【龍神様の縁日】

「オゥ。橋守りの、世話になったのォ」
「いいえ、お礼を言いたいのは私の方よ。改めて…、あなたも元気そうで何よりね」
「お主も健勝そうで何よりじゃ」
龍神様と言葉を交わす着物を来た妖艶な女性。結局彼女は伴侶を見つけられなかったようだ。
「みな出払っておるから、ここでは羽を伸ばしても大丈夫じゃぞ」
「そう。なら言葉に甘えようかしら」
女性の背中から羽が伸びる。頭からは角が、臀部からは尾が伸びる。
「あいも変わらず、女性(にょしょう)の我が身でも惚れ惚れとするような姿よ」
「フフ。ありがとう」
「魔王さんは元気か?」
「ええ。いつも通りヤってるわ」
「呵呵。親御どのが元気であるのは良いことじゃ。ホレ、酒じゃ。お主もいける口じゃったろう」
「いただくわ」
龍神様とリリムの杯が静かに酌み交わされた。


「盆踊りを見ると今年の祭りも終わりじゃと思うのォ」
呵呵呵。龍神様が笑いなさる。
「人も魔物もみな祭りが好きじゃ。それは魔物がみィんな娘っ子になっちまう前からも変わりはせん。昔っから、祭りの時には人の輪に混じって魔物も一緒に踊っとった。今のように祭りではないときにも人の輪に混じれるンは魔王さんに感謝じゃな」
盃に入った酒を煽りながら豪快に笑われた。
「チィと交わりすぎな気もするがの。……そんな変化も永い時の移り変わりから見れば微々たるモンじゃ」
「それでもあなたは変わらないわね」
リリムの言葉に龍神様は否と返す。
「いンや。儂も変わっとるよ……。なんせナァ」
龍神様のお顔が慈しみで満たされる。
「儂にも稚児(ややこ)ができよった」
その言葉に橋森が目を丸くする。
「そうだったの。おめでとう」
「ありがとよ。こんなことがあるとは儂にも驚きじゃて」
龍神様が手を打つと龍の幼子が駆け寄ってきた。
「可愛らしいわね」
「オウよ。目に入れても痛くないとはこのことじゃ」
幼い龍は撫でられて気持ちよさそうにしている。
「旦那さんは?」
「婿殿と殴りおうて寝ておるわ。呵ッ呵」
「……ああ、あの暑苦しい二人。そんなことせずに、許してあげればいいのに」
「儂もソウ言ったのじゃがな、あやつは妙なところで頑固でナァ。……龍神といえども人の心一つ好きにはできん。ジャからこそ、浮き世は面白い。こやつにも出会えたしな」
幼子は龍神様の膝でいつのまにか寝息を立てていた。
「もう眠っチまいおった。祭りも夜もまだまだじゃというに。でも、……ヨイか。来年も、またその来年も祭りは続くのじゃから」
「そうね……。ちゃんと続けていってよネ、龍神様」
「呵呵呵。当たり前じゃ。例え人の世が儂らを忘れてしまう時が来ようトモ、儂らはここにおって毎年祭りを開く」
永い年月を生き、様々なものを見続けてきた龍神様の目には寂しさも期待も無く……、ただ当たり前のものを映していた。
「人が私たちを忘れてしまう日なんて来るわけが無いわ。どれだけ頑張っても不思議なことは無くならないし、何よりも私たちはここにいる。そこに、いるのよ」
「ソウじゃ……ソウじゃ。其処此処におる儂らが忘れはさせぬ」
「今年のお祭りは楽しかった?」
「もちろんじゃ。新しい縁も古い縁も、良い縁も悪い縁も、みィんな続いてあそこで踊っておる」
龍神様のが示された先には人も魔物も一緒になって踊って笑っている円があった。


人と魔物娘。お互いに手を取り合って。祭りの数日間で相手を見つけたものも見つけられなかったものも笑いあっている。

鰻女郎、リビングドール、女郎蜘蛛、毛娼妓、モスマン、マンティス、ワーム、おおなめくじ、デビルバグ、ソルジャービート。
刑部狸、クノイチ、カラステング、提灯お化け、アカオニ、ゴーレム、つぼまじん、バフォメット、魔女、ファミリア。
雪女、スライム、レッドスライム、バブルスライム、ダークスライム、シー・スライム、ショゴス、スキュラ、クラーケン、ラーヴァゴーレム。
ミューカストード、ジャブジャブ、ハンプティエッグ、ホルスタウロス、アプサラス、マッドハッター、リッチ、ゴースト、ウィル・オ・ウィスプ、ねこまた。
ケット・シー、トロール、シー・ビショップ、河童、マーメイド、メロウ、サハギン、オーガ、アオオニ、サンダーバード。
ハーピー、ブラックハーピー、白澤、ダークエルフ、アルプ、ミノタウロス、ドラゴン、ウシオニ、ウェンディゴ、ワーウルフ。
リリム、マーチヘア、フロウケルプ、セイレーン、マインドフレイア、ヴァンプモスキート、バジリスク、キャンサー、サテュロス、ネレイス。
テンタクル、コカトリス、ベルゼブブ、グリズリー、レンシュンマオ、ドリアード、ドワーフ、キマイラ、ぬれおなご、ラミア。
マンドラゴラ、アリス、メデューサ、大百足、リリラウネ、ローパー、イグニス、シルフ、ウンディーネ、ノーム。
ダークマター、リザードマン、サ
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