焦燥

――――――――――

…先ずは敵を知らなければならない。
そう考えたローゼは彼が襲われた痕跡のあった波止場へと向かった。

あの現場を再び見ると思うだけでズキリと胸が痛む。しかし確かめなければ…全ては愛する人との未来の為…自らにそう言い聞かせ、ローゼは例の場所にもう一度降り立った。


…そこには、日陰であるお陰でいまだ乾いていない二人の体液が広がっている。彼女はそのうち明らかに量の多い方…魔物の愛液と思われる…を指で掬い、口に含んだ……、途端に彼女は顔をしかめる。
それは、その味やそれが敵のモノであるという嫌悪感に寄るものではなく、もっと現実的な問題…その体液が帯びる残存魔力から、相手の力量が予測出来てしまった為だ。種族は恐らくサキュバス、…それだけでも厄介であるがその魔力から察するにかなりの力を持った個体である事が予想された。
…まともにぶつかって勝てる相手ではない…彼女は瞬時にそう悟る。圧倒的な力量差…それは無情な事実であった。

(さてどうしたものか…)

桃色の人魚は考える。
時間的余裕は無い……あまり時間を掛ければ少年を拐った犯人が彼を完全に奪われてしまう…これ程の力を持った相手である、彼が拒めば洗脳くらい簡単にやるかもしれない…。そう思うと居ても立ってもいられなかった。

(短期間の準備で明らかに格上の相手に勝つ方法…)
果たしてそんなモノがあるだろうか…?

………、

……、

…、

(……ある…かも。)

不意に彼女は此所がどんな街か思い出した。この街の支配者…その特異性とは…
(とりあえず行ってみる!あとは拝み倒してでも…!!)
思い立ったら即行動、メロウらしく、桃色人魚は両足を人間のモノへと変身させると街の中心部へと駆けていった…







「えぇと……そういうのはちょっと…」

―市街地の中心から伸びる広い道の先にある巨大な聖堂、海を背にしたこの建物は街のシンボルであると同時に、その広大な敷地は公園として一般に解放され、市民の憩いの場となっている。その聖堂の入口近くにて一人の修道女と桃色の髪の女が何やら揉めていた。
「そこをなんとかぁっ!!」
そう言って修道女にすがり付いてくるのはやたらとグラマラスな体をこれまたやたら露出の多い水着に包んだ女性…ローゼである。…普通の街なら通報されそうな格好だが、親魔領であるとともに少々特殊なこの街ではそこは大した問題ではないらしい。この修道女が困り果てているのは目の前の水着の女が言っていることの中身に対してであった。

「ですから……他の神様の眷族が個人的な理由で万魔殿を利用するというのは…うぅ…どうしたらいいんでしょう……」

シスターは頭を抱える。
…彼女としてはこの目の前のメロウの話に同情し出来るなら力になりたいのだが…自らが仕える神の聖域が絡むとなると如何ともし難かった。

(彼女が人間だったら直ぐにでも連れていってあげられるのに………あとついでに男の人だったら以下略…)

…コホン、

「…とにかく、誘拐ということでしたら正規の手続きを踏んで公務の者を捜索に向かわせますから…」

「それじゃ遅いのぉ……」

今から捜索隊を組んで証拠を調べてとなると数日は掛かるだろう、他に片付けなければならない案件だって沢山あるのだから…その間に彼は…ローゼは今すぐにでも取り返しに行きたいのだ。

「主よ…私はどうしたら………ん?
…は、はぇ!?え、ちょっと、待って、ダメッ、そんなっ……ひッ、い゛っ、ふっ、ひゃぁぁっはあぁああ゛あ゛ぁ―――ッ!!」

ついに神の意を請おうと祈り始めたシスターの身体が突然、雷に撃たれたかのように仰け反り痙攣した。そしてそのまま地面に崩れ落ちる。

「お゛っ…おぉお゛お゛お゛……!?」
『構ワヌ、通セ…』

肩を地に着け腰を突き出すような情けない格好で地面に踞るシスターの頭の中には神の声が響いていた。反射的に股の間を両手で必死に押さえるも、彼女が纏う修道衣の下半身にはみるみる内に濡れた染みが拡がり指の隙間から布が吸収しきれなかった体液が滴り落ちる。

「あ゛っあ゛っ…は…はへ……いひの…れ…?」

『構ワヌト言ッテイル』「っん゛ほぉぉおお゛おお゛―――っ!?」

衆目の前であることも忘れて涙と涎で顔を汚しながら地面でよがり狂う聖女、その独特な修道服に包まれた下半身の下にはあっという間に水溜まりが出来ていた。それどころかよく見ればその豊満な胸元にもじわりと染みが拡がっている。
…潮を噴き失禁し乳汁まで噴かせる程の快楽、流石は神様のお仕置き(或いはご褒美?)といったところである。恐ろしいと思う反面少し羨ましいとも思ってしまったが今はそれどころではない。

…そのまま十数秒経過した後、地に臥せ痙攣するシスターの右手がプルプルと上がり空を薙いだ
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