【型抜き】
タタタタタタタタ。
軽妙な音が一定のリズムで響く。
「すごい」
「はえーし、うまい」
「ふぅっ」
抜き終わった型をマンティスが店主に見せる。
「こんなに綺麗なカタ見たことないぞ。姉ちゃん何者だ」
「ん」
店主の問いかけには答えず、マンティスは手のひらを見せる。
「わかったよ。持って行きな」
店主はマンティスの手にお札を乗せる。
「…ありがと」
マンティスは店主にお辞儀をする。
相撲大会の賞金、当てにしてたけど、これでゴハンが食べられる…。
そのまま、店を後にしようとするマンティスに店主が声をかける。
「待ちな。もうひと勝負してくれねぇか?」
「?」
マンティスが振り向く。
「こいつだ」
店主が出店の裏から取り出したのは少女のカタ。
「ゴーレム?」
「ああ、いっちょ取り出してやってはくれないか?」
「それは断る。あなたがやるべき」
「そうなんだがな、若い頃無茶しちまってな。俺はこの通りの有様なんだ」
差し出した男の手の指は曲がらなかった。
「それでも、あなたがやるべき。それなら反対の手で、それがダメなら口でくわえればいい。あなたがやることに意味がある」
マンティスの真っ直ぐな瞳に男がたじろぐ。
「ちっ。かなわねーな。わかったよ。俺がやるよ。でも、あんた見ていてくれないか。あんたほどの腕前の奴に見ていてもらったら、うまくできそうな気がするんだよ」
「それなら構わない」
マンティスが静かに頷く。
「ありがとよ」
「いくぜ。俺の精魂を込めてカタを抜くぜ!」
「頑張れ、おっちゃーん」
「いけー」
子供達の声援が上がる。
来年の祭りでは、店主の隣にゴーレムが立っていることだろう。
【輪投げ】
「輪投げをやりませんかー?。輪を入れることができたらその景品を差し上げますよー」
「あれも輪投げの的で景品なん?」
活発そうな女の子が店主に尋ねる。
「はい。そうですよ」
女の子が指をさした先にはハ
#9899;
#65038;ション大魔王の壺のような形をした壺があった。
変な形の壺やけど、あいつ骨董品とか好きやから、プレゼントしたったら喜ぶかもな。
頭に浮かんだのは気になっている男の子の顔。
「よし、いっちょやったろ」
「はい、どうぞ。頑張ってくださいね」
店主が彼女に輪を渡す。
「うりゃ、ほっ、はっ」
彼女は頑張るが全然入らない。
あかんなぁ。あと一つしか残ってーへん。ま、しゃーない。あかんかったら別のもん買うてこ。
彼女は最後の輪を放る。
その輪は壺の口に当たって上に弾かれる。
「あちゃー、あかんかったか」
女の子が残念そうな声を上げる。
回転しながら、落ちていく輪。
すると、壺がひとりでに動いたように見え、壺に輪がかかった。
「おめでとうございます。この壺はあなたのものです」
彼女に壺を渡す女店主。
「あ、ああ」
訝しがりながら壺をうけとる女の子。
「これ、呪いの壺とかじゃあらへんよな?」
「ええ。もちろん。むしろ想いを叶えてくれる幸せの壺ですよ」
「その方が怪しいわ!。まぁ、ええわ。もろうとく。ほな、ありがとな」
「はい、こちらこそー」
微笑む女店主の先がハート型になった尻尾も楽しそうに揺れていた。
後日、とある男の子が女の子に呼び出された場所にいくと妙な形の壺が置いてあった。
しくまれていた花粉の多い森の中。花粉症の男の子がくしゃみをすると。
エスニックな服装に身を包んだあの女の子が飛び出してきたとかなんとか。
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