〜魔界〜
紫色に輝く空の下、魔王の住む王都に程近い所に、その街はあった。
奇妙な街だった。…いや、規模的には街というよりは都市に近いのだが、その広大な面積の殆どをたった一つの巨大な建造物が占めているのだ。そして街の外周はこれまた巨大な外壁が取り囲んでいる。近い表現があるとすればそれは城塞都市…しかしその中心となる施設の外観は城とは程遠い。ひたすらに水平なのである。上空から見下ろせば、巨大な真四角の石板が、水平に置いてあるように見えた。
そしてその奇妙な城へと、囚人を乗せた空飛ぶ檻は降りてゆく…。
ーーーーーーーーーーーーー
「ようこそ、王立第4捕虜矯正所へ。私はここの区画長、リスクェルである。…さて、貴様等は何故此処に連れてこられたか分かるだろうか?」
薄暗い部屋に凛々しい女の声が響いた。
…正直分からん。
目的地に着く前に檻の中で気絶し、目を覚ました時には見知らぬ部屋にいた。そして訳も分からぬままここに連れてこられたのである。ちなみに自分が最後だったようで同じ檻にいた他の面々は既にここで整列させられていた。
区画長と名乗ったのは見た目からして典型的なダークエルフである。褐色の肌とエルフ特有の耳、腰には鞭と図鑑に載っていた通りのいで立ちだった。
「…貴様等はそれぞれ程度の差はあれ、皆我々に対して何かしらの障害となり、或いは損害を与えた。…ようは戦犯扱いという訳だ。」
自らを区画長と名乗ったダークエルフの美貌がニヤリと、嗜虐性に満ちた笑みで歪んだ。
「よって、これからはここでその償いをして貰おうと思う。…なに、心配する事は無い。ただひたすら精を搾り取らせてもらうだけだ…家畜のように、毎日な。そして搾り取った精は魔力に変換され、今後の魔界発展の礎となるのだ。」
……これまで魔界の侵攻を必死に阻んできた者達がこれからはその手助けをさせられるとは…なんとも皮肉な話である。見渡せば周りに数多く居る教会関係者たちには気の毒だが、とりわけそんな高尚な目的の下に戦ってきた訳でもない自分にとっては大して感慨も湧かない話であった。そもそも話を聞く限り明らかに人違いだ、…敵にマークされる程の戦果など挙げた覚えが無い。とにかく一刻も早く誤解を解き、ここから解放して貰わなければ此処にいる戦犯共と一緒に永遠に精を搾られるだけの畜生にされてしまう…。
「ふ、ふざけるなッ!!」
不意に左の方から甲高い怒声が上がった。 見れば声の主はまだ年端も行かない少年である。なんであんな子が…と一瞬考えて思い出した、教団お抱えの勇者である。確かに信仰心の厚い者にとっては耐え難い処遇だろう。…しかし彼の抗議は鋭い破裂音に阻まれる。
「ぅぐっ!」
いつのまに抜いたのか、所長のダークエルフの手には鞭の柄が握られ、少年は破けたシャツの胸元を押さえている。…しかし次の瞬間、彼の様子が変わった。
「えっ!?…何これえぇ!?」
鞭に打たれた衝撃と遅れてやって来るであろう激痛を覚悟した険しい表情は崩れ、戸惑いと、何かを我慢しようとする切なげなそれへと変わった。
しかしそれも長くは続かない。
「ぁふっ…」と気の抜けた声を漏らすと彼はその場にくずおれた。一拍遅れて漂ってくる馴染み深い香り…見れば彼のズボンには濡れた染みが出来ていた。
「ほぅ、5秒程耐えたか…やるじゃあないか。だが此処に居ればそのうち1秒すら耐えられなくなる。くく…」
ダークエルフの鞭は打たれた者に痛みではなく快感を与えると聞く。それがどれほどのものなのかは実際に打たれたことは無いので知らないが、いまだ放心し、射精を繰り返す少年の様子を見る限り相当なもののようだ。
「私の鞭が与える快楽は長引くからなぁ…しばらくは動けんだろう。連れて行ってやれ。…ああ、ちなみに貴様等はそれぞれ決められた刑期を過ぎれば解放されることになっているが、絞れる精の量が足りない場合はその分延長もあり得る。せいぜい励めよ!ハッハッハッハッ」
……………。
異議申し立てする隙もなく、彼女は行ってしまった…。
「…では此方へ。」
「ひぃあッ!?」
突然背後から声がかかる。振り返ればいつの間にか小さなサキュバスの少女が立っていた。周囲を見渡すと連れてこられた他の男達もそれぞれ担当の魔物に案内を受けているところのようだ。つまりこの目の前の、なんだか陰気そうな少女が自分の担当ということらしい。確かに人間離れした美少女であることは間違いない。その造形の美しさだけ見ればこの場に居る魔物の中でも頭一つ抜きん出ているほどだ。しかし彼女の纏っている空気からはどこか異質なモノを感じた。魔物らしくない、地味で露出の少ない衣装に包まれた体はかなり小柄で顔も相応に幼く見える。しかしその胸元
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6 7]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録