裏祭り・夜【福男 side 福男】

「状況は?」
森の中にうごめく複数の気配。
「上々。と言いたいところですが、龍神池を取り巻いている魔物娘の数が例年よりも多く、我々が送り込んだ金魚たちでは十分には引きつけきれていないようです」
「そうか。では、仕方がないな。龍神池を迂回するルートを取ろう。なんとか今年こそはたどり着きたいものだが」
「はい。我らの悲願。今までに倒れていった仲間たちも多い。彼らの散らした童貞に報いるためにも、我々は天辺にたどり着かなくてはなりません」
「ああ。言われるまでもないよ、賢者。今回の第
#9899;
#65038;次ヴァージンロード奪取作戦でカタをつけよう」
賢者と歩く彼を目にした男たちが尊敬の念を込めて彼を呼ぶ。
「軍曹!!」「軍曹殿!!」「童帝(チェリー)!!」「龍犯し(ドラゴンスレイヤー)!!」
「おいおい。誰だ?。今言ったのは、まだだよ。まだ私はそうじゃあない。これからそうなるのだから」
「おお。軍曹殿」「無戦無敗の魔法使い、未抜刀の宝刀!!」

容姿端麗。文武両道。実実剛健。
そんな言葉がふさわしいはずの彼の顔に、にちゃりとした笑みが浮かんだ。
「福男候補総員、傾注!!」
軍曹が声を張り上げると、彼を称えていた男たちが静まった。

「諸君、夜が来た」
森の闇に彼の声が染み入る。

「無敵の敗残兵諸君、最古参の童貞諸君」
彼の声は宴の開始を告げる鐘の音のようだ。

「満願成就夜が来た。お祭りの夜へようこそ!!」
大きく手を広げて歓迎を示す軍曹。
軍曹の言葉に男性たちは笑みを浮かべ歓声が巻き起こる。

「目標は龍神山天辺、龍神神社本殿。そして、龍ちゃん、および巫女さんとのお近づきだ」
軍曹が宣言する。

「伍長!!」
「御前に」
軍曹の前に、身体中に迷彩服を着込み暗視ゴーグルをつけた男性が立った。
「赤外線付きドローン5機と分隊Aグループを与える。貴分隊を先遣隊とする」
土を踏みしめる音を立て、伍長の後ろにAグループとして振り分けられた猛者たちが並ぶ。
「だが、強攻は避けたまえ。私と本隊の到着を待つべきだ」

「ははは、お手をわずらわせる事もござらぬ。龍神様が立ちはだからぬ龍神神社など、赤子同然」
伍長の言葉に軍曹は首を振る。軍曹の動作に反応する男性たち。

「あの神職たちがいる。あの神職たちを甘く見るな。宮司と娘の父親たちを甘く見るな!!」
軍曹は激しく、しかし静かに諭す。

「彼は龍神様の夫だぞ。古より続くこの地域一帯に鎮座する、豪放磊落、勇猛果敢な龍神様、の夫だ。宮司。あの龍神様を惚れさせた、あの龍神様の『夫』だ」
軍曹の顔に懐かしいもの思い出したような寂しげな表情が浮かんだ。
「そして『巫女の夫』『娘の父親』。神職たち。彼らは…ははは、奇跡のような存在だ。冗談の様と言ってもいいがな。龍神様配下の巫女さんとの結婚を許され子を成した。彼らは娘に近づく我らを排除しようとしているが、彼女たちもその母親たちも望んではいない!!。こいつはなんとも楽しい事じゃないか」
軍曹は手を振り上げ、そして下ろす。

「全員恐ろしく頑固で親バカで、だが、それ故に。私は神職らを龍神様同様、『脅威』に値する存在だ、と結論している」
軍曹はもう一度、伍長に念を押す。
「いいかね。伍長、もう一度いう。強行するな。私の到着を待て」
「…了解。了解しました。軍曹殿(チェリー)」
伍長は素直に了解した体を見せる。
自身が馬鹿にされていることを知ってか知らずか、軍曹は笑みを深めて続ける。

「よろしい。よろしい!!。ならば…」
軍曹は男たちを見渡して、声を張り上げる。
「堰を切れ!!、祭りの夜の堰を切れ!!、童貞諸君!!」
森に響いた声はもう取り戻すことはできない。

「最終目標龍神神社本殿。境内に溢れて浮かれるカップル、森に入って盛るバカップル、ムシキングに興じる大きいお友達、龍神池に放り込まれる迷える金魚たち、全て無視をしろ」「軍曹殿!!。魔物娘たちは?」「相手をするな!!。当然だ。勝てるわけがない。全力で逃げろ。逃げて童貞を死守しろ。タイプならばわざと捕まえられればいい」「迷子のロリはいかがいたしますか軍曹殿!!」「救え、保護者を探せ。気に入られたのならばそのまま持ち帰られてしまえ。健闘を祈る」「発情した異常者は?」「逮捕しろ、お前はお巡りさんだ、職業的に」「龍ちゃんはどうしましょうか」「お前たちは手を出すな、私が愛でる」
自身の欲望もぶちまけ男たちの非難の視線を浴びながら、軍曹はさらに男たちを煽る。

「お前たちの非難などかまうものか。好みの魔物娘は片端から口説き、お持ち帰りされた者は片端から喰らわれろ。
存分に貪られ、存分に吸い尽くされろ。
この、人と魔物娘でひしめく神社は今宵諸君らの童貞最後の戦場(いくさば)と成り果てるのだ。
さあ!!諸君!!童貞を奪
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