形ばかりの、一通りの取り調べを受けて、私たちははメイちゃんの私室に通されました。
まったく何なのでしょうか。あのホルスタウロスは!
事あるたびにブレイブに色目を使って! 私の心はモヤモヤしっぱなしでした。
他の特戦隊のメンバーだという娘たちもブレイブに妙な視線を向けていて、私は気が気ではありませんでしたよ。まったくもう。
ブレイブは私たちのモノなのですから。プンプン。
私が左からブレイブに体をすり寄せて、カーラが右からブレイブにしがみつきつつ、メイちゃんの私室に入った時、
「ニャあ、また会ったニャ」
我が物顔でソファーに寝転んでいたケット・シーに声をかけられました。
「あれ? 君は確か、門のところで会った」
「そうニャ。本当はウチがキミらを迎えに行くはずニャったんニャけど、メイにゃん、ウチの仕事を取らないでほしいニャー。今回はメイにゃんの落ち度として猫缶は返せないニャ」
お腹をポンポンと叩きながら、ケット・シーは言いました。ああ、思わず顔を埋めたくなるようなフワフワの和毛です。
「ああ、別に返せなどとは言わん。ワシとて、このような形でコヤツらを招くことになるとは思いもよらなんだ」
メイちゃんが呆れたような口調で、こちらにジト目を向けてきました。私だって思ってもいませんでしたよー。まさか、この私がカーラと街中でドンパチ始めてしまう事だとか。
まさか、メイちゃんがキョ、キョニューなんて呼ばれて、こんな、キョニュー特選隊、ぷ、ぷぷぷ。思わず笑いをこらえる事が出来ません。
「あ”、何を笑っとるんじゃ!」
メイちゃんの瞳孔がスッと横に細められます。やばいよ、ヤバイよ。くわばら、くわばら。肉体派バフォメットの怒りを買いたくはありません。
「メイにゃん、そんなに怒っては可愛いお顔が台無しニャ。カルシウムとるかニャ? にぼし食うかニャー?」
メイちゃんの怒気を物ともしないケット・シー、凄いです。私には真似が出来ません。
ん、でもあのケット・シー。どこかで会った事があるような……。
…………。
「あーっ! あなたまさかカールさん!?」
私は気がついて大きな声を上げてしまいました。
「そうニャ。あれ? ウチは君と会ったことがあったっけニャ?」
ケット・シーは可愛らしく小首を傾げていますが、その仕草に私はもう騙されません。騙されてやることができなくなりました。
だって、
「私が小さい頃に、猫の国の宰相だって言って挨拶に来たことがありますよね?」
「んぅ? そんなこともあったかニャ? ウチは覚えてないニャ。ウチはメイにゃんのお部屋でゴロゴロするだけの可愛い猫にゃんニャ」
白々しい。私はソファーでワザとらしくゴロゴロしている猫妖精を見ます。でも、ああ、なんという気持ち良さそうな腹毛。
「そういえば、そんなこともしておったな。その後、ワシの相談役をしてくれて、お主が前回来た頃はコヤツがすでにこの街を出た後じゃ」
え、私たちメイちゃんに連れられて、ノコノコこの部屋にやって来たけれども、もしかしてここ、ヤバイメンバーが揃ってますか?
部屋の隅にキチッと立っているデュラハンなんて、確か前に来たときは街の警備総隊長だったような……。
あ、目が合った。思わず私は目をそらしてしまいます。これから、何の話を聞かされるのでしょう。
イヤナ予感に、私はダラダラという冷汗をかいてしまいます。
「どうしたのヴィヴィアン? なんか汗凄いよ」
きゅーん
#9825; 私のことを心配してくれるだなんて、なんてブレイブは優しいのでしょう。股からも汗がボタボタ落ちて来てしまいそうです。身体中の汗も、お股の汗も、すべてブレイブに舐め取ってもらって、ブレイブの白いドロドロした液でベタベタにし直してほしーい!
「頼みがあるのじゃ」
「断る!!」
メイちゃんの言葉に私は思わず即答してしまいました。おかしな事に巻き込まれたくはありません。思わず脊髄反射的に答えてしまいました。
ふぃー、いい仕事をしました。これで、この章は後みんなで遊んでめでたしめでたしで終わりですね。
そうです、そうに決まっています。そうでなければいけないのですーー!
だからーーこの氷魔法を解除してください。デュラハンさんも首元に突きつけた剣を収めてください。
冷たいし怖いし、謝りはしますから、謝るだけはーーーっ!!
あまりに連携のとれた早業にブレイブもカーラも、他のメンバーも目を白黒させていました。
いや、対応しろよ、元勇者。魔物のとはいえ、お姫様が刃をむけられているのですよ。この様子からしてワザと反応しなかったと言うわけではないと思いますが……、いつ動くの?、今でしょ!?
私は精一杯唇を尖らせますが、氷の冷たさでうまく形を作れません。私のプルプルの唇がー、お肌がー。
さ、寒い。助けてください、ブレイブ。そして、私
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