「何があった…!?」
しばらく街中をゆっくりと飛び回り、ガスを散布しつつ人が隠れていそうな箇所に向けて砲撃を加えていたのだが急にエリスが浮力を失い着陸するハメになった。
「あれ…おかしいですね?エネルギーが…」
「そんなはずは…………なんだと!?」
エリスの状態を表示するパネルを空中に呼び出し、それを見て驚愕する。
「マスタ―…どうですか?」
「……魔力が、底を尽きかけている。」
「なんですとッ!?」
――そんな筈は無かった。
出発前に魔界の魔力溜りから十分な量の魔力を補充し、更にエリスには『死者の手』の機能を応用した精吸収機構と高性能な魔力変換炉が搭載されている。
特殊な武装による攻撃で敵に強制的に快楽を与え空気中に精を放出させ、そしてその精を吸収し魔力へと変換する…。この組み合わせにより、人間を相手にする限り半永久的に稼動し続ける設計だった。
「なのに何故…」
「やはりマスターの精じゃないと変換効率が…」
「本体〈お前〉はな!だがギガントゴレムはあくまで追加武装、装備が精を選り好みするものか。」
「ですよねー…」
各部の状態をパネルで確認するが、機関が故障している様子は無い。先程エリスと確認したように精の質の問題でもない。ならばこれはいったいどういうことなのか…。
――ヒュン…。
その時何か黒いものが目の前を通り過ぎた。
「ぬ、攻撃か!?」
敵の反撃能力はあらかた片付けたつもりでいたがまだ動ける者残っていたのかと、それが飛び去った方向に目を向ける。
すぐさまエリスの目を介して撮影した画像を拡大すると腰から黒い翼を生やした女性が空を飛んでいた。
「ただのサキュバスのようですね。」
「なんだただのサキュバスか…」
………。
「「…んんっ!?」」
おかしい。
「何故反魔領を魔物が飛んでいる?」
「分かりません!」
次の瞬間、嫌な可能性が頭を過ぎった。
「都市の図面を出せ!空気中の精分布と魔力分布を地図に反映するんだ。」
すぐさま空中にこの街の地図が投影される。その上に魔力と精の濃度が色となって映し出された。
「…げぇ!?」
そこには、恐れたとおりの光景が拡がっていた。
――都市内某所にて。
「ハッ……ハァっ…・・」
雑貨店の青年、ビオールは何かから逃げるように路地裏を走っていた。
何かとは例のガスではない、都市の中でも中央から離れた位置にあるこの区画まではまだガスは到達していなかった。故に衣服も着ている。
たまたま白い巨像が降り立った位置から離れた場所に居り、更に運よく早めに状況を知ることが出来た。故にある程度余裕をもってここまで逃げてくることが出来た。
だが、ここに来て少し足を休めていたところ予想もしなかった相手に襲われたのだ。
「…ここならッ!」
もうこれ以上走り続けることは出来そうにない。彼は家主が逃げ去ったあとの空き家の一つに飛び込み、内側から鍵をかける。しばらくここに隠れてやり過ごそうと一息ついたところで家の壁が吹き飛んだ。
そして瓦礫と粉塵の中から現れたのは一人の美しい女性…
「ねぇ…おねがい、逃げないでぇ…
#9829;」
「ベリナ……!」
彼女の頭には黒い角、腰には翼、そして尾が生えていた。
人間ではない…そもそも人間なら素手で石壁を粉砕したりはしない。
「やっぱり貴方のじゃないと駄目なの…味が薄いの…満たされないのぉっ!!」
「ひっ…!?」
ベリナと呼ばれた、今はサキュバスとなった女性が吼える。その威圧に吹き飛ばされるかのように、青年は尻餅をついた。
彼は彼女を知っている。だがそれは人間だった頃の彼女である。
彼らは元々恋仲であった。それも将来共に暮らすことも考えた程の関係である。
しかし1年ほど前、とある事件に巻き込まれたことをきっかけにその関係は変容した。
ある休日の昼ごろ、街中を二人で歩いていた彼らの前に一体の魔物が現れたのだ。その遭遇は単なる偶然であり、特に彼らに用があったわけではないだろう。彼女は街の警備兵に追われていたのだから。
しかしその魔物はあろうことか、彼女を追っていたであろう兵士達に向けて衣服を肌蹴てその裸体を晒したのである。結果何が起きたのか分からないが、次の瞬間には兵士は全滅し彼らも強烈な快感に襲われ地に倒れていた。
ベリナに変化が起きたのはそれからである。
それまでも二人の間に幾度か性交渉はあったのだが、彼女から求められる形でその頻度が急増したのだ。さらに彼女は精液を摂取することに異様に執着するようになった。ついでに彼も何故か早漏が深刻化していた。
そして彼女の…全てをしゃぶり尽くすような口淫と日に日に増えてゆくその回数に恐怖した彼は、ついに彼女のもと
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