あたしは死んだ。
それこそ、いとも容易く呆気なく。
竜の姿で空を飛んでたら、下から飛んで来た剣が心臓にズップリと刺さった。
激しかったなぁ……って、そんな事を思う暇もなく、私は墜落した。
何だかゴテゴテとした装飾があって、いやにものものしい剣だったから、勇者が投げた剣なのか、はたまた教団が開発した新しい兵器だったのか。
ドラゴンであるあたしの目から見ても、お宝って言える剣で、……って、そんな事もどうでもよくて。
ーー結果、あたしは死にました。
問題なのは、死んだのに意識が残っているということ。
ああ、別に今は痛く無いからいいよ。剣が刺さった時も、驚くほど痛みはなかったし。
彼氏を見つける前に死んだのが、死んでも死にきれない無念だったのかもしれない。
いや、そうだ、そうに決まっている。
そして、もう一つの問題は、コイツだ。
「うおー。竜の死体なんて初めて見た。何かすげぇ剣も刺さってるし……。コレ全部売ったらーー、俺、大儲けじゃね?」
コイツは死んだあたしを舐め回すように見て、そんな事を言っていた。
何でも、竜の素材は魔道具を作るために重宝されるらしい。といっても、魔物が魔物娘になって久しい昨今、そんな事をする奴はいない。だって、猟奇的にすぎるでしょ。
死んだ人の体を加工して使うだなんて……。いや、結構やってる奴いる気がする。
アンデッドとか、アンデッドとか。アンデッドとか!
……じゃなくて、ついつい話が逸れるのが私の悪い癖だ。
心臓に剣が刺さったのだって、『おー、いい装飾だ』と思ってたら、そのまま貫かれたんだったと思う。イケナイ。すぐに逸れてしまう。
で、コイツは反魔物国のやつなのか、それとも、そうした猟奇趣味なのか、単に商魂逞しいだけなのかは知らないけれど。
あたしを解体して売り払おうとしている、らしい。
お宝……、あたし。
お宝を集めるはずのあたしが、逆にお宝として見られている。
…………男からそう見られて、悪くはなかったりする。
正直、コイツあたしの好みだし。小狡そうなのに、バカっぽいのとか、どストライク!
でも、残念ながら、あたしは死んでいて、コイツを捕まえてヤっちまおうにも体は動かない。
あーあ、残念。
あたしがため息もつけないでいるとーーだって、動けないもんーー、コイツはあたしの体に手を伸ばして来た。
ちょっと、そんなッ、乱暴にッ。
ゥン。そこ胸ー!
「うわ、……すごい臭いだ」
そ、そんな事言わないでよぉ。うわわわ。そんな風に、あたしの匂いを嗅ぐなー!
腐ってるんだからしょうがないじゃない。
「ん、……と」え、何々、そのナイフ。まさか。
「おりゃ!」きゃああああ! 何で、何で的確に胸の鱗を剥がしたの!?
「おお、この鱗は使えそうだな。ん、鱗の下は真っ白だ。そりゃそうか、死んでるんだから。でも、竜の肌って、スゲェな。死んでても大理石みたいで、……綺麗だ」
ひゃ、ひゃわぁぁぁぁぁぁ! 胸見て綺麗だなんて……。
何、何なの、コイツあたしを恥ずか死させる気!?
……あたし、もう死んでるけど。
もう止まったはずの心臓が、ドクドクと速くなる気がした。
「おお、プニプニしてる。肉は腐りかけで柔らかくなってるんだな」
ぎ、ぎゃあああああ! そんな、ゥンッ、胸をツンツンすんなー!
「じゃ、順番に剥いてきますかね」
剥く!? 剥くって言った? 今コイツ剥くって言ったわよね!
ちょっと待って、何その(金銭的な)欲望に染まった瞳は……。あたしをそんな目で見るなんて。
や、や、や。だから何で、的確に恥ずかしい所の鱗から剥がしていくの!?
や、やめろぉぉぉぉ!
……………もうお嫁に行けない。
コイツにもらってもらうしか無い。
う、ぅううううううう。
剥かれた。鱗を一枚残らず剥ぎ取られた。
あたしの体はコイツに余すところなく見られて、体を隠すこともできずに露出させられている。
ここは山の中だから、すぐに人が来たりはしないけど……。
青空の下。野外で男に裸を見られている、って、あたしにはハードルが高すぎるよぅ……。
「アレ? 逆鱗がないぞ。見逃したのか」
ひ、ひぇッ!? ちゃんと剥がされておりますよ。意識が飛ぶくらいの快感と一緒に、ご丁寧に剥がしていただきましたとも。く、くそぉぉぉ……。
ひゃんッ。そんな風に撫でるなぁぁ。
「いや、……やっぱり無いな。ちゃんと剥がしたみたいだ。コイツの鱗どれもこれも綺麗すぎて、どれが逆鱗か分からないんだよ」
あ、ありがとう。
「売っちまうの勿体無いかなぁ。俺のモノにしたいかも」
悦んでッ!
「ま、続き続き」
コイツは、今度はあたしのお腹を開いていく。
「あー、残念……。中身はもうドロドロだ。心臓なんて、しっかり剣が刺さってて使い物にはなんなそうだな」
こちらとしても誠に遺憾でござい
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想