ。本当に信用に足るのかね?」ニシキは恐怖を苛立ちに変えて、反論した。ムッとしてしまったが、確かにその通りだと、マサキも考えた。「あんまり悪く言いたくないけどよ、どうして今日は奴がいることがわからなかったんだ?」彼は、思わず質問した。
『……』ドローンは沈黙で返した。「まあ言いたくねえってなら、無理強いは『信じてくれるかい?』…?何をだよ?」青年は質問の意図を図りかねた。
『……』また沈黙が場を支配した。依頼主は、ここで留まることにいら立ち始めていた。「もういいから早く行こうぜ」マサキも急かした。
『ワカッタ!ワカッタ!答えるピーピョロピョロ!ピー!「「『?!』」」
その場に似つかわしくない音が響き渡った。
全員が会話を中断して、急いで下階に走った!だが、おお主神よ!彼らよりも上からの足音、そ
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