私たちは数日間、バーダンに滞在していました。
人海戦術と魔法の力で元よりも立派な街並みに生まれ変わったバーダン。
復興を見届けた私たちは次の街に向かいます。
協力してくれた転生者たちは、もともとのエルフの森に戻る者やそのまま街に住む者、新天地を求めて旅立つ者もいました。しかし、その他の者たち、ブレイブの上や下や横になりたい娘たちはみんな私の領地に移ることになりました。まずは私の城を拠点として街を作っていってくれるそうです。
領地経営も出来なくはありませんが、ルチアに対抗するためにそっちに費やす時間もなく興味もなかった私は、お母様から領地をもらったはいいものの自分のお城をおっ建てた後はほったらかしにしていたのでした。
領地が発展していないのは私がボッチだからとかではないですよ。そんな姫である私がボッチなわけないじゃないですか。ちゃんと部下だっていますし。
そんなことはどうでもいいので。者ども、私とブレイブの国を作り上げなさい。ふははははー。今度帰る時が楽しみです。
そんな風に物事は進みます。でも、進んではいけなかったものも。
「ハァハァ、これからよろしくお願いいたします。この卑しい私を馬としてこき使って下さいませ。肉便器の役目も悦んで果たさせていただきます」
馬車を引く駄馬が言葉を口にします。
誰だ、こいつ。
誰だと思います?
おら、自己紹介しなさいこの駄馬。
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はい、ドン。
「宿屋の看板娘、ユニコーンのビクトリア、改めまして、ブレイブパーティ専属引き馬兼肉便器、バイコーンのビクトリアでございます」
どうしてこうなった。
彼女に見つけられてしまったのは、街の復興の手伝いをしていた時です。
◆
「見つっ、けましたよ、ハァハァ。ブレイブさんとその御一行様。私が、この体になった責任を、とってくださいっ!」
「ビクトリアさん?。大丈夫ですか、そんなに息を荒げて。責任とはどういうことです?」
ブレイブ様、ゴホン。ブレイブが驚いた顔をします。私は何も言っていない。いいですね。
「大丈夫か、って大丈夫じゃないから責任を取れと言っているのです。ハァハァ」
なんだかこの感じとても既視感を覚えます。まるでブレイブに対していつも発情している、カーラや白衣のような。
私ですか?、私はあんな節操なしでも変態でもありません。
「私はユニコーンだったから、ユニコーンだったのにあなたが放った魔力の光の影響を受けて、今バイコーンになりかけの中途半端な状態なんです」
ビクトリアが叫ぶ。彼女の見た目はユニコーンのままですが、ドロドロした魔力が彼女をナカから苛んでいるのでしょう。
その後も次々とまくしたてる彼女に優しいブレイブは折れて、彼女の身元を引き受けることにしたのでした。
そして、ブレイブの匠な調教の結果、楚々としたユニコーンは淫乱でドMな残念変態バイコーンになったのでした。
私は残念でも変態でもMでもありませんが、ブレイブに調教してもらいたいです。ハァハァ。
「ハァハァ。これからは私があなた方の馬車を引いていきましょう。ハァハァ」
どうしてこのパーティには変態ばっかり集まるのでしょうか。ヴェルメリオがいなくなってタガが外れたようにも見えます。
ブレイブには変態を引き寄せる何かがあるのでしょうか、それとも変態を引き寄せる誰かがパーティにいるのでしょうか。
カーラですね。そうです、そうに違いありません。
それでも一応断っておくと、ブレイブ曰く、あの馬の本性は元からそうだったとのこと。
部屋に入って二人っきりになった瞬間、ユニコーンの時からああだったそうです。
さらに、その言動から、私たちのパーティに加わるためにわざと魔力を浴びた節もあるようです。
とんだ駄馬を引き受けてしまったものです。
◆
「あたし、このパーティに加わってよかったのかな」
駄馬イコーンに引かれた馬車の上で、空を見上げて遠い目をする一人のサテュロス。
角ある王の生贄改め、ブレイブパーティの生贄です。ヴェルメリオの代わりは彼女には荷が重いでしょうか。
すでに背中に哀愁が漂い始めている彼女は置いておいて、私たちは次の街ドルチャイを目指します。
ドルチャイには私のキューブ・アトモスフィアを作ってくれたバフォメットのメイちゃんがいます。
キューブ・アトモスフィアは入っていた魂が全て解放されたので今はもう起動してくれません。
ですから、術式を新しく組み直してもらう必要があるのです。
彼女は元気にしているでしょうか。
彼女はドルチャイにあるサバトの長で領主も兼ねています。
私の領地の経営のアドバイスももらえるかもしれません。
サバトの長が領主ということは、次の街はそういう街であることは言うまでもありません。
子供のための子供による子
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