酒のカップを手にして参道を歩くのはチビ、デブ、ハゲの三匹のおっさん。
「ちくしょう。騙された!」
「そうそう、あれは無いわなー。フロウケルプのわけめ酒っつったら、期待するよな。安物のカップ酒を移し替えて髪の毛の切れはし浮かべるって詐欺だ!」
「ははは、さすがの魔物娘さんでも公共の場でそんなこと」
「みんな私を見て。私輝いてるわ!」
「それはダメ。ちゃんと服をきてくださーい!」
自分の体に電飾を巻きつけたあられもない格好でマーチヘアの女性が三匹のおっさんの目の前を走り去っていく。
追いかけていくのは真面目そうな男性。その手にはトロールの秘密のハーブ。
「やるかもしれませんね」
ハゲの言葉にチビとデブがそら見ろという顔をする。
「おい、セイレーンのお姉ちゃん。焼き鳥くれ」
「はいっ、ありがとうございます」
デブが焼き鳥を受け取る。
「ビールはどこかな?」
「おいおい、お前この前健康診断で痛風一歩手前って言われてただろ?」
「祭りでは、我慢をする方がバカなんだぜ」
「あなたって人は」
チビとハゲが呆れている。
とはいえ、三人は揃ってキャンサーから泡たっぷりビールを受け取る。
「うまい、うまいけど泡多っ!。確かに泡たっぷりって書いてあったけどさ。物足りないぞ」
「マインドフレイアの耳かきはいかがですかー」
「おっ、かわいいお姉ちゃん」
「あれはやめとけ」
「隣の店もですね」
「ヴァンプモスキートの瀉血カッピングです。淀んだ血を抜いて肩こりもスッキリ解消ですヨン」
「でもどっかの店は入りてぇよ」
あかなめの垢すりマッサージや寄生スライムデトックス、ハニービーの蜂蜜美容オイルマッサージも並ぶ。
「バジ、リスクの、マッサージ」
「お、あの子は大人しそうだから入ってみるぜ」
「ちょっと、見た目で判断してしまっては」
「あの子、大人しそうに見えてタイ式マッサージで容赦なかったぞ」
疲れた、でもスッキリした様子で戻ってくるチビ。
もちろん性的なお店ではない。
「いいところに当たったようで、良かったです」
「あ、お前ら何飲んでるんだよ」
「サテュロスワインさ。これすっげぇうめぇ」
「じゃ、俺も行ってくるわ」
「ネレイスのチーカマ、河童のキュウリの一本漬け、テンタクルの酢の物、コカトリスの温玉、ベルゼブブの乾物、セルキーのキビヤック」
「グリズリーの蜂蜜酒、レンシュンマオの紹興酒、ドリアードの果実酒、ドワーフのウィスキー、キマイラの気紛れカクテル、ぬれおなごの冷酒、ラミアのハブ酒」
キマイラの気紛れカクテルは表に出ている人格で味が変わる。
「つまみもお酒も充実しすぎです。そろそろ飲み過ぎですよ。はい、マンドラゴラの葛根湯」
「さんきゅ。きれいなお姉ちゃんたちも酒の肴になって。ずっと祭りが続けばいいのになぁ」
「ホントホント」
「あっ、かちょーじゃ無いですかー」
三匹のおっさんの中のハゲに近づいてくるアオオニがいた。
「アオオニさん。あなたも来てたのですね。うわっ、酒臭」
「ぶははははー。かちょーはまだ飲み足りないんじゃ無いですかー」
ハゲにしがみつく、アオオニ。
「酔いすぎですよ。あなた」
「いいなー」
「お前ずるいぞ」
「そんな目で見られても、これは酔っ払いに絡まれてるだけですよ」
「おじさんたち三人で屋台まわってるのー?」
屋台が回ってるー。そんなことを言いながら、アオオニはハゲに寄りかかる。
「私たちも女だけで回ってるから、一緒に回ろうよー、くるくるー」
「ちょっと、急に走って行かないでよ。危ないでしょ」
「ぎゃはははは。大好きなかちょーさん見つけて走ってったんだろ」
つり目のメデューサと、小さい樽酒を持ったアリス。
「お嬢ちゃん。お酒はまだ飲んじゃダメなんじゃないの?」
「ああ?、見た目で判断すんじゃねぇよ。デーブ。俺はこれでも20歳越えてんだよ。アラサーでーす!。下だってボーボーなんだから、見るか?。ぎゃはははは」
デブのお腹をつつきながらアリスは酒を口に運ぶ。そのまま酒をこぼしてデブの服が汚れてしまう。
「おっと悪りぃ、俺が拭いてやりゅー」
アリスがデブのお腹に縋り付く。
「これはなんていうご褒美なんだ!?」
「まったくこれは私がしっかりしないとね」
「そう言いながら、なぜ俺を後ろから抱きしめている」
「おっぱい休めるのに丁度いいところに頭があったからよ」
「お前もしっかり酔ってるだろ!」
「何よ、文句あるの?」
ぎゃいぎゃいと喚き出すチビとメデューサ。
「放せ、このデカ女!」
「ひっどーい。そんな悪いこという子にはお仕置きよ。うりゃうりゃ!」
メデューサがチビをしっかりと抱きしめて胸を押し付ける。
「おーおー、今のうちにいろんなことしてもらっとけー。そいつ酒入ってると素直だからなー。そんなことより大百足の店
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