フリエント大陸。
教団の根拠地たる聖都や諸王領などが存在する大陸、フリエント大陸の者には中央大陸と呼ばれているー、とは別に存在する大陸である。
この地では、人と魔物は共存しており、これが当たり前のように長い年月を占めていた為、魔物を排斥しようとする運動や政治的思想は存在しない。
だが最初からそうであったわけではない。以下はフリエント大陸における歴史書よりの抜粋、集約したものである。
この地には先住民と後から住み着いた移民とがある。今現在では両者は既に区別がなくなって久しいものの、当時は対立や争いなどもしばしば、見受けられた。この移民というのがいわゆる、親魔物派の人々であり、この中には寄り添う魔物の姿もあった。
もともと先住民達にも親魔物派と反魔物派があった。当然ながら後者の方が構成する数は多かった。しかし、ここに移民達の登場でその数は逆転する。
度々の抗争が起こり、これを見るに見かねた一人の人間の行動により事態は収束の様相を呈し、現在の思想に傾いていく。
英雄マクナ=フリエントである。
この大陸の名前も彼の苗字から取ったものであるのは言うまでもない。
彼は移民した一人である。
よってこの手の争いに辟易していた。
奇しくも彼は自他共に認める、ある記述には魔物にさえ一目置かれていたとされるが真偽は定かではないー、魔術師であり、ある事を常々人に言っていた。
曰く、
「魔物が人を襲う原因は、理にある。それもいつ、どう、定まったか分からない理に。最初からそうであれば人などとうに死に絶えていた。だが今日我々が生存することが、それが原初の理でないことの証明である。よって、これを是正する事が出来れば、永久共存は夢ではない」
誰もが鼻で笑うか、そんな事は神ならぬ身である自分達には不可能だと答え続けた。
しかし彼は不完全ではあったがそれを成し遂げてしまった。
彼自身の犠牲、という代償を元に。
ある時彼はこの大陸で最も高所に位置する場所を先住民の親魔物派に訪ね、聞くや否や出立してしまう。
それから一月経っても彼は帰ってこなかった。
更にそれから一月。大陸に変化が訪れた。魔物達が一斉にかつ、急速に理性を回復したのである。
驚いた民衆は同時にマクナ=フリエントが事を成したと悟る。
故に彼らは彼の姿を探した。果たして、彼はその姿を消してしまっていた。
大陸の最も高所、今では霊峰フリエンテスの名を冠している、フラグニス山脈の中にある最も高い標高を誇る山の頂上に彼の足跡と言える、魔術陣と一つの宙に浮く宝玉がそこにあるだけであった。
これこそが彼の残した、魔物の理を原初に帰す、という偉業である。
もっともこれは不完全であり、その全てをというわけには行かず、緩和に成功しただけであったが、その効果は絶大の一言に尽きた。
何しろ人の争いが止んだのであるのだから。
その先駆けとなるのが彼の捜索隊であろう。なんとこれには反魔物派も共同で人員の構成がされていたのである。
親魔物派、反魔物派、双方による合同捜索隊の発表により民衆は大いに悲しみ、やがて彼は英雄視されるようになる。
同時に魔物の鎮静化に伴い、両者はその思想を統合していった。
かくして現在の思想はその時より始まり今日に至る。
また、かの宝玉は彼の言から名前を用いられ、【理の宝玉】、と呼ばれるようになった。
「【理の宝玉】、ねぇ・・・・」
「そうだ、それ以外にお前を元に戻す方法はない!」
ここはフリエント大陸にある街のセムス。更にその中にある賃貸式の長屋の一部屋である。
「別に不都合はしないんだが・・・」
二人の女性が片方はベットに身を起こし、片方は椅子に座り討論をしている。片方の椅子に座っているのはリザードマンであり、無論イリアであるが、ベッドで身を起こしている方は一見したことのない九尾の妖弧か稲荷である。
しかしどう聞いても片方の女性の言葉は男が喋るようなものであり、次のイリアの一言で人物が確定された。
「リュウ、何故お前が唐突に魔物・・、しかも妖弧になったかは分からないが、とにかく私はお前に元に戻ってもらわねば困るのだ」
遡ること十日と数日、あの決闘あと、とりあえず腰を落ち着けて生活基盤を作る、ということで残っていた資金でここを借り、いくつかの仕事をギルドでこなしていた。
その最中、リュウが不調を訴えるようになり、心配したイリアは彼に休息を進言した。リュウはこれに対し支障はないと告げるが、イリアによって行動を封殺される。それからリュウは更に不調を濃くし、身動きが取れず寝込んでしまっていた。その間イリアは看病と仕事をこなし、つい昨日ようやく不調が収まって互いに安眠を取ったのである。
明くる次の朝、つまりは今だがイリアがリュウの部屋に来るとそこには絶世の美女、といって不過足ない妖弧が微妙
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