「こッ、こんな、こんなッ。こんな馬鹿な事があるかぁ!!」
喚き立てる男性たちをよそに軍曹は静かだった。
彼らの目指す到達点、龍ちゃんが目の前に立っていたのに。
彼らの目前には龍神様に抱かれているはずの龍の幼子が一人っきりで立っていた。
これはあり得ない、あり得るはずがない。
宮司が許さないのはもちろん、龍神様もまだ3歳である彼女を一人で行かせるわけがない。
嘘だ。これは嘘だ!!。
皆が心の中で思うが、その可愛らしさを目にした真性の古強者(ロリコン)は欲望を抑え切ることはできなかった。
「フェ、ヒヘヘヘヘヘ」
危ない笑い声をあげながら、次々と龍ちゃんに向けて突貫する豚ども。
全員が全員、今の龍ちゃんを狙っているわけではない。他の魔物娘狙いのものもいるし、本気で『今の』龍ちゃんを狙っている真性はほんの一握りにすぎない。
龍ちゃんを狙っていると言ってはいるものの、これからの成長を見越して先ずお近づきになろうとするもの、龍神様の権力をアテにしているもの、ノリで加わっているものもいる。だが、一部の真性と同様に、もうロリコンいいや、と思わせるものを彼女は備えてしまっていた。
そして、因果応報。豚のような悲鳴が次々と上がった。
龍ちゃんに向かって、突撃していった男たちは、地面から樹上から空中から現れた魔物娘たちに捕らえられた。
地中からはジャイアントアント、アントアラクネ、ケプリ。
樹上からはアマゾネス、ゴブリン、ラミア、アルラウネ。
空中からはピクシー、ダークエンジェル、モスマン。
龍ちゃんの目の前で次々と脱落していく男たち。
そして、残るのは龍ちゃんを本気で狙っている軍曹と、『偽の』龍ちゃんの姿形に惑わされなかった真の猛者たち。
「そろそろその姿を止めてくれないか?。私はムラムラどころかイライラするよ」
軍曹が元々よく浮かべているはずの仏頂面で不機嫌そうに吐き捨てる。
「いやいや全くもってお見事なアウトオブ眼中ぶりですね。さすがはさすがはかのご高名な軍曹氏でありますねェ!!」
龍ちゃんの姿を止めてふざけたピエロの姿を見せる奇術師。
「報告を受けていると思いますが、私はドッペルゲンガー。知らないものからは『奇術師』と呼ばれています」
「私は知らなかったが。自己紹介はいい。で、どうする『奇術師』」
軍曹の言葉に一瞬しまったという顔をしたドッペルゲンガーだったが、すぐに気を取り直す。
「ゴホンッ。君たちの貞操は我々が『もらう』。君たちは我々の代わりのきかない最愛の夫として結婚させられる時が来た。諦められない人がいる『我々』によって」
「成程成程。そうか、全く以ってどうしようもない連中だ。おまえ達もだったのか。ならば彼らが相手してやらねばいけないのは全く自然だ。一度フられた位では諦めるわけがないか」
全てを彼らに押し付けようとする軍曹に男たちから怒気が浴びせかけられる。
そうして現れたのはサラマンダー、エルフ、ヴァンパイア。
「う、あああ。うあああああああ」
その姿を見て絶叫する三名の男たち。彼女たちの姿は見覚えがあるものだったのだろう。
「お前との(ゲーセンでの)熱い戦いを忘れられないのです」
「お前、俺がゲームでボコボコにしたら(物理的に)やり返してきたサラマンダー!?」
「そんな馬鹿な。お前はむしろフった側だろう!?」
「恥ずかしくて逆の態度をとっちゃっただけよ」
「え、あれ嫌がらせじゃなかったの?」
「違う!。好きな子にはむしろ嫌なことをやってしまうという、ゴニョゴニョ。今回、福男に参加すると聞いていてもたってもいられなくて」
それぞれのやりとりを目にした、軍曹を含む男たちは拳を握り親指を下にしたサイン(賛辞)を送りながらその場を後にしようとする。
「あなたも待ちなさい」
奇術師が軍曹を呼び止める。
「悪いな。私はお前の想い人じゃあないよ」
軍曹の言葉に奇術師は顔をいまいましげに歪める。事実、彼女は軍曹のことを感心こそすれ惹かれてはいなかった。
「いいなぁ!!。お前!!。欲しい!!。素晴らしい!!」
「へっ!?」
自分に投げかけられた賢者の言葉に奇術師は呆気に取られてしまう。
「そうかようやく見つけたか、彼女がお前の相手か。賢者はコスプレマニアだ。君のその衣装を見て高ぶってしまったようだな。ちなみに私たちの衣装や道具を用意したのも彼。いい仕事をするだろう」
「恐悦、至極!!」
賢者は軍曹に敬礼を返す。
「それならば、君に任せよう」
奇術師は自分を素晴らしいと言ってくれた賢者にまんざらでもない気持ちを抱き始めていた。
「でも、衣装に惚れただなんて納得できない。私自身を見させてみせる!」
賢者と奇術師のコスプレ談義が始まった。
◆
いつの間にかワームの掘った巨大な落とし穴にはまり脱落していた分隊Bチーム。
「気
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