ドールズ・システム

「其処の君、人形
lt;ドール
gt;に興味は無いかね?」
「…はい?」

 道を歩いていたところ、すれ違った男に突然呼び止められた。
 古びたコートに古びた帽子、その色は共に黒く。更にその影から鋭い眼光と髭面覗く……。

 正直なところ、とてつもなく胡散くさい。関わってはいけない雰囲気が満ち満ちていた。

「人形
lt;ドール
gt;はいいぞ。」
「あの…ちょっとこれから用事があるので私はこれで……」
「待てや!」
「何だこのおっさん!?」

 がしりと肩を掴まれる。無駄に力が強い。

「いや暇だろう。私の工房がすぐそこにあるのだ。まぁ見るだけでもしていきたまえ。」

 実のところ用事など無い。今日は非番だ。この場から離れる為の方便だったが何故か見破られたようだ。
 本当になんなんだこのオジサンは…。


 ………。

 そして連れられ歩くこと数分。古びた木造の店に案内された。
 案内されるがまま扉をくぐると…

「お帰りなさいませマスター。…あら、お客様ですか?ようこそいらっしゃいました♪」

 小柄な少女に出迎えられた。背丈は腰程までしかないが人形のように整った顔立ちに金色の髪と青い瞳、白を基調としたドレスから伸びる足には球体間接……

 …。

「…人形だコレ!」
「はい♪リビングドールのエリーゼと申します♪」

 あっさりと魔物であることを認めた生ける人形の少女は優雅な動作でお辞儀をしてみせた。


 
 魔物がこの世界へと襲来してもう10年余り経つ。
 結果、魔物に完全支配された地域や、いまだ彼女らを排斥し続けている地域、そして彼女らとの共存を選んだ地域等々…場所によってその顛末は分かれたが、この町はおおむね良好な関係を築けているように思う。だが、そんな地域に住んでいながらリビングドールを見るのは初めてだった。

 どうやらこの怪しい男の言うドールというのはこういうことだったらしい。店内には彼女のような人形がそこかしこに立ち並び、様々な部品が収まった棚が陳列されていた。

「どうだ。すばらしいだろう!家事に、商売のお供に、護身用に!主人を愛し主人に尽くす、まさに生涯のパートナー!更に、パーツを換装する事で見た目も機能も思うがままだ!さぁ君も君だけの人形
lt;ドール
gt;を創り上げようではないか!………さて、さっそく作ってみようか。」
「ゑ…見るだけって話じゃ……」
「大丈夫ですわ。わたくし達がしっかりサポートいたしますので♪」

 二人の圧に圧され、強引にドールの作製工程へと誘導されてしまう。

「ドールの取り扱いは初めてだな?…なに、私の言うとおりにやれば簡単だ。まずは素体を選ぶ。基本は木製だが、魔界より取り寄せた魔界の森の木材を使用しているので耐久性、魔力伝導性は抜群!戦闘用等で特に能力を高めたければ搾精植物や流体金属を素材としたものもある。更にこだわるなら素体から自分で組み上げる事も可能だが、どうするね?」
「普通でいいです…。」
「そうか。まぁ1体目だし無難なものにしておくのもいいだろう。ではそこ枠内から好きな体格のものを選びたまえ。」

 指示された場所には大小さまざまな木製の人形が積み上げられていた。膝上程度しかないものから自分の身長を越えるようなものまで…ざっと全体を見わたし、その中からエリーゼと名乗ったドールと同じくらいのものを選んだ。

「決まったな。ならば次は眼球だ。基本モデルでは単なる光学センサーだが、目的によって色々と追加機能を持たせることも出来る。温度、ガス、放射線等々…何を視覚的に観測させたいかによるが…あぁ、勿論ビームも出るぞ。」
「いや、普通ので……」
「…ならばそこの一番左の瓶から二つ選んで取り付けるのだ。特に同じものを選ぶ必要は無いぞ。」

 やりたければオッドアイのようにすることも可能だということだろうか…。だが特にそういった趣味も無いので、直感的に綺麗だと感じたもの…明るいブルーに輝くそれをとった。吸収した室内光が内部で乱反射する様はまるで宝石のような美しさだ。
 素体の顔に設けられた二つの窪みにそれらを嵌め込む。ガチリと鈍い音が響き、瞳が固定された。

「よし。では次は胸部パーツを取り付ける。大中小とあるがこれは好みで決めてもいい。体格との均衡を重視するも良し、敢えてアンバランスな美を追求するも良しだ。ただ大魔術を連射させたい場合には第二魔力炉を搭載したモデルが…」
「あの、普通の……」
「ならばその箱の中だ。」

 示された大きめの木箱の中は3つに区切られ、それぞれ大中小のサイズの人工乳房が詰まっていた。…のだが小は薄いはんぺんのようなサイズ、逆に大は大玉スイカの如き大きさとあまりにも極端すぎる。
 結局、中の枠の中からグレープフルーツ大のものを選んだ。だがこれでも素
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