前編

「ここ…でいいんだよな…。」

 ネットから印刷した地図を頼りに雪の降る山道を車で走ること約2時間半、ついに目的地に着いてしまった。
 それは雑木林の中にたたずむ真新しい温泉旅館。このような辺鄙な立地に対して施設は妙に巨大。そのことが異様であると言えば異様だが、時代遅れの再開発リゾートだと言われればまぁ納得はできる。

 だがしかし、実際ここは「普通の」温泉旅館ではない。

 入口の自動ドアをくぐり、館内へと進むと浴衣姿の女性が出迎えた。人間離れした整った顔立ちに豊満な肉体、金色に輝く長髪、そして…その髪と同じ色をした狐耳と尻尾。
 
 稲荷である。しかも尾が5本もある。

「いらっしゃませ、お客様。当館のご利用は初めてでいらっしゃいますか?」
「は…はい。」

 美人を前に緊張し、思わず声が上ずってしまう。
 しかし彼女はそんなこちらの様子を余裕のある優しい微笑で受け止め、流麗な動作で深くお辞儀をした。自然と浴衣の合わせ目から深い胸の谷間が覗く。
 恐らくわざと見える様に服の構造が出来ているのだろう。思わず視線が吸い寄せられそうになるが、慌てて視線を戻し首肯した。

「当館がどのような施設かはご存じでしょうか?」
「…はい、一応。」
「それはそれは。この度は当館をお選びいただきまして誠にありがとうございます。それでは館内規定の方をご説明させていただきますのでこちらへどうぞ。」

 稲荷は顔に喜色を浮かべる。そして入り口から左へ少し入った個所に設けられたスペース、目の前にテーブルが備え付けられたソファを勧めてきた。柔らかなそれに腰掛けるとすかさず彼女は隣に座る。腕に触れる柔らかな感触と鼻を掠める甘い香りに背筋が震えた。
 そんなこちらの動揺など意に介さず、彼女は1枚の紙をテーブルに置く。

「まず一つ、お客様は当館のあらゆる施設、およびあらゆるサービスを無料でご利用いただけます。ただし、他のお客様がお泊りになられているお部屋に関しましてはこの限りではございませんので、ご注意ください。」

 無言で頷く。

「二つ。当館内において、お客様は魔物娘からの性的行為に対し一切の拒否権を有しないものとします。」
「……。」
「三つ。お客様は、お客様のお名前、ご住所等の個人情報について、魔物娘への提供を拒否する権利を有するものとします。」
「…。」
「…以上、このことについてご了承いただけましたら、こちらに署名をお願いいたします。」

 簡単に説明を終えた稲荷が、テーブルの上に置かれた紙の右下部にある署名欄を指した。

 
 …いろいろとぼかした表現で説明を受けたが、要はそういう施設である。
 平たく言えば魔物の為の精補給施設兼、婚活宿であった。しかも比較的人間男性側に不利なルールが敷かれているタイプだ。しかしその分、施設は豪華でサービスもいい。それと獣人型、特に狐の魔物が多く来る事で有名でもあった。
 両親や会社の上司にそろそろ身を固めろと急かされ、その中で紹介されたのがここだったのだ。もっとルールがマイルドな施設やマッチングサービスは数多くあるのだが、『受け身なお前はむしろこういうところに行った方がいいのだ!』というのは会社の上司の弁である。…ちなみに上司は既婚のサキュバスである。

 一通り紙面を眺め、稲荷の女将が述べた以外の事が書かれていないのを確認すると、テーブルに備え付けられたペンでサインをした。

「ありがとうございます♪それではこちらがお客様のお部屋の札になります。ごゆっくりおくつろぎくださいませ♪」
「ど、どうも…。」

 札には503号室と記載がある。つまり5階。エレベーターを利用しようと席を立ち…

「い゛…!?」
 
 …足を踏み出そうとしたところで股間に衝撃が走った。見れば稲荷の右手に尻を掴まれている。次いで背後から腕が回され引き寄せられた。

「な、何を…」
「うふふ、先ほど申し上げたではありませんか。『館内の魔物娘』と。当館の従業員は全て魔物娘ですの。当然、わたくしも♪…ということで、油断されたお客様にはここで一度精を漏らしていただきましょうか♪」

 耳元で熱くささやかれる声に背筋が痺れる。
 背中には先ほど目を奪われた豊乳が押し当てられ、尻たぶを割るように差し込まれた手はその中指と薬指で会陰を指圧してくる。
 そして、その指先に熱が生まれたと思うとそれは陰茎の根元へと浸透し、やがてじわりとした鈍い快楽へと変わった。

 それは膨らみ、やがて股間全体を覆うように広がって…弾ける。

「あ…」

 下着に濡れた感触が拡がる。
 射精させられたのだと気づくまでに数秒を要した。それも直接性器に触れずである。

 10秒ほどその状態で未経験の快感を味わわされたのち、抱き寄せる腕が解かれ解放された。
 力の抜けた膝が
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