「あー…、まことに残念にゃがらキミの冒険はここで終わってしまったにゃ…。」
自らを案内役と称していた猫耳を生やした美女が気まずそうにそう宣った。魔女の格好をした店主の方を向くも、何とも形容しがたい表情を浮かべ目を逸らされてしまう。
「どういうことなの……」
訳の分からぬこの展開。
しかしここは右も左も分からぬ異世界の店、二人に勧められて購入したパックから出てきた一枚のカードを手に、茫然と立ち尽くすしこなかった。
………、
…。
何の前触れもなく異世界に引き込まれ、右往左往していたところこの猫耳に出会ったのが半日前。チェシャ猫と名乗る彼女に案内されるがまま、この魔女の店に来たのだ。
案内の間、この世界の事や元の世界に帰る方法等についても話を聞いた。なんでもこの国の女王の下までたどり着けば元の場所、元の時間に帰して貰えるらしい。
が、しかし、大変に困難な道だというので、先ずは準備を整えるべくこの魔女の店に案内してもらったのだが…。
勧められるがままカードが入ったパックを購入し、それを開けると一人の女の子が描かれたトランプのようなカードが出てきた。
そして二人の表情が変わったのはこのときだった。慌てて二人何やら話し合ったのち、出てきた言葉がコレである。
いったい自分が何をしたというのだ…。
「まーこの際白状するとにゃ、あたしらはキミを騙してたにゃ…。」
「騙してたって……女王の所まで辿り着けば元の世界に帰れるって言ってたのは…」
「それはホントにゃ。ついでに言うと、一人でゴールまで行くのは難しいからここで準備を〜ってのも一応本当だにゃ。」
「じゃあ騙してたというのは…?」
「準備の内容よ。この店で魔物にまつわる商品を買って貰って、それを触媒に対応する娘と契約してもらうつもりだったのだけれど…」
猫耳に代わり店主の魔女が答えた。
「………。」
改めて手元に視線を落とす。
自分が彼女らに勧められて購入したのはカードの入ったパック。封入枚数、何とかセレクション等様々な種類がある中で、一枚しか入っていないかわりにレアなものが出やすいというシリーズを選んだ。
そしてそこから出てきたのは…
「まさか『それ』を引き当ててしまうとはにゃー…」
一枚のトランプカード。絵柄はハートのA。
真ん中には桃色の髪をした少女の絵が描かれている。
「……♪」
「うわ、動いた!?」
突然、描かれた少女がウインクを飛ばしてきた。
「そのカードに描かれた娘がキミと契約して、ナビゲーター兼パートナーとして冒険を助けてくれるという流れ…になる筈だったにゃ。」
「何か問題が……もしかしてこの子弱いの?」
「うんにゃ。めちゃくちゃ強いにゃよ?ぶっちゃけそいつだけで最後まで余裕で進めるにゃ。」
「だったら…」
「対価さえ支払えればね…。右下を見てみて?」
魔女の言葉にもう一度カードに視線を落とすと、右下に小さな文字で何か書いてあるのに気付いた。
「コスト……?」
見たことの無い文字だが何故か意味は分かる。そしてその横に並ぶ数字も…
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん…………130万!?こんなお金持ってないよ!!」
「その数字は金額じゃないわ。要求精量よ。」
「ゑ……」
ここに来るまでに 魔物と魔力と精の関係は話を聞いた。魔物がその力を振るうには魔力が必要であり、体内で魔力を生み出すにはその…人間の持つ精が必要なのだそうだ。
「ちなみに人によるけど概ね射精一回で1〜10ポイントね。」
「この子と契約するためにはこれだけの精力が必要だと…」
「いえ、契約自体はタダ。分かりづらいかもしれないけれど、その娘を使役する権利を得る為に必要な精といったところかしら。彼女たちの使役者〈マスター〉として認められる為の儀式というか…」
「加えて、契約しているだけでも毎日その下の数字分は要求されるにゃ。」
下の数字…よく見たら先程の130万の下にカッコ書きで更に小さく印字してある。一応桁は4つ程小さい、しかしそれが毎日…
「し、支払えなかったら…?」
「立場が逆転して精奴隷だにゃ。」
思わず白目を剥いた。
「他のエースならまだ何とかなったかもしれないのに、よりにもよってハートエースの魔術師タイプ。しかも淫魔術でエースの位をとった個体とはね。」
「運が無いにゃ。いや、逆にあり過ぎたのかにゃ?」
「あの…これ返品する訳には……」
恐る恐るそう言った途端、カードに描かれた少女が焦った表情で投げキスを何度も飛ばしてきた。カード表面にハート型のエフェクトが連続して散る。
更に彼女は胸元のボタンを幾つか開け、腕で胸を寄せ上げ谷間を見せつけてくる。魅惑のふくらみが柔らかそうにその形を変えた。
(お、大
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