裏と表が合流する。
彼ら、彼女たちにとってはドチラが表で裏だったのだろうか。
何も知らない男性たちには表こそが表であり、福男たちにとっては裏こそが表だったのだろう。
魔物娘たちにとっては表も裏もなく、全てが本気の婚活会場。どちらか選んでいてはそれこそ後の祭りだ。
空には色とりどりの花火が上がっている。
ドン、ドン。
表の祭りを楽しんでいたカップルたちにとっては美しくロマンチックなものであったが、未だ独り身である追うもの、追われるものたちとっては、サツバツとした終りへのカウントダウンーー。
◆
「マズイマズイマズイ、花火が始まったということは終わりが近い」
ダンピールが焦燥感に駆られて走る。そんな彼女の瞳が軍曹の姿を捕らえた。
「あれは男!?、チャンス」
駆け抜ける勢いそのままに、彼女は彼に飛びかかる。
ズシャッ。
乾いた砂の音ともに、上から降ってきた何者かに彼女は押さえつけられた。
「!?」
ダンピールである自分をいとも容易く抑えつけるのは何者だ。獲物を目の前にして止められた憤りと驚愕は、より大きな驚愕によって塗り潰される。
「ブラを抜かれた?!」
彼女は自らを押さえつけていた相手を跳ね除けて睨みつける。
「……軍曹に、手出しはさせない。どうしても、というのなら僕が相手になる」
ダンピールから抜き取ったブラジャーを弄りながら、儚げな風貌の変態がいた。端正に整った顔立ちと均整のとれた肉体を惜しげもなく晒しながら、彼はそこにいた。
その佇まいはまるで悟りを得たもののようでもあるが、手にしたブラジャーが彼が俗物の権化であることを物語っている。そのアンバランスな有様は見るものに、高級ステーキに焼肉のタレをドバドバとかけるかのような残念さともったいなさを思わせた。
「……ッ、…。………グゥっ!」
彼を見て言いたい言葉がいくつも浮かんでくるのだが、その澄んだまっすぐな瞳を見ていると何も言えなくなってしまうダンピール。
彼は彼女の下着の香りを堪能さえしているのだが、まるで彼が正しいのではないかという錯覚さえ覚える真っ直ぐな瞳と、清々しさに満ちた自然な動作にタジタジにされてしまう。
「もしも、君が軍曹を狙うというのなら、君も僕と同じにしてあげよう」
変態が自らを指して宣った言葉はダンピールの背中に冷たいものを感じさせた(意味深)。
「…………上等ォ」
唇を薄く舐めるとダンピールはその男について行った。
◆
「もふもふぅ」
「プニプニィ」
「「サンドイーッチ」」
「くっ、ふぅあアあ!」
バロメッツとワーシープのほんわかふんわりプニプニサンドで幸せそうな顔をしている男がいる。
「………、アッチ向いて、ホイッ!」
なぜか真剣にアッチ向いてホイで競っている男とスケルトンがいる。
首を一回転して回避するのは反則だ。
ずっちゅ、グッチュ。
捕まえた夫の上で水音を派手に立てながら腰をくねらせるミューカストード。
粘液まみれてグッチョぐっちゃだ。
それらを満足そうに見やりながらリリム、橋森結は歩みを進める。
「派手にやっているわねぇ!! もっと貪りなさい我らが同胞!! 早く現れてちょうだい、我が夫ぉぉぉっ!!」
余裕のなさそうな顔を見せたのは目の錯覚だということにしておいてあげよう。
「あっちゃもこっちゃも、みいんな御破産!! さぁて、願いましては!! ちゃんと骨のある男、出てきなさーーい!!!」
彼女に声をかけられた男は全て、その瞬間に股間を真っ白に爆発四散させて倒れてしまう。ハイクを読む暇さえない。
彼女は横に並び立ってくれる誰かを探していた。
◆
「いくらお父さん(とお母さんの変な液でベトベトになった二人)の下着と一緒に洗わないでと言われようともォォォ」
「行かせてくださいお義父さん! 娘さんは必ず幸せにします!」
差し出された菓子折りを絶対に受け取るまいと腕を固く組んでいる神職Aに、90度を超える激しいオジギで迫る真面目そうなスーツの男性。
くっ、悔しい、こいつならば大丈夫だろう。と思っている自分がいりゅぅぅ。と血の涙を流さんがばかりに神職Aは耐える。
気持ち悪いから、早く折れてしまえ。ホゥら、孫の顔がチラついているだろう?
「ヒャッハー!、俺様の剣技にイッちまいなぁぁ!」
見るからに危なそうなピーポーは神職Bの槍術によってチリ紙のように蹴散らされる。
そんな無双を繰り広げる彼の前に立つのは鬼と見まごうほどの武人が立つ。
「お手合わせ願いたい」
短く刈り上げた髪に鋭い眼光、引き締まった筋肉はまるで鋼のよう。荒々しく気を吐きながら、六角棍棒を片手にした青年が神職Bに向かい合った。
「ほう。お前も娘たちが狙いか」
「否、勘違いしないでいただきたい。某はこの祭りにこの形で参加すれば、強者と戦えると耳にした故。純粋な力
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